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21話「モンスターと魔物」



 不機嫌になった柳瀬さんに気づいていないメリーさんは説明を始める。

 「……柳瀬さん、俺はそれくらいがいいと思うよ」と心の中で俺の好み全開の援護をしつつ、メリーさんの説明に集中して聞く。



「えーっとモンスターと魔物の違いでしたね」


「片仮名表記と漢字表記の違いじゃないの?」


「カタカナヒョウキ?カンジヒョウキ?何ですかそれは!?」



 柳瀬さんの言葉にメリーさんは首を傾げ目を光らせる。

 メリーさんの知らない物センサーに引っかかってしまったみたいだ。

 逆に柳瀬さんはここが異世界だと言うことを忘れているみたいで、俺が柳瀬さんに耳打ちでここが日本語が通じない事を思い出させる羽目になってしまう。



「柳瀬さん、俺達には日本語に聴こえるかもしれないけど、他の人にはここの言語で聴こえる事を忘れてる?」


「ひゃっ!そ、そっか。ごっめなさいメリーさん、忘れていいですよ」


「そうですか?……気になりますが、ここは引いておきましょう。今度ツカサさんに聞くとしましょう。……二人っきりの時に」


「……むぅ!」



 メリーさんの呟きに柳瀬さんが俺を睨んでくる。



 そんな意味深そうな事を言うな。

 柳瀬さんが睨んでくるだろう。

 俺は呼ばれても行かないからな、なんか二人の眼がヤバそうだし。



「ごほん。話題が逸れちゃいましたね。簡単に言うと、モンスターと魔物の違いは産まれた時期です!」


「時期?魔物は寿命が永いの?」


「柳瀬さん、そう言う意味じゃないと思う。メリーさんが言いたいのは、モンスターは昔から居た個体だが、魔物は生物の歴史からしたら最近現れた種族、と言いたいんだと思うよ」



 柳瀬さんが分かっていなかったみたいなので、分かりやすく俺の推測を話す。

 すると、メリーさんは笑顔で俺の推測が正解だと言った。



「正解です!説明必要ないじゃないですか!!?」


「ま、まぁ、メリーさんのヒントがあったから分かった様なものです」


「……メリーさん、わざとやってる?」


「??何のことでしょう?まぁいいです。詳しく説明いたしますと、モンスターと呼ばれる種族は大昔から存在しています。一方魔物はと呼ばれる種族は、今から百年程昔に突如として現れた魔族と共にこの世界にやってきました。なので、自然が生んだ魔王軍の手下とも言いますね!」



 なるほど、だから『魔』物なのか。

 モンスターと魔物の違いはそれだけなのか?



 そう思った俺の疑問も柳瀬さんが聞いてくれる。

 俺は「ありがとうございます」とコミュニケーション能力が高い柳瀬さんに何度目かの感謝を心の中でした。



「違いってそれだけなの?」


「いいえ、強さも段違いです。モンスターはFランクの冒険者でも倒せる固体がありますが、魔物は違います。魔物は最低でもCランクの冒険者でないと倒せない、はずなんですけど……………」


「Fランクの私とツカサ君が倒しちゃった、と」


「……はい」



 なんか、物凄く普通じゃないことしたのか、とは思わない。

 テンプレ展開が起こった時から分かっていたからだ。

 俺とは逆に柳瀬さんはとても驚いた顔をしている。

 その顔がとても新鮮だと感じるのはなぜだろう?と一人不思議に思っている間もメリーさんの話は続く。



「それに、魔物は人間に被害が大きいのと体の中から魔石が採れるので、討伐されると報酬金は高くなりますよ」


「魔石って何ですか?」


「魔力が籠った物の事です。属性によって色はまちまちですけど、とても綺麗な色をしています。魔石は魔法使いが魔力を補充する為に持っていたり、魔道具を動かすのに必要だったりと用途が幅広くあります。特に魔物から取り出された魔石は純度が高く、高値で取引されています」


「わぁ~!見てみたいね、ツカサ君」


「……っ!あぁ、俺も魔法使いだから機会があれば欲しいな」



 少し考えごとをしていた為、柳瀬さんに呼ばれていたことに反応が遅れてしまう。

 この後のことについて考えていたからだ。



 テンプレ展開に沿ると、この街のギルドマスターに面会させられるのだろうか?

 ……嫌だなぁ。

 というかめんどくさい。

 面識が出来てしまったが最後、ギルドマスターと認識を持った俺と柳瀬さんは面倒な依頼を頼まれる。

 という良くある未来のテンプレが見えるからだ。



 俺が頭の中でごちゃごちゃと考えている間もメリーさんの話は続く。



「これで魔物がこの辺ではどれだけレアな獲物か分かりましたか!?」


「でも、魔物って何処にでもいるんじゃないの?」


「あれ?まだ言ってませんでしたっけ?魔物がこの辺ではレアな理由」


「う、うん。聞いてないよ?」



 俺も聞いていない。

 大体の予想はつくけど。



「それじゃあもう一度、先ほど魔物は魔王軍の襲来と共に現れたと言いましたね?」


「そうだね。それが?」


「だから、魔王軍の本拠地である魔王城に近いほど、魔物は生息しているんです。この街は最南端の街、一方で魔王城は国の最北端に建っています」


「もしかして、この辺は魔物が生息していない?」


「全くと言うわけではありませんが、一年に十もいかない目撃情報です。更に言うと、今回お二人が見つけた地点は全くのノーマーク場所。街に近い草原で出没するなんて初めての事例なのです」



 やっぱりか。

 冒険の始まりは魔王城から一番遠い街から。

 有名RPGゲームでの定番に沿っている。

 マジでこの世界ってゲームの世界じゃなか?

 そう思うが、生憎聞いたことがない設定が所々ある。

 俺が知らないだけかもしれないがな。



「被害が出る前にお二人がカードッグの群れを倒してくれて、私はホッとしています。街を代表してお礼を言いますね。ありがとうございました!」


「えーっと、ど、どういたしまして?」


「やっぱり、事の重大さが分かってませんね。大丈夫です!私は分かっていますのでギルドマスターへの連絡は任してください!!毎日業務内容の連絡をさせられていますので!!」



 うん、それってメリーさんが何かやらかしてないのかの、確認を取っているだけじゃないのか?

 まぁそのおかげで、俺たちはギルドマスターには会わなくても良さそうだ。

 裏を返すと今日はってことになるけど、今会わなくていいのならどうでもいい。



 そして、説明についてはこれで終わったらしく、メリーさんはリーム鳥の数を数えると、カードッグの死体を見始めた。

 やっと本来の常務内容に進めれたみたいだ。

 メリーさんが死体の確認を取っている間に、俺はふと疑問が生じてしまった。



 そういえば、メリーさんは生物の死体を見て、吐き気と言った負感情は抱かないのだろうか?

 やっぱり世界が違うからなのか、それとも冒険者ギルド受付嬢と言う職業だからか、メリーさんからは元の世界での人が死体を見た時に抱くような感情が見られないな。

 この世界での命は軽いからなのか?

 元の世界だったら、こんな死体は警察官でもしないかぎり、中々お目にかからない。

 そこから繋がって柳瀬さんは大丈夫なのだろうか?

 俺と違って、柳瀬さんは元の世界の一般人だ。

 グロ系の小説のイラストや文字で慣れている俺とは違い、全く耐性を持っているはずがない。



 そう思って俺が柳瀬さんの方を向いていたからなのだろう。

 柳瀬さんが俺の視線に気づいた。



「?どうかしたのツカサ君?」


「いや、なんでもない」



 柳瀬さんの顔色を伺って見たが、何も分からなかった。

 今のところ大丈夫そうだなと判断すると、柳瀬さんを観察するのを辞める。


 カードッグの死体を見終わったメリーさんは、又してもどこからか取り出した帳簿で調べ物をし始めた。

 恐らく、初めて見るカードッグの買取金額を調べているんだろう。



「カードッグ、ギルドに売り払って本当に良かったのですか?魔物は良い素材になりますよ!?」


「……素材?素材って何のことですか?」



 メリーさんが調べ物が終わったあと「ギルドで売ってよかったのか?」と書類に記入しながら尋ねてきた。

 柳瀬さんは魔物の死体を指して、素材って言われてもピンとこないようだった。



 ほら、あれだよ。

 モンスターをハンティングするゲームだよ。



「武器や防具に使う素材のことですよー」


「っえ!これってモンスターの一部が使われているんですか!?」



 柳瀬さんの疑問に、脳内独り言で対応している俺に代わってメリーさんが柳瀬さんの疑問に答えてくれる。

 その答えに柳瀬さんは持っていた剣と着ている防具を指差して驚く。



「あ~、ホノカさんが使っているような装備は鉱石で作られていますけど、高位な武具になると、アダマンタイト、ミスリルと言った魔鉱石と強い魔物やモンスターの素材を使った武具が大体です」


「ん~?」



 メリーさんの説明でも分かりにくくて唸っている柳瀬さんに、俺が元の世界に例えて説明する。

 こういった時に俺の知識は役に立つ。



「鞄や財布にワニやヘビの皮、鱗を使うだろ?それと同じこと」


「あ~あ!分かった!ありがとうツカサ君!」



 俺の例えでやっと意味が分かったらしい柳瀬さんは、俺に向かって笑みを浮かべてきた。



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