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20話「予兆は知らぬ間のテンプレへ」



 ザシュッ!!



「ピィィィィッ!!!」


「ハァハァ。お、終わった?もういないよね?」



 俺が放った氷属性初級魔法、氷の槍『アイスニードル』が鳥形のモンスター、リーム鳥を貫いた。

 俺はそろそろ癖になってきだしたマップ確認をするが、赤点は範囲には出ていない。

 俺と柳瀬さん周辺にいるモンスターは、俺が手を下したこれで最後みたいだった。



「マップには反応はない。如何やら全滅したみたいだな」


「よ、良かったぁ~~」



 柳瀬さんは安全が確認出来ると、その場に座り込んだ。

 いや、ぺたんっと倒れ込んだと言っていいだろう。

 柳瀬さんは朝の道具屋で買った水筒に入れていた水と一緒に、薬草を飲み込んでいる。

 すると、俺の視界に映る柳瀬さんのHPゲージが徐々に回復していく。



 俺よりも体力があるはずの柳瀬さんが、これほどまでにもHPが削られているには理由がある。

 カードッグの群れを倒した俺と柳瀬さんは少し休憩を取ると、モンスターを見つけては倒していった。

 ある程度のモンスターを狩っていると時間が経ち、三時くらいになった時だった。

 最後の狩りをしようと、空に飛んでいた鳥、リーム鳥を俺が魔法で打ち抜いたのが行けなかったらしい。

 リーム鳥の死体をアイテムボックスにしまおうと死体の近くに近づくと、マップに数十匹の反応が現れたのだ。


 如何やらリーム鳥は一羽が死ぬと、周りにいるリーム鳥を呼び寄せてしまうモンスターだったらしく、後は分かるだろう。

 一時間以上戦いっぱなしだった。

 一羽一羽は簡単にあしらえるが数が尋常ではなく、時間が掛かってしまいこんなにも疲労することとなった。

 俺は障壁を張れるからHPは殆ど削られなかったけど、柳瀬さんは剣士だ。

 俺よりもHPが削られて、疲労もかなり溜まっている。



 かという俺も、疲労が全然無いわけでもない。

 障壁は張りながら魔法を放ちまくったせいで、多いらしい魔力は殆ど使い切った。

 魔力枯渇で体が辛い。

 少し休憩したら動ける程度には回復すると思うが、今はダメだ。


 俺も地面に座り込むと、一息ついた。

 柳瀬さんと違って水筒は買っていない為、水は飲めない。

 魔法で出せるからいらないと考えて買わなかったのが、ここで響いたか。



 まぁ、いらないけど。

 この程度の渇きなら、バイト終わりと同じだ。

 我慢できる。



 我慢できるといえど、魔力がない状態で緊急に水が必要になった時の事を考え「非常事態に備えて水筒は買っておこう」と俺は心の片隅で予定を立てていると、



「ツカサ君、これどうする?」



 空を見上げて、ぼんやりと休憩していると柳瀬さんが困った顔で言ってきた。

 柳瀬さんが差しているのは、リーム鳥の死体の山の事。



「勿論持って帰る。待ってて、しまうから」



 俺はそう返すと、リーム鳥をアイテムボックスにしまい込む。

 魔力が無い時にアイテムボックスが使えるか心配だったが、問題なかった。



 メリーさんはスキルって言ってたから、普通は魔力がないと開けないんだろうか?。

 俺のアイテムボックスが収納スキルとは違うのは、ゲームのような視点の影響だろうか?

 取り敢えず、アイテムボックスの事も普通の収納スキルと言って隠しておかないとな。



 大量のリーム鳥をしまった俺は休憩を終わらせて、柳瀬さんと共にマップを頼りに街に帰るのであった。











 街に戻った俺と柳瀬さんは今日の獲物を売るためにギルドへと向かう。

 大分慣れてきた道を進みギルドに辿り着くと、ドアを開けて中に入る。

 すると、ムワァっとお酒と料理の匂いが鼻孔に襲いかかった。



 相変わらずの匂いだな。

 何処の席も、飲み物や料理に手を進める冒険者でいっぱいだ。

 やっぱり早く出よう。

 匂いがキツ過ぎて吐き気がする。



 俺は昨日と同じ様に受付で俺と柳瀬さんを手招きしているメリーさんの元に向かった。

 メリーさんが又しても暇そうにしているのは気のせいだと思う事にする。



「おかえりなさ~い、です!無事に戻って来られて、私はほっとしていますよ!」


「メリーさんありがとう。メリーさんはまだ勤務なの?」


「はい、そうなのですよ!ギルドってホントにブラック企業でですよねぇ!一日十二時間以上も働いているんです!ホノカさんが羨ましいぃ~!!」



 それにしては、俺と柳瀬さんが来るまでは暇そうに指を使って遊んでいたんだが。

 あれが働いている、に入るのだろうか?

 こんな事をしている間にも、他の受付は忙しそうに働いているんだけど。



「あ、またお喋りしちゃいました。てへへ。疲れていますよね」


「うんん!大丈夫だよ。私もメリーさんと話せて楽しいから」


「そうですか!?なら良かったです!」



 気遣ってくれたメリーさんに対して、柳瀬さんは気前の付き合いの良さからメリーさんの気遣いに頼らない。

 寧ろ、この世界唯一の同年代のお友達に楽しくおしゃべりがしたい様子。

 俺と正反対の人だ。 

 しかし、自分ももっと柳瀬さんと楽しくおしゃべりしたかっただろうメリーさんは、「俺は全然良くないけどな!」と醸し出している俺の雰囲気が伝わったのか、話を切り上げて仕事に戻ってくれた。



「じゃあ、今日の成果を拝見しましょうか!!お二人は依頼は受けてませんよね?でしたら何が飛び出してくるのかドキドキです!」


「あはは、そんなに期待しないでよね。ツカサ君、出してあげて」


「取り敢えず、昨日もあったスライムジェルから」



 俺はそう言うと、何個か入っているスライムジェルから出していった。

 始めは普通の顔で、出されていく死体を見ていたメリーさんだったが、最後の方に取り出した大量のリーム鳥と最初の方に倒した四匹のカードッグの死体を見ると、開いた口が塞がらない状態になってしまってた。



「な、なななな!!」


「???どうかしたんですかメリーさん?」


「……どうかしたもないですよ!!ホノカさん、ツカサさん!!これ、何処で見つけました!!??」


「街から数分離れた草原、道から外れているから詳しい場所は知らないです」



 半分嘘だ。

 俺にはマップ機能があるから、行こうと思った何時でも行ける。

 知られたくから言わないけど。



 俺から場所を聞いたメリーさんは何処からともなく帳簿を取り出すと、目を通し始めた。

 パラパラと物凄い勢いでページがめくられ、メリーさんの焦り具合が分かるくらい。

 そんなメリーさんを見て「メリーさんって仕事できるんだ」と思ってしまったのは仕方がない事だと言いたい。

 柳瀬さんも同じようなことを呟いていたから同罪ですね。


 次第に勢いが落ち、ページをめくるのが止まった。

 メリーさんは止めたページを真剣な表情で読むと呟く。



「……やっぱり」


「えーっと、メリーさん?」


「……………」



 柳瀬さんがメリーさんを呼ぶが、メリーさんは反応しない。

 が、次の瞬間



「ツカサさん、もう一度遭遇場所を教えて貰っていいですか?」


「……はぁ、街から出て直ぐの草原、道から外れている場所。方向は南東」



 俺に向かって呟く様に聞いてくるメリーさんに、俺は今度は方角付きで答えた。

 そんなメリーさんを見て俺はある可能性を思い浮かべる。


 まさか!

 外れていてくれよ、ここでもテンプレなんか嫌だぜ。



 と俺の祈りも虚しく、メリーさんの一言で打ち消された。



「あの~?メリーさん、そろそろ教えて欲しいですけど……」


「お二人は分からないんですか?ならば教えましょう!ツカサさん、とホノカさんが倒されたカードックは、この辺では珍しい魔物なんですよ!」


「っえ!?」



 あ~あ、やっぱりテンプレ展開だったか。

 今度は、知らずに狩ったモンスターがレア物でした。

 とか言うものだったのか。

 今更だけど、俺ってテンプレが多すぎじゃない?

 このまま、なし崩し的に魔王討伐しちゃうのでは?



 と思っていると、メリーさんが言った単語に気が付いた。



 ってあれ、魔物?

 モンスターじゃなくて?

 今までメリーさんはモンスターと言う単語しか言って無かったから、魔物は無い物だと思っていたけど。

 これは詳しく聞いてみる必要があるな。

 丁度柳瀬さんが聞いてみてくれるみたいだし。



 柳瀬さんがメリーさんに聞かなかなければ、本を使って読書代わりに調べようと考えていた俺は、密かに柳瀬さんに感謝した。

 読書時間が減らずに済むから。



「ごめんなさい。モンスターと魔物って何が違うんですか?」


「ありゃりゃ、それも知らない人なんですね。良いですよいいですよ、私が説明して進ぜよう!」



 少しはある胸を張って言ってくるメリーさんに、柳瀬さんは少し不機嫌になってしまわれた。



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