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15話「依頼達成」



 町に着くと、サッサと休みたい衝動を抑えながらギルドに向かった。

 ギルド内は昼前に居た時と変わって、沢山の冒険者が酒場でご飯を食べている。

 少し酒気があって気持ち悪くなって来た俺は、出来るだけ長居したくない思いを胸に受付に行く。



「あ!ツカサさんにホノカさん、お帰りなさい!!依頼は成功しましたか?」


「ただいま、メリーちゃん」


「はい、依頼は無事成功しました。これがスライムジェルです」



 まだ受付にいたメリーさんに、ギルドに入る前にアイテムボックスから取り出していたスライムジェルを俺と柳瀬さんの二人掛かりでカウンターに置く。



「……………九、十。はい、確かに十個確認しました。でも、それにしては時間がかかりましたね。道に迷いでもしもしましたか?」


「ううん。道には迷わなかったし、スライムも難無く倒せたよ」



 柳瀬さんが俺の代わりに答えてくれるが、目が泳いているのでメリーさんは怪しそうに首を傾げている。

 純粋無垢なイメージがある柳瀬さんに任せていると、なんか色んな事がバレそうだ。

 ゲームのような視点とかマップ機能やアイテムボックスなどが。

 俺はバレる前に柳瀬さんから変わるようにして、メリーさんに聞いておきたかった事を質問する。



「…メリーさん。聞きたいことがあるんですが、今いいですか?」


「はい、全然大丈夫ですよ!何でも聞いてください!今ならなんと、私の……」



 止めなければ何時までも続きそうだったので、遮って質問を話す。

 これが経験値上昇。



「物を大量に収納できるアイテムやスキルなんかってありますか?」


「あ、はい、ありますよ。魔法具とスキルですね。『魔法袋』なんて言ったりします」


「魔法具とスキル、二種類あるんですか?」


「良い所に目が付きましたね、ホノカさん!」


「わっ!ち、近かい」



 良かった一応、アイテムボックスの様な物はあるのか。

 世間に隠し通さなければいけない事が減って良かった。



 アイテムボックスに近い存在があると分かった俺がホッとしている横で、メリーさんは二種類あるというところに反応した柳瀬さんの手を取って説明をし始めた。

 説明を口に出すメリーさんの表情は生き生きとしているのは気のせいだろうか?



「魔法具の方は『魔法袋』と言います。そして、スキルの方は『収納スキル』と言います。何で違いがあるのかと言いますと、歴史家で色んな説があるんですが、分かっていることを言いますと。初めに収納スキルを持った人がいたそうです。これはかなり昔から知られており、スキルとしてありました。人数も少なく、人によって容量が違いました。そんな中、収納スキルを持った商人がそのスキルを誰にでも使える様に出来ないか?と考て、できたのが魔法袋です。そして……………」



 説明好きなのか、長々とメリーさんは語ってくれたのを要約すると、アイテムボックスみたいな物は存在する。

 スキルの『収納スキル』と魔法具の『魔法袋』の二種類に分かれるそうだ。


 今更ながら説明するが『スキル』という概念について説明しておこう。

 小説などでも色々な設定として出てくるスキルだが、この世界では特殊技能の事を指す。

 魔法と違い、初めから誰でも持っているわけではなく努力で身に付けられる物と認識されている。

 種類は多種多様で基本は『既存スキル』と言う複数人が使用していると確認されているゲームでもよくあるようなスキルと、『固有スキル』と言うその人しか扱えないスキルの二種類だそうだ。

 『収納スキル』は既存スキルカテゴリー内の『希少スキル』に分類されるらしい。

 以上が例によって何も知らないと思われている俺と、本当に何も知らない柳瀬さんに対して『収納スキル』と『魔法袋』の違いについての説明ついでに説明してくれた内容だ。


 少しだけ横道に逸れたけど話を元に戻そう。 

 『収納スキル』は『既存スキル』の中でも持ってる人が少なく、魔力量によって内容量も違うらしく、当然、魔力量が多い人の『収納スキル』は内容量が多い。

 それに対して『魔法袋』は誰にでも使えて、人を選ばないのが特徴だそうだ。

 だが、内容量は製作者の魔力量に依存するのが唯一の難点。

 内容量の少ない『魔法袋』は庶民でも手の届く範囲に収まり、多い『魔法袋』はお金持ちや商人などが使う物らしい。



 メリーさんの説明を聞いて、俺は一つの疑問に至った。

 


 俺のアイテムボックスはスキルに判別してもいいのだろうか?

 ま、性能はスキルと何ら変わりないし、違ってもバレないようにしていれば大丈夫だろう。



 少しだけ事情が特殊な俺はそう結論を出すと、アイテムボックスから残りのスライムジェル十七個を取り出した。

 カウンターの上にシュンッ!と現れたスライムジェルに、メリーさんは目を丸くする。



「はわわわ!!こんなに大量に!!ツカサさん『収納スキル』を持っていたんですか!!?」


「メリー!!!声がデカいわよ!!!」


「す、すみません~!!」



 ビックリしたメリーさんは大声を出してしまい、先輩受付嬢さんに怒られてしまった。

 先に言った方が良かったか?と思ったが、結局大声を出すのは変わらないか?と結論付ける。

 そんなのんきなことを考えていた俺は、メリーさんの『収納スキル』に反応してか、かなりの数の冒険者が俺達を注目しているのに気付く。



 こっち見んな!野次馬共が。

 やはりこうなってしまったか。

 テンプレ回収はあまりするべきではないな。



 周りに注目されることに馴れていない、好まずにいる俺の心情を察してか、先輩受付嬢さんが「はいはい!勝手に同業者のスキルを探索するのはマナー違反よ!!」と蹴散らしてくれた。



 先輩受付嬢さん、強ぇ!!

 あの人、実は凄腕冒険者だったとかの設定でもあるのでないのだろうか?



 注目も収まると、メリーさんが謝ってきた。

 その場限りの反省はしてくれているみたいだ。



「ごめんなさい。驚き過ぎたみたいです。しゅん……」


「だ、誰にでも失敗はありますから、落ち込まないで下さい」



 落ち込むメリーさんを柳瀬さんが励ます。

 そんな優しい柳瀬さんとは裏腹に俺は「しゅんって口で言う人、初めて見た」と感動していました。

 柳瀬さんのおかげで何とか心を持ち直したメリーさんは「さっきまで落ち込んでいた?」と言うほどの変わり身の速さで接待を続けてくれる。



「さっきも言った通り『収納スキル』持ちは珍しいんです。私のせいで何人かの冒険者に知られてしまったので、夜道には気を付けてくださいね?」


「メリーさん!!そこは悪そうな態度を取ってね!!てへっ!とかやらないで!!」



 柳瀬さんが俺の心情を表してくれるが、肝心のメリーさんは「てへっ」とあざとい笑顔で「気を付けて下さい」と言ってくる。



 何、『収納スキル』持ちは夜襲でも受けるの!?

 て、テンプレネタだー!

 っとメリーさん?

 「困ったら私を頼って下さい!」と言ってるけど、元々メリーさんが原因だからな!

 それに、メリーさんではなくて、先輩受付嬢さんがどうにかしてくれるんだろ!?



「まぁまぁ、そんなに怒らなくても良いじゃないですか。えーっとスライムジェルが合計二十七個で銅貨百三十五枚ですよ」



 強引に話を変えるな、メリーさん。

 まぁ、いっか。マップに気を付ければ、赤点が現れるはずだし。

 俺の魔法で蹴散らしてやるっと、そんなに簡単にいくわけないよな。

 夜道には気を付けておこう。



 俺は、柳瀬さんと半々に分けて、銅貨六十七枚を受け取った。

 日本円で大体六千七百円計算になる。

 日給としては、俺が元の世界で稼いでいたよりも少し高い。

 正確言うと半分に分けるのは無理だったので、柳瀬さんには一枚多い、銅貨六十八枚を譲った。

 俺は無いけど、柳瀬さんは借金で三分の一をギルドに持って行かれ、実質銅貨四十六枚になる。

 初報酬も受け取り、今夜の宿代を稼いだ所でギルドには用が無くなった俺は、早速次の行動に移ることにした。






「ご飯はどうする?ここで食べちゃう?それとも宿を見つける?」


「ギルド内の酒場近くでのご飯は控えた方がいいかもしれない。外に出よう」


「え?うん」



 俺は柳瀬さんを引き連れて、ギルドを出て行くと「確かここら辺にあったと思うんだけどなぁ」と俺は記憶を頼りにある露店を探して道を進む。

 そんな早歩きをしている俺の後ろを柳瀬さんが小走りに追いかけて来る。



「ツカサ君、待ってよ!何を探しているの?」


「っと、あぁここだ」


「え!?串焼き屋台?」



 そう、俺が探していたのは串焼きが売っている屋台だ。

 ここで夕飯を買おうと俺は思っている。

 網上で焼いている串焼きを見ると、一本でもかなりの量があり、何本にしようか?と悩んでしまう。

 悩んだ俺は銅貨三枚を使って、串焼きを二本買ってみた。

 一日中何も食べていない時に食べる夕飯は結構好きだ。

 一日のエネルギーを補給するこの時が。



「いただきます。はむっ!美味しい!!ツカサ君はそれだけで足りるの?」


「いや、いつもこれくらいだから」



 俺の後に五本も買った柳瀬さんは串焼きを食べながら俺に聞いてきたが、俺は全然大丈夫だと伝える。

 これでも多いと思うんだが………俺の場合、食べ過ぎると吐き気に襲われると言う謎の体質があるのだ。

 と俺のどうでもいい情報は置いておいて、柳瀬さんは流石運動部って思うほど食事が大切らしい。

 よく食べるなぁ、と同時に残金の事を考えているのか心配になってしまうほど。

 ギルド内の酒場よりも安上がりだから選んだのだが、柳瀬さんにとってはあまり変わりなさそうだ。


 俺と柳瀬さんは串焼きを食べながら、泊まる為の宿を探して道を歩く。

 正直、夕方を通り越して夜になりかけている。

 今の時間帯に空いている宿屋はあるかと疑問に思うが、最悪メリーさんを頼ろうと思う。

 なぜなら、あんなにも頼れ!と胸張って言っていたんだから、俺達を泊めれるはずだ。

 俺は看板に注意しながら道を進む。

 柳瀬さんには説明したが、豪華な作りの看板は却下する。

 俺たちのなけなしの金で泊まれるわけがないからだ。



 はぁ、泊まれる所あるのか?

 正直言って、この宿探しが異世界召喚一日目で一番大切だと言っても過言でもないと思うぞ。

 幾ら冒険者になれて依頼を達成できたからと言って、泊まるところが見つからなければ休めれない。

 これがゲームだったなら、何故か街に一か所しかない宿屋に行くと絶対に泊まれるんだがなぁ。

 そこら辺がゲームと現実の悲しい違いだ。

 根気よく探すか。

 メリーさんのお宅に頼る事も視野に入れながら……。



 俺と柳瀬さんの異世界生活一日目はまだ続く。



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