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30話「出発」



 俺に密着して来るライカさんを、焦った様にして引き剝がしてくれる柳瀬さん。



「みっ!密着し過ぎです!!ツカサくんから離れてください!!」


「あ~ん、ホノカちゃん可愛いわねぇ~」


「きゃっ!ライカさん何処触って…………ひゃっ!」



 柳瀬さんは俺に密着しているライカさんを引き離してくれたが、今度は柳瀬さん自身が餌食になってしまう。

 ライカさんは女性でもあの態度なのか、っとこの展開はやばくない?

 柳瀬さんとライカさんには目を向けずらい事が起こている。



「うひょー、ツカサも見てみろよ!ライカの奴、ホノカのあんな所揉んでるぜ!」


「エ、エスタさん何やってるんですか」



 ライカさんが柳瀬さんの服の中に手を入れた所で目をそらした俺に、エスタさんが肩を組んで「観戦しよう!」と言ってくる。

 正直言って見たいという気持ちはあるが、そこは理性を発揮して振り向かない。



 あぁ、このノリは嫌いだな。

 それでも、聞こえてくる柳瀬さんとライカさんの声がまた、想像を掻き立ててヤバい。

 平常心平常心を保て俺。



 現実に興味無くても、声だけは二次元の要素の一つ故に心臓に悪い。

 心臓に悪い声を遠ざけようと、肩組みをしているエスタさんの手をどけようと俺は奮闘する。

 くっ!流石近接職、力が強くて外せない。

 そう内心でもがいていると、俺に救世主が現れた。

 成り行きを見守っていたシジュマさんである。

 シジュマさんはエスタさんの腕を払いのけてくれ、俺を心臓に悪い場所から連れ出してくれた。

 そこには、クッチさんがハワハワとあっちの様子を伺っていて、「ホノカさんを、助けるべき?でも、そうすればライカさんが怖いし………。それとも、エスタくんをひっぱたく?でもセクハラされたら……………あ~~???」と言っていた。

 一応、目が合うとペコリと会釈をして来たので、俺も会釈で対応する。

 うん、これぞ適切な距離だな。



「仲間がすまなかったな」


「あ~、シジュマさんが謝る事じゃないと思いますよ。それに、エスタさんもライカさんも悪気があってやってる風には見えなかったし」


「そう言われると助かる。と、話を戻そうか。本当に俺が考えた配置で問題はないのか?」


「はい。護衛依頼の内容は分かっているつもりですが、初めての依頼です。下手に動いて失敗するよりも、ベテランであるシジュマさんの指示に従った方が依頼主にも俺達にも利益がありますから」



 もう一度、俺に「この配置でいいのか?」と聞いてきたシジュマさんにシジュマさんに従うと答える。

 俺にはマップ機能があるからと、索敵には問題がないと考え自分勝手な配置を提案して失敗すると、シジュマさんに迷惑がかかるし、依頼主であるギータさんにも申し訳ない。

 だから、ここはシジュマさんに大人しく従っておくべきだ。

 元の世界に例えると、バイトで「知らない事は聞いてから行動しろ!」と言わる事と同じだな。



「そうか。ならばこの配置で行こう。それで、誰が何処に配置するか?だが。君らは真ん中の馬車間のどちらかを頼みたい。俺たちは先頭と最後尾に別れて護衛する」


「はい、分かりました」



 ベテランで前後を固める訳か。

 まぁ、適切な配置だな。



 とにかく、これで作戦会議は終わり。

 後は出発を待つだけになった。


 俺とシジュマさんの話し合いが終わり、暇つぶしも兼ねて本を読んでいると柳瀬さんが隣に座りこんで来る。

 どうやらあの修羅場をやっとこさ抜け出せてこれたようで、少しだけ息が乱れていた。



「や、やっと解放された~」


「なんか、押し付ける様になってごめん」


「うぅ、ツカサ君は見た?」


「す、直ぐに目をそらしたから、殆ど見てない」


「そ、そっか。………見ても良かったのに」


「何か言った?」


「ううん!!?別に何でもないよ!!」



 そうか?

 ならいいけど、何か言いたいことがあるなら言ってくれたほうが俺も助かるんだけどな。

 俺への不満とか不満とか。

 まぁ、言ってくれたらくれたで、俺の心にダメージが入るだけだからどっちもどっちだな。



 急に取り乱した柳瀬さんが落ち着くと、俺は決まった配置を教える。

 柳瀬さんは真剣な表情で聞くと、頷いて装備の確認をし始めた。

 俺も一応、確認しておくか?

 そう思った俺は、アイテムボックスのウインドウを開くよう、己に命令する。

 すると俺の視界だけに映るアイテムボックス欄を眺めて確認を取った。



 回復薬二十個に、魔法薬十個、後は携帯食料に非常用の水、ランタン、寝袋、これで大丈夫かな。

 アルケーミはクレーミヤから徒歩で約半日程かかる距離に位置するらしい。

 夜までには辿り着く予定ならしいが、万が一の事があってはいけない為にも用意はしてある。

 というか、俺の場合はアイテムボックスの容量は沢山空いているので、いつも入れてある訳だ。

 こう言った時には荷物にならないから、便利な機能だよな。



 因みに、スタッフは初めから手に装備して集合場所に集合している。

 幾ら収納スキルや魔法袋といったものが存在するといっても、俺のはそのどちらにも属さない機能だ。

 他の冒険者や商人に見せると、絶対に厄介ごとになるはず。

 夜までにつく予定なら、見せなくても十分持つ。

 その為にも回復薬と魔法薬を三つづつ、普通の道具袋に入れ直しておく。

 『鉄壁』は雑談が盛り上がっているし、商人は準備に忙しい、誰にも見られていないはずだ。

 こうして俺の準備は整え終わり、後は出発を待つだけになった。






「こんちゃッス!俺はいオングと言うッス。そんでこっちがイリ。どうぞよろしくッス!」


「…………ろしくお願いします」



 出発時間直前になって、もう一つの護衛依頼を受けた冒険者が来た。

 どちらも俺と同じくらいの年の男女で、エスタさんと同じ感じのチャラいウェーイ系の男子と、言葉数が極端に少ない不思議系女子。

 装備はそれぞれ大剣使いと道具士。



 道具士とは余り聞きなれない珍しい職業の人だが、パーティーにいると便利な役割だ。

 便利な役割だが、その場その場にあった道具を適切に使わなければいけない。

 適切なタイミングで、使用すると周囲の味方が一定時間回復する『回復の粉』を使い、異常状態に落ちいると異常状態が一定確率で回復する『解呪の笛』を使用、などといった色んなアイテムを駆使して見方をサポートするタイプの職業だ。

 様々なアイテムを使用したり、状況判断が重要になってくる為、難しい職業だが腕の良い道具士がいると、依頼の難易度がぐ~っと下がるらしい。

 以上、俺が読んだ本からの情報をまとめた内容だ。



 出発間際ということもあり、急いで各自の自己紹介をして、護衛依頼の配置を話し合った。

 こんどはさすがのライカさんもふざけない。



「それで、君達二人には後尾よりの真ん中に配置、それでいいだろうか?」


「ん~~~~~~~。解っかんねッス!こう言うのはイリの方が得意だから任せたッスよ」



 オングはシジュマさんから配置を聞くと、碌に考えもせずにイリに丸投げした。

 イリは慣れてるのか、初対面なのにエスタさんと雑談に花を咲かせているオングをジト目で見ると、何か考えてから合意を取る。



「………問題ない。護衛依頼は二回目、だから、ベテランに従った方がいい」


「そうか、分かった。じゃあよろしく頼むぞ」


「……ん、よろしく」



 なんていうか、両極端なコンビだよな。

 あれで連携が取れているのか?

 まぁ、取れているから一緒にいるのか。

 連携と言ったら、俺と柳瀬さんもなし崩し的にパーティーみたいになってるけど、連携出来ているのか?

 今の所これといった連携ミスや戦闘中の苛立ちがないから、大丈夫だと思うけど……………柳瀬さんはどう考えてもいるんんだろう?

 もし嫌ならパーティー解散しても俺は問題ない。

 元々この街で別れる予定だったしな。



 と、考えていると、イリがこちらにやって来た。

 そのまま俺の目の前で立ち止まると、手を差し出す。



 これはなんだ。

 よろしくって意味なのか?



「よ、よろしく」


「ん、よろしく」


「私もだね。よろしくイリちゃん」



 その後直ぐ、ギータさんが「準備が出来たので出発します」と言って来たので、予定通りの配置に着いて街を出た。


 こうして俺は、異世界に来てから初めての街を出発したのであった。



 あと一日ありますが、今回で毎日投稿を終了とさせて頂きます。街を出発したと言うキリの良いところでね。

 今後は週一を目安として投稿をしていきたいと考えています。なので、この機にしおりなどはいかがでしょうか?作者である自分のモチベーションが上がります。

 これまで読んで下さっている読者様に感謝を、そしてどうかこの作品を最後までお付き合いお願い申し上げます。


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