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10話「装備適正」



 メリーさんにセリフを取られたフェンティーンさんは、「仕切り直しだ!」と言って気持ちを切り替えると、武器と魔力の関係性を説明してくれた。


 曰く、普通の武器ならば関係性は全く無いそうなのだが、一部の武器が魔力次第で使いようが広がるそうだ。

 種類が二つ程あるらしく、一般的な物が『魔法武具マジックアイテム

 普通の武器に『ルーン』と呼ばれる魔法の塊を特別な法方で付着すると、作られる武具のことで性能的には属性を付属させると言う物。

 もう一つは、これまた古代文明の遺産から発見される『古代武具エンシェントアイテム

 有り得ない程強い付属効果が付くそうで、余りにも数が少ない為に能力の効果や製造方法は不明だそうだ。



 なるほどね。

 古代武具は無いそうなのだが、魔法武具の方はここでも扱っているから聞いたのか。

 魔力と武具の関連性も理解できた。

 要するに、ルーンと呼ばれる魔力結晶的な物を武具にはめ込んで属性効果を付属して、使用者の魔力を使ってその効果を発動するって事か。

 魔法使いなら自分で属性魔法や付属魔法を使い、自身や仲間に武具にエンチャント出来るが、その工程を元から武具に備えていると、魔法使いでなくても自身の魔力次第では同じことができるって事。

 つまり、魔法が使えない人でも魔力次第では魔法じみた攻撃方法は可能って事だ。



 柳瀬さんも何となくだが理解できているようで、次の工程に進んだ。

 即ち、



「それで、魔力ってどう測るんですか?」


「ほら!この魔法具を使うんだよ!」



 魔力の測り方だ。

 柳瀬さんの疑問に、フェンティーンさんがカウンター下から水晶玉の様な物を取り出し、柳瀬さんの前に置いて説明をしてくれる。

 手をかざして力を込めて水晶玉に魔力を注ぎ込むと色が変化する。

 魔力の注ぎ方は体の中で感じる「何か」をひねり出せばいいらしい。

 変化した色の具合で魔力量を測ると説明してくれた。

 説明を終えると、柳瀬さんが心配した声で俺に尋ねてくる。



「ど、どうしようか?」


「何が?」


「だ、だって!また危険な状態になるかも…あぁ!!」



 柳瀬さんが戸惑っていたので、俺から測らせて貰った。

 手をかざして、体から『例えようがない何か』を感じとると、それを押し出すイメージを浮かべる。

 すると、俺の中から『例えようのない何か』が流れ出る感覚を覚えた。



 魔法って言えば、イメージが大切だってどこかの小説で言ってたが、正にその通りだったな。

 『例えようのない何か』はさしずめ魔力ってことか?



 俺は魔力をどんどんと水晶玉につぎ込んでいく。

 それに比例して、俺の視界に映っている青色のゲージは少しずつ減っていくのが確認できた。

 如何やら青色のゲージが俺の魔力量、ゲーム風に言えばMPゲージってところで、緑色のゲージが体力ゲージ、つまりHPゲージということになる。

 何処までこの水晶に込めればいいのか分からない俺は「取り敢えず込めれるまで込めてみよう」とMPゲージを気にしながら続けていると、メリーさんが止め時を教えてくれた。



「体がだるいと感じたら、ストップして下さいね」


「結構あるぜ少年!」


「……………まだ大丈夫なんですか?気のせいだ、とは思っちゃっいけませんよ!」


「オイオイ!マジかよ!!」


「ツカサさん!ストップストップ!!」



 初めての感覚に楽しんでいると、メリーさんに止められた。

 はて?体がだるいと感じる魔力枯渇らしきものは感じないし、MPゲージも三分の二以上残っている。

 寧ろ、まだまだこれれからだと感じたのだが、やり過ぎたみたいだ。



「易波君!メリーさんとフェンティーンさんが驚いているけど、何やったの?」


「……言われた通りに魔力を込めてただけだけど?」


「これのどこがですか!!?言われた通りにやっただけではこんな色になりませんよ!!」



 俺が魔力を込めた水晶玉は虹色に輝いていた。

 ……………やり過ぎたのか?

 そう思った俺は一応、フェンティーンさんにも視線を向ける。



「あー、この魔力測定器で測れる最大値を超えてる見てぇだ」


「この測定器って中ランクのものなんですよ!!最低でもAランクに匹敵する魔力量の持ち主になります!!」



 メリーさんはふへぇー!!と驚きを上げながらも説明してくれた。

 その説明に俺はある思いが芽生え始める。



 これってまさかの魔力チートか!?

 だとしたら、俺のチートの力はゲームのような視点と天性の魔法使い?

 この二つが転生特典になるのか?

 自分では選べない、もしくは転生時に魔法が使いたいと言う思いが叶った。

 そう解釈するしかないな。



 そう考えている間に、「よーし!私もっ!」と意気込んでいた柳瀬さんの測定も終わった。

 結果は虹色だった。

 しかし俺と違ってかなり頑張ったらしく、ギリギリだったらしい。



「ハァハァ、わ、私も虹色!」


「二人揃って凄いですねー!こんな結果って初めて見ました!!」


「俺もだぜ!これからの成長が楽しみだ!」



 メリーさんとフェンティーンさんが目を輝かして魔力測定器、俺と柳瀬さんと目線を動かしながら、興奮状態になっている。



 柳瀬さんも多いに分類されるくらいは魔力量が有ったのか。

 俺の視界に映るMPゲージが見えなかったら、ギリギリとは言え俺と同じ虹色になった柳瀬さんの存在に自信が無くなりそうだ。

 やっぱり、俺よりもすごい奴は幾らでもいるって。



 俺のそんな目線に気が付いたのか、柳瀬さんが目の前までやって来る。

 気づかれたか!?と焦っていると、自信なさげな様子で俺に結果報告をしてきた。



「え、易h……ツカサ君!私も虹色だよ?」


「えっ!あ、あぁ。流石じゃない?」


「流石だなんて…え、ツカサ君のほうが…」



 最後の方は声が小さくて全く聞こえなかったが、如何やら「足手まといにならずに済んだ」って思っているみたいだ。

 っていうか、なぜ名前呼び!!?

 ついさっきまで苗字呼びだったよな!

 まさか俺に気でも…ってなるわけないよな。

 多分名前呼びが当たり前なこの世界に合わしているんだ。



 俺はそう思うことにした。

 常に自分の周りからの評価はマイナス思考。

 それが俺が積み上げてきた元の世界から続く自己評価だ。



「はっ!いかんいかん!こんな事に時間をかけておれんかったんだよな」


「はっそうでした!!お二人とも早速決めましょうよ!!お二人ならかなり良い装備が期待できますよ!!」



 メリーさんとフェンティーンさんに呼ばれた俺と柳瀬さんはテンションが高い二人の下に向かった。

 すると、早速フェンティーンさんから希望の武器を聞かれる。

 希望の武器がその人に合っているかは解らないが、やはり好みの武器を扱えるのが一番実力に繋がるとのこと。

 俺も早速妄想全開にしてどんな武器がいいのか考え始めた。

 


「武器…ツカサ君はどんなのがいいと思う?」


「ん?あぁ、自分が使いやすい得物を選べばいいんじゃない?こればっかりは人に聞いてもヒントは出せても答えは出せないと思うから」



 俺は妄想していると、柳瀬さんにどんな武器にするべきか?と問われたので、それとなく装って質問に答えた。

 勿論最後に「…と思う」を付けるのを忘れない。

 俺の考えはこうですよ、と言外だが責任は持たないと言っているのだ。



 なんで俺に聞く!?

 誰かに意見を聞かないと決めれないのは、ダメだと思う。

 正直言って、他人に殆ど興味がない俺は柳瀬さんがどんな装備が気に入るのか分からないので、自分で決めて欲しい。

 と、俺は無難に片手剣から行ってみるか。

 本命は別だがな!



「取り敢えず、剣を持たせて下さい」


「おう!新人から中堅まで幅広く愛用される剣『普通の剣』だ!」


「ありがとうございます。……っと重っ!」



 俺はオーソドックスに剣を希望して、フェンティーンさんから普通の鉄剣を受け取った。

 が重くて構えるのが精一杯だった。



「…っは!……っふ……………ハァハァハァ」


「んー、これは適正が全くないな」


「そうですね!でも大丈夫ですよ!!他にもきっと適正のある武器が見つかりますって!」


「ツカサ君、大丈夫?」



 試しに適当に振ってみたが、全然ダメだと俺でも分かった。

 武器に振り回されるって表現そのものだ。

 ハァハァと息を切らしている俺に柳瀬さんが近づいて来る。



 クソッ!!

 某剣がメインのラノベの様に剣が使えないじゃないか!?

 ってあれはゲームアシストが働いているからか?

 俺にもゲームのような視点が見えるんだから、ゲームアシストくらい付いていればいいのに!


 そう悪態を付くと、俺は剣を使うことは諦めた。

 と言っても、使えたらいいなぁ~程度の思いで試しただけだ。

 本命の武器は他にある。

 俺が剣を重そうに持っていると、柳瀬さんが「貸して?」と手を出してきた。

 正直言って、柳瀬さんが持てる訳がないと思ったが、物は試し、俺は柳瀬さんに剣を渡した。



「ありがと…………ツカサ君。この剣軽いよ?」


「…はぁ?三キロ位に感じたんだけど?」


「そ、そうかなぁ?……やぁ!っそぉ!たあぁ!!」



 ははははははは、俺は幻覚でも見ているのかな?

 だって、俺と変わらない位の柳瀬さんが、あんなにも重かった剣を簡単に振っているんだぜ。

 しかも、太刀筋も綺麗だ。

 これが才能ってやつか……。



 俺と対して変わらないように見える柳瀬さんが、いともたやすく剣を振っている様子を眺めて、俺はかなり心に響いた。

 俺は一体幾つ柳瀬さんに見せ場を奪われたら気が済むのだろうか。

 自分の不甲斐なさに自己嫌悪している俺と反対に、メリーさんとフェンティーンさんは柳瀬さんに対して歓声を上げていた。



「おぉ!!?ホノカさん凄いです!!フェンさんこれって!!?」


「あぁ、適正があったみたいだな!どんな系統の剣が一番合ってるか見ていこうか!!」



 柳瀬さんはやはり剣に対する適正があったようで、フェンティーンさんから次から次へと色んな種類の剣を持たされて試し振りをさせられている。

 メリーさんはそれを観戦しながら「カッコイイですよ!!」とか「そこにモンスターが居ると思って回転切りです!!」とか言って完全に観客モード。

 誰も俺に注意していないので「ホントにこれでいいのか受付嬢」と思いながらも俺は一人感傷に浸っていれた。



 現実を見よう。

 柳瀬さんには剣の適正があったみたいだ。

 でも、女の子に剣の適正で負けるって…どうよ?

 異世界ですら俺には厳しい現実を突きつけるのか。

 いいさ、どうせ俺は離れたところから安全に戦いをするのがあってるんだ。

 接近戦は同級生の女の子に任せる俺ってカッコ悪いなぁ。



 柳瀬さんに適正が合って、俺には欠片もない。

 そのことでウジウジとしている間に、柳瀬さんの武器と防具を揃え終わったようだった。



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