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29話「『鉄壁』の四人」



 今回俺と柳瀬さんが受ける商隊の護衛依頼について、少しだけ説明しておこう。

 商隊の護衛依頼は基本的に一パーティーで行わないのが普通だ。

 無論、人数が五人以上いて実力も知名度も申し分ないなら、一パーティーでも問題はないらしい。

 更に付け加えると、二パーティー以上が合同して護衛に当たる理由は、もし依頼を受けたパーティーがその商隊を狙っている敵に買収もしくはグルであった場合に備えてだそうだ。

 そのようなことは滅多にないらしいが、護衛人数は多いほど商隊は安心できる。

 最も、人数が多ければ多い程いいわけでもないのも護衛依頼の基本だ。

 護衛依頼中にかかる経費(街を挟むならその場の宿代や食費代等)も殆ど商隊持ちなので、依頼主は多すぎず少なすぎずを見極めなければならない。

 なので当然、依頼主が利益がないと判断すれば切られる。


 とは言っても、余程の無能で依頼主の方針に従わない傲慢な冒険者でない限りは大丈夫とのこと。

 俺が持って行った依頼を受け付けてくれたメリーさんには「ツカサさんのパーティーなら問題ないですよ!今回の護衛期間も短いですし、初の護衛依頼としてはこれほど適切な依頼はありません!」と自信ありげに言っていた。

 今思えば、「ツカサさんのパーティー」と表現していたので、メリーさん的には俺個人の依頼とは思っていなかったのだろうな。

 だから、お友達の柳瀬さんに話して伝わったのか。



 話を戻そう。

 護衛依頼は基本的に複数のパーティーで行うのが定積だと言う事。

 何が言いたいかというと、二人しかないない俺と柳瀬さんは初めて合同依頼になるということだ。



「初めまして、今回の護衛依頼を請け負いましたツカサです」


「同じくホノカです」


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。私は今回の商隊のリーダーを務めるギータと申します」



 俺と柳瀬さんは今回の雇い主に挨拶をしていた。

 商隊のリーダーと名乗ったギータさんは若い青年で、俺達よりも少し年上に見える。

 俺達の少し年上という事は二十代前後、その年で商隊のリーダーを務める地位にいるのはギータが優秀であるということだ。


 ギータさんは積み荷の確認をしていたらしく、俺と柳瀬さんが挨拶に向かうと、帳簿らしきものを部下に渡して丁寧に挨拶を返してくれる。

 流石商人。礼儀作法がどっかのギルド職員とは大違いだ。


 ギータさんに挨拶した俺達は、ギータさんの説明を受けながら一緒に護衛任務を受ける冒険者の顔合わせに向かった。

 今回の依頼を受けた冒険者パーティーは俺と柳瀬さんを入れて三パーティーだそうで、既に片方のパーティーはこちらに集合しているらしい。

 商人等が馬車の荷台に荷物を積み込んで準備をしている中、その冒険者パーティーは少し離れた場所に座って雑談をしていた。

 ギータさんが声を掛けると、直ぐに立ち上がって挨拶をしてくれる。



「ツカサさんホノカさん、こっちが今回君たちと同じく護衛依頼に参加してくれる『鉄壁』の皆さんです。毎回のように依頼を受けて下さるベテランなので、分からない事がありましたら彼らに質問するといいでしょう。シジュマさん、彼らが今回の護衛冒険者の一つです。ベテランらしく勝手を教えて下さいね。では私はこの辺で」



 ギータさんはそれだけを早口で言うと、忙しそうに準備をしている商人の中に入っていく。

 リーダーだからといって何もしないわけでなく、率先して動いてくれる人柄なのがわかる。

 と、ギータさんのことはこれくらいにして、俺は『鉄壁』の皆さんに挨拶しなくてはいけない。



「紹介に預かりました、Dランク冒険者のツカサと」


「ホノカです」


「そんなに畏まらなくても大丈夫だ。俺はCランク冒険者パーティー『鉄壁』のリーダーを務めているシジュマだ。よろしく」



 シジュマさんは焦げ茶色の髪をした中年男性で、アーマープレートと両手剣を装備している。

 中年男性と聞くと、お腹がぽっちゃりしているオヤジを思い浮かべるところだが、シジュマさんはそんなことはない。

 長年冒険者を生業として生きてきた事が分かるほど良い筋肉に、若者だからと言って年の功をした蔑んだ眼ではなく、俺と柳瀬さんを一冒険者として見てくれていると思う力強い眼で俺と柳瀬さんを見ているシジュマさんは手を差し出してくる。

 礼儀に習って俺も柳瀬さんも手を差し出して握手をした。

 彼は信頼、までとはいかないが今回の護衛依頼のリーダーとして相応しいと思える人物に見えた。


 シジュマさんは自身の紹介を終えると、仲間の紹介を始めた。

 慣れたものなのだろう、それぞれが装備している武器を目安に名前を言う。



「剣と盾を装備してるのがエスタで、杖を装備してるのはライカ、最後に弓を持っているのがクッチだ」


「エスタだ。よろしく」


「はぁい、ライカよ」


「クッチです。よろしくお願いいたします」



 一人目は、三十㎝くらいの剣と小さい盾を持った狩りゲーの片手剣を思わせる武器を持つエスタさん。

 赤い色の髪の毛そこそこの顔立ち、俺の勘は「エスタさんはスクールカースト上位の取り巻き連中」と述べている人だ。

 パーティーではアタッカーを努めているらしい。

 俺的には積極的には関わりたくないタイプの人間。

 逆に柳瀬さんとは気が合うのでは?と思ってしまう人だ。


 二人目は、これまた大きな杖を装備している高身長で胸がデカいライカさん。

 これが大人の雰囲気か、と思わせる人で、エスタさんとは別の意味で苦手な雰囲気だと言っておこう。

 パーティーでは後衛の魔法使い。


 最後三人目は、弓を装備しているおさげヘアーのクッチさん。

 オドオドとした雰囲気でビクビク震えていて、一番付き合いがしやすそうに思えた人だ。

 何故冒険者なんかになったのか不思議に思うくらいで、俺と柳瀬さんへの挨拶をライカさんの後ろに隠れながらしている。

 パーティーでは後衛の弓使いだそうだ。


 以上が四人が『鉄壁』のメンバーだ。

 メンバー構成としてはバランスの取れたパーティーだと思う。

 今まで何回も護衛依頼を受けている点から言うと、実力は申し分ないそうだな。

 それともう一つ、偽名やいい奴に見せて悪い奴だったと言うこともないと思う。

 もう慣れた、人の頭上にあるカーソルにはウソ偽りのない名前が、マップには敵対者ではない一般人の青色で表示されているからだ。

 

 さて、今度は俺と柳瀬さんの番か。

 挨拶を受けたな返さなければいけない。

 俺は自己紹介に入った。



「俺はツカサです。魔法使いで魔力量は結構ある方だと思います。補助系攻撃系属性を問わず使えます。それでこっちが一緒に受ける」


「ホノカです。細剣使いです。えーっと、あ!走るのが得意です」



 名前とどんな得物で戦うか、それと一つアピールポイントを述べる。

 初対面の人にはこれくらいでいいだろう。

 魔力総量がSランク近くあるとか、収納スキルを使えるとかは教えなくても問題はないはず。

 いざという時に切り札になるような物は、教えない方がいいに決まっている。


 お互いの紹介をし終わった後、出発時間まで待つ間に今回の護衛依頼について話し合う事になった。

 あと一パーティー来ていないが、大まかな事を決めていたらいいとシジュマさんが提案してきたからだ。

 俺と柳瀬さんも特に反論する事なく、シジュマさんの提案に従う。



「今回の馬車は三台だそうだ。そこで俺は二人一組にして、四組作った組をそれぞれ馬車の先頭と最後尾、後は馬車の合間に配置する事を提案したい。ツカサくんとホノカさんはどうだ?意見があったら遠慮なく言ってくれたまえ」


「いえ、初めての護衛依頼なのでベテランであるシジュマさんに任せます」


「わ、私もツカサ君と同じ考えです」


「あら?このオッサンが怖くて言えないの?私が守ってあげるから言いたいことは言っていいのよ」



 シジュマさんの提案に同意した俺と柳瀬さんだったが、俺の後ろから這い寄る様にして現れたライカさんによって話が中断させられる。



 ビビったぁ!

 ぬぅっと俺の背後から出てきたライカさんに俺はビビりまくる。

 マップ機能だと大まか位置は分かるが、こういった密着した場所だとわかりずらいからだ。



 マップの拡大機能は………出来たな。

 何で今頃気づいたんだろうか。

 視界の片隅に映るマップは、前よりも人を表す点の間隔が分かり易くなっている。

 試しに、マップの縮小と考えるとマップは何時も見ている大きさになった。

 こんな機能があるんだったら早く言ってくれよな。

 完全なゲームじゃないから、俺のゲームのような視点にはマニュアルが無いのが難点だ。

 ん?待てよ。

 何時からマニュアル、つまり操作説明がないと決めつけていたんだ。

 これまでの経験上、説明が欲しいと願ったら出てくるのではないのだろうか?

 そう思って俺は頭の中で視点に付いての説明が欲しいと願った。

 …………………………………………。

 ………何もでない。


 落胆、よりもやっぱりか、と思ってしまう。

 何でもかんでも思うように行く訳がないよな。


 所でなんだけど。

 思考が飛んでたいた俺の肩にライカさんが顎を乗っけてきているののはどういった状況だろうか?

 誰か説明プリーズ。



 やっと現実に戻ってきた俺の思考が、再び飛んでいきそうになる。

 顔が、顔が真横にあるんですよ。

 これは現実逃避したくなるのも自然な流れだろう。

 と言ってもこれで現実逃避していたら何が起こるか分からない。

 出来る事なら、面倒ごとからは磁石のS極とN極みたいに離れたいのが俺の思いだ。

 その思い通りに、ライカさんを離れさせるべく行動に移す。



「ら、ライカさんはどうしてそこに?」


「ふふ、照れなくてもいいのよ。反応がなかったからちょっと脅かそうと思っただけだわ」



 ライカさんはそう言って更に密着してくる。

 いい加減止めて貰いたいものだ。

 そう思ったものの中々言い出せない俺に、柳瀬さんが焦った様にしてライカさんに物申してくれる。



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