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36話「到着南都アルケーミ」

このままでは、書き上げてから更新されるまでの期間が長すぎると思いまして、一旦短期間投稿に切り替わりです。


 ゴロヴァバードの大軍を全滅させてから更に数時間後、やっとアルケーミに着いた。

 高さ四メートル程の城壁のようなものに囲まれているその入り口は、如何にも異世界の街だと実感し、俺の心を躍らせる。

 入口付近には元の世界の国境検問の様に人集りが出ていて、多くの馬車、冒険者、旅人が街に入る為に並んでいた。

 段々と街に近づき「これでライカさんに解放される」と思うと、少しだけ表情が緩んでしまう。

 気を付けなければ、バレたら面倒なことになるぞ。


 商隊なので、ただの旅人よりも身分証明は簡単に終わり、街の中に入ることが出来た。

 街に着くと、大きな街なのもあって商人が扱う馬車の量が多く、ごちゃごちゃとしている。


 アルケーミに来ている商人全てがこの街に腰を据えているわけではないし、当然他の街から商売に来ている馬車もある。

 当然個人の敷地に馬車を留めて置けばいいのだが、その場所がない商人は宿に兼用して止めれる所を探すしかない。

 しかし、ここは元の世界の様に都市を好きなだけ開拓出来るような世界ではなく、街を外の脅威から守っている壁があり、街の広さは有限だ。

 無論、都市の拡張工事は年単位で行っているが、それでも南都だ。

 人はひっきりなしにやって来る。

 というわけで、馬車が止められる宿など数える程しかなく、値段も高い。

 クレーミヤなどという最南端の町から来る商人なんぞには泊まれるはずかがないのだ。

 

 ならばどこの馬車を止めればいいのか?

 そんな俺の疑問は直ぐに解決した。

 街に入って直ぐの所に荷物を降ろす専用の場所があり、そのさらに奥に馬車を止めておく場所があるのだと。

 元の世界で言う駐車場みたいな感じの場所だ。

 ここまで来れば俺達の護衛依頼は殆ど完了し、ギータさんに依頼の完了証明書を書いて貰うと商隊とは別れる事になる。



「今回は危ない所もありましたが、完璧な護衛をありがとうございました。『鉄壁』の皆さんは次の護衛依頼も受けて下さるので?」


「あー、少しこの街で依頼をするつもりだ。勿論、誰も受けて困った時は私達が喜んで護衛するからな」


「そうですか。その時はまたよろしくお願いいたしますよ」



 シジュマさんとギータさんは次回も今後の予定を取り合うくらい仲が良いらしい。

 やっぱり護衛依頼のベテランなだけはあるな。


 シジュマさんがギータさんに依頼完了の書類を書いて貰うと、後はギルドに報告に行くだけだ。

 鉄壁の皆さんは、始めてアルケーミを訪れた俺と柳瀬さんに、依頼完了証明書を提出しに行くついでにこの街のギルドの場所を案内してくれるらしい。

 その親切、ありがたいのだけど、マップ機能を使えば迷う必要はないのだよ。

 と言うのは心の中だけにとどめておく。


 街を歩いて見ると、人が段違いに多いのが分かる。

 人が多くて、人混みに酔いそうになった。

 ってのは冗談で、元の世界で言う地方都市部から少し外れた位を思い出す。



 小学生の頃は、俺の住んでた場所から一番近い地方都市でも、国で一番大きな街と思ってたからな。

 因みに、その都市には殆ど行ったことがない。

 一緒にいくような友達もいなければ、行く予定も無かったからだ。

 まぁ、地方テレビ局に映る映像を見たことが殆どなのさ。



 こうして歩いて見ると、人が多いのもそうだが店の量も多い。

 マップには幾つもの店マークが表示されている。



 あ、本を扱う店のマークを発見!

 これは覚えておかなければ!!



 歩きながらシジュマさんが、俺と柳瀬さんに簡単な説明をしてくれているが、正直俺にはマップを見れば分かる事なので聞いていない。

 悪いとは思うが、別に俺が頼んだわけではないので許してくれ。

 柳瀬さんは真剣に聞いているので、それでお相子と言うことで…………。



「ツカサ君?ライカさんとは何話してたの?」


「えっ?あーっと……」



 柳瀬さんが俺に話しかけて来る。

 どうやら、シジュマさんの話が一通り終わったらしい。

 マップに集中していたので、全く気付かなかった。

 シジュマさんに気づかれてないよな。

 と、内心冷や冷やしながら柳瀬さんの質問に答える。



「ゴロヴァバードを全滅させたときの魔法について説明させられただけ。」


「へぇ!!ベテランの魔法使いのライカさんから話を聞かれるなんて、ツカサ君はやっぱりすごいね!」


「……俺一人だったら、もう少し手間取ったと思うよ。柳瀬さんが居たから上手くいたんだ」


「……………またそうやって、謙遜して」


「何か言った?」


「…別に!」



 ふんっ!とそっぽを向いた柳瀬さんに俺は困惑するだけだ。

 会話のどこがいけなかったのだろう?

 特に柳瀬さんを怒らせる様な事は言ってないはずだけどなぁ。

 人との会話は、相手の気持ちが文字よりも分かりにくくて難しい。

 もっと簡単に分かる方法があればいいのに。



 考えても分からないことは諦める。

 俺の中のルールに従って、柳瀬さんの気持ちを理解するのを放棄すると、黙ってシジュマさんについて行く事にした。

 勿論、マップで本を扱う店のマークを探しながら。






 マップに冒険者ギルドのマークが映る頃には、辺りの賑わいは凄いことになっていた。

 前を見ても、後ろを見ても、右、左を向いても、冒険者、冒険者、冒険者。

 中には依頼をギルドに出しに行く一般人や、商人もいるかもしれないが、見た目だけで冒険者と分かる格好をした集団が目に見えて増えている。

 流石、南都と呼ばれる街の冒険者ギルド付近だ。


 マップ上で、目分量的に視界に入る距離になると、三階建ての馬鹿デカイ建物が見えた。

 屋根の上には、ドラゴンと冒険者の紋章がデカデカと飾られている。

 同じ三階建ての建物と言え、クレーミヤの冒険者ギルドとアルケーミの冒険者ギルドは規模が違い過ぎた。

 元の世界に例えるなら、都会の狭い一軒家と、地方都市の外れにある都会の一軒家が三軒ほど立てれる一軒家位の規模の差だ。



 ……………………分かり難いし、そこまでの差はないかな?

 うーん、もっと分かり易く例えるなら……文字通り都会の本店と地方都市の都市支店と言ったところか?

 そうだな、それが正しいと思う。

 都会にあるオタクな本屋の本店…行って見たかったな。

 俺が行ったことのあるのは、高校二年生…丁度一年ほど前に学校の日帰り研修旅行で、大型地方都市部の店だけだからなぁ。



 本店には、行ってみたいとも思っていたし、逆に面倒だしネットで買えるから遠出はしたくないとも思っていた。

 まぁ、つまり今の俺の気持ちは、お上りさんであるのだ。

 小説の中でしか見れなかった冒険者ギルド。

 それの南都と呼ばれる位大きな街にある支部なのだ。

 興奮しない方が、転生者としてどうかしていると思うね。


 内心ワクワクしながらシジュマさんに続いて、冒険者ギルドに入る。

 中に入ると、クレーミヤでも味わったことのある匂いが、俺の頭をクラクラさせる。



 おぇぇ!!

 食べ物とお酒の匂いが段違いに襲ってくる!!



 気持ち悪いのを我慢しながら、マップで間取りを確認すると、クレーミヤと殆ど同じだった。

 違う点は、建物の大きさからも分かるように、受付カウンターの数から掲示板の大きさ、貼ってある依頼の紙の量、酒場スペースのテーブルの数、武具を売っているスペースで扱っている種類、何よりもギルド内にいる冒険者の数が多い。

 多過ぎて今すぐにでも店から出たくなる。

 少しだけ幻想を抱き過ぎていたらいしい。


 俺が人の多さに酔っている傍らで、柳瀬さんは逆の気持ちを抱いているみたいで、目を輝かせている。

 中学の時に行った修学旅行の反応に似ているなぁ。

 と、自分でも不思議に昔の事を思い出していた。



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