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1話「よくある始まり方」

駄文かも知れませんがよろしくお願いいたします。

一応書き貯めがあるので、時間はバラバラですが毎日投稿予定。

誤字・脱字等の報告有りましたら遠慮なくお申し付けください。



 辺り一面の緑。そんな中にポツンと存在する土色の線。


 この世界を何処からか見守っているお天道様。

 そのような居るのかも怪しい神様からはそのように見えるその道は整備されておらず、何十回、何千回、何万回と馬車が通り出来た人の行き来が作った天然の道。

 街道と呼ばれるには少し整備が行き届いていないその道は、都市付近以外この時代では珍しくない。

 むしろ、辺境であるにも関わらずここまで整備されているのは、その道が重要な場所に続いている証拠だ。



 そんな世界のどこにでもある道の一つを、ある一行が通っていた。

 先頭には大男、その後ろには先頭の大男に比べると劣っているが、それでも鍛えていると分かる六名の男達。

 それだけではなく、中央両脇に六名づつ、後尾にも同じく六名。

 合計十九人の男達はいずれも同じ鎧を纏い、馬に騎乗して一行を護衛していた。

 十九人の佇まいは誰もが真剣であり、護衛対象にアリ一匹近づけさせるものか、そんな雰囲気で辺りの空気をピリピリとさせている。


 護衛対象は一行の中央に位置する馬車。

 ピンと張り詰めた雰囲気を纏っている騎士達が守りながら走っている護衛対象が乗る馬車は、商人が使うような商品を運ぶものではなく、ましてや人間を運ぶ乗合馬車とはまるで違う。

 当然である。でなければ護衛がここまで立派なはずはない。

 護衛からして立派ならば、護衛対象も立派であった。


 まず、馬車を引く馬からして違う。

 真っ白い手入れされた毛並みは、護衛が騎乗している馬とはまるで違った。

 護衛が騎乗している馬がそこらの商人が持っている馬よりも上質な馬であるが、護衛対象の馬車を引く馬は彼らの馬をも超える。

 真っ白な毛並みの白馬であり、物語の王子様が騎乗している絵に使われてそうな優雅なさである。

 だが、その脚力は上質であるはずの護衛隊が騎乗している軍馬にも引け取らない馬力を備えていた。


 馬車本体は木製ではなく金属製であり、要所要所に紋章の施しがある。

 更には窓枠にはガラスがはめ込まれており、カーテンが張られて中の様子は分からない。

 この時代の馬車にガラス窓などの設置は危険で、揺れを押さえる特殊な加工を施した馬車でないと、道を走る際に生じる揺れで割れてしまう。それほどガラス付馬車とは豪華なものだ。



 明らかにお金がかかっている馬車に厳重な護衛。

 中に乗っているのはきっと、やんごとなきお方なのだろう。


 そんな一行を、地上から遥か上空のある場所にてお天道様は見守る。

 まるで、歴史が動くその瞬間を目に収めようとするが如く。





「おかあさま、おかあさま!あと、どのくらいですか?」



 無邪気な子供の声が馬車の中に響いた。


 馬車の中からカーテンをチラッと開け、外の景色を眺めていた女の子は、いつまで経っても変わらない景色に飽きたのか、目の前に座って本を読んでいる母親に質問を投げかける。

 女の子の母親である女性は、金色の長い髪を揺らして本から目を離し、愛する娘に微笑んだ。



 母親に似たのだろうか、女の子の髪の毛も母親と同じく金色をしている。

 一つ違うところがあるとすれば、母親の方はロングヘアなのに対して、女の子は短く切り揃えられているところだ。



 母親は本を閉じると、カーテンをチラッと開けて外の様子を確かめ「そうねぇ」と頬に手を当てて少し考えた後、答えた。



「昔話一つ分位は掛かるかしら?」


「ええ~~~!!?はやくつかないかな~?おじいさまとおばあさまのおうち」


「初めて会うものね」


「えへへ」



 まだ見ぬ祖父母を思い浮かべ、嬉しそうに笑っている娘を見て母親も口元を綻ばせた。

 そんな母親を目にして、女の子は更に嬉しそうにする。

 女の子は母親から残りの時間が物語一つ分と聞き、ならば物語を聞こうと思いついた。


「あ!おかあさま。おじいさまとおばあさまのおはなし、ききたいです!」


「アレアはそのお話が好きね」


「だって!おじいさまとおばあさまのおはなしだもん!!」


「はいはい、お行儀よく聞くのよ」


「はーい!」



 女の子——アレアのおねだりに母親は「よく飽きないわね」と軽く呆れながら娘のおねだりに応え、語る体制に入った。

 アレアの目は既にキラキラ、ワクワクと言った表情を物語っている。

 数分後には多分、母親に「お行儀良くしなさい」と叱られている場面が明白に想像できるだろう。



「今から三十年程昔のことです。二組の男女が――――――――――」




 アレアの母親が語るのは、後に何百年、数千年、万年と語り継がれていく伝説の原本。

 そして、その伝説に埋もれたもう一組の男女の話である。



 時は三十年以上前、人族が魔王と呼ばれる侵略者と戦っていた時代まで遡る。

























         『ありきたりな魔王討伐記』

                              易波司/著


 この物語はフィクションであり、実際の人物、団体は一切関係がございません。



  前書き


  この物語はフィクションではありません。

 私、易波司の実体験を基に書きましたが、信じて頂かなくても結構です。だた、物語として面白く思って頂ければ幸いです。



  プロローグ






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






 俺の名前は易波司。読みにくい漢字になるが、エキバ・ツカサと言う。

 俺は、少し変った家に産まれ、普通の人として育った地方の都市外れに住む男子高校生だ。

 いや、普通とはちょっと違うかもしれない。

 背は低い方で、細身。年齢にしては幼い顔立ちで、普通の顔面偏差値を持った十六歳。

 これが小説とかならここで冴えないとか言って主人公っぽくしたいところだが、そういう奴ほどカッコイイのだから言わない。

 勿論、小説の中にしかホントに冴えないとか言ってカッコいい奴はいない。


 そんな俺は今、学校の帰り道を歩いている。

 いつもなら自転車で帰っているこの道も、歩くと結構辛い。

 というのも、自転車が壊れたせいである。



「はぁ、……疲れた」



 歩くのにもウンザリして、つい溜息が零れてしまった。

 勿論、疲れたのは肉体的にもだが、精神的にもだ。

 学校の帰り、と言うことは学校が終わったわけで、その学校という時間が俺にとって精神的疲労を生む場所なのだ。



 学校という場所は、勉強をする場所、部活動をする場所、友達や仲間と一緒に居られる場所、と人それぞれの考え方があるが、俺にとって本を読む場所だ。

 無論休み時間のことを言ってるのではなく、授業中でも本を読んでいるからそう言えるのである。


 成績は大丈夫かって?大丈夫だ、問題ない。……そんな訳ない。

 成績は常に最下位、テストでは赤点どころか、二十、十点代は当たり前。一桁や零点すら、たまに取る。


 こんな点を取って何も思わない俺は、感覚が狂ってるんだと自分でも思う。



 何も初めから授業中に本を読んでいた訳ではない。

 中学の頃は真面目に授業を聞いていた。

 半分くらいは点が取れていたと思う。

 だけど、段々と難しくなっていく授業に俺は落ちこぼれた。

 それから「まっこれくらいはいっか」と宿題も出さなくなり、家ではゲームをダラダラとしている日々が続いた。

 三年生になると、このままではマズイと感じた親の言われるがままに塾に入り、県内の低偏差値私立高校に受かる位のレベルまで、メッキを貼れた。


 高校に入った俺は友達を作ることもなく、趣味に没頭した。

 小学校高学年の頃から本を読むのが好きだった俺は当時から休み時間は本を読んでいた。

 その時だ。たまたま寄った図書館でライトノベルを手に取った。

 きっかけは何だったっけ?

 タイトルが面白そうだったからだと思う。

 児童書や漫画は読んでいたが、ライトノベルを読むのは初めてだった。

 家に帰って一気に読んだ。結果、思いっきりハマった。

 次の日、急いで次の巻を借りるとその本もその日のうちに読み終えてしまった。

 それがきっかけだったと思う。授業中も本を読み始めたのは。



 話が戻るが、俺が精神的疲労を生み出した、と言ったが理由はそこにある。

 今日の日付は2月15日。世間様で言うバレンタインデーの次の日だ。

 今日も授業中、休み時間問わず本を読んでいたが、周りがうるさい。

 チョコを何個貰っただの、貰えなかっただの、付き合えただの、ヤッただの。

 壊れたレコーダーの様に繰り返す。

 お前らが何を言おうと興味がないんだよ!

 いつもより格段にうるさかった教室にいて、集中して読書ができなかった。

 それが精神的疲労を負った理由だ。



 俺は歩きながら、本のページをめくった。

 長時間の移動に本を読まないのは時間がもったいない。

 だから、休み時間に読めなかった分を取り戻す為に本を読む。

しかし、



 眠ぃ、オールしたのは間違いだったか?

 でも、そのおかげで一気に消化できたのは、良いことだ。



 歩きながら本を読んでいた俺に睡魔が襲った。

 当然だろう。俺はこの日、寝てない。


 俺は夏休みの中間からコンビニでアルバイトをしている。

 理由は本を買うための資金だ。

 俺の家ではおこずかいと言う物は存在しないから自分で稼がないといけない。

 バイトをすると、それだけ放課後の時間が減る。

 だから俺は、バイトの無い日を寝ないで本を読む。

 運の悪い事に、今日がその日だった。



 帰ってから寝るか?

 いいや、待て。それだと、積み本の漫画が読めない。

 クソッ!どうする!?



 授業中でも物語を読む俺だが、読む種類はわきまえている。

 漫画やネット小説は学校では読まない。

 没収されるとキツイからだ。

 だから俺は学校では積み本の小説を、家では漫画やネット小説を、と場所に寄って読み分けている。

 積み本というのは、まだ読めていない本のことを指す。

 バイトのお陰で資金があることをいいことに、見境なく本を買ってしまい、百冊近い本が買ったままで読めていない。

 学校で一日三冊は読まないと、いつ消化出来るか分からない数だ。



 信号に捕まった。

 やはり寝ていないせいか、目がチカチカしてくる。



「はぁ……少しくらいならいっか」



 少しでも気休めにと、目を閉じると車が走る音が聞こえる。

 そんな環境音に合わせて、他の人が楽しく会話しているのも同時に聞こえてきた。



 何が楽しんだろう?

 人との会話?疲れるだけだ。

 最低限の言葉さえ交わせれば、生活には困らない。

 むしろ、本を読む時間が減ってイライラする。


 家での自分を棚に上げて、何言ってるんだろう?



 家での自分の性格や態度を思い出して、俺はそう考える自分が嫌になってきた。

 本心でありながら演技でもある家での性格は、外での態度と違って明るい。

 一人で冷静になって本を読んでいるときは、他人の何も考えずその場に流されているような態度に、俺は嫌悪して、逆に家族といる時は本が一番と言いながらも多分他人と同じような態度を取っている。

 それが客観的にわかるからこそ、俺はそんな曖昧な性格な俺が大嫌いだ。



「異世界に転生出来ればなぁ……」



 別の世界なら。

 気がつくと口に出ていた。



 何度もそう思った。

 今までの自分を捨て、明るく…は無理かもしれないけど。

 別な世界でやり直して、仲のいい人くらい作りたい。


 本を読む為に生きている様な俺は友達がいない。

 話しかけられたら会話もするし、無視もしない。

 しつこくウザイ、スクールカースト上位の奴だったら無視するかもしれないが。

 話しかけられたら反応する俺だが、自分からは話けない。

 ってか?どうやって話しければいんだ?

 何の話題を話せば?

 入学直後ならともかく、黙って本を読んでいる俺が自分から人と話す?

 無理だな。


 でも、新しい世界なら?

 そう言ったことをやり直して変わりたい。

 その変われるチャンスが『異世界転生』だと、俺は思う。


 ……。

 急に何を言ってるんだろう?

 口に出していないから『言う』ではないのか?

 誰かに伝えるわけでもないのに、一人脳内でペラペラと独り言。

 疲れているのか?

 …疲れているから目を瞑っているのだろうが。



 一人で脳内独り言を繰り返していた俺の耳に切羽詰まった声が響いた。



「逃げて~~~!!」


「ちょっ!!――――かっ!!?」


「あんたがそっちに行ったらッ!!」



 女子の声だ。

 声の数からして、三人いるみたいだな。

 事故か?

 まぁ、俺には関係な――――



「うっ、っかぁ!!」



 何があった?



 そう思った俺は目を開けるが、もう遅い。

 俺は何かに吹き飛ばされて、宙を舞っていた。



 空?何で急に!!

 うっ!体の左側が熱くて痛い。

 骨が折れたのか?



 分かったのはそれだけ。

 次の瞬間、俺は地面に叩きつけられた。

 今度は体全体が熱い。

 視界にはトラック?が写っているのがぼんやりと見える。



 あれが突っ込んで来たのか?

 事故って異世界転生したい、とか思っていたけど。

 こうもあっさり事故に遭うとは…。

 というか、あの女の子は俺に向けての逃げて、だったのか。



 地面に倒れたまま、冷静に考える俺の額に何かがつぅーぅっと流れてき出した。

 多分血だ……。頭を打った時に切ったのだろうか?



「うわぁぁ!!事故だぁ!!!」


「誰か救急車!!後、警察にも!!」


「こっちにも人手が必要だぁ!!」



 周りが騒がしい。

 知らない人の声が耳元で聞こえた。



「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!!」


「っう…。」



 うるさい。

 そう言うとしたが声にならない。

 耳元で叫ばれたせいで、耳も痛いぞ。



 ピーポーピーポーと救急車のサイレンが近づいくる。

 でも、どうでもいい。

 今は眠いから。



 多分このまま意識を手放したら、死ぬのかな?

 それも、いいかもしれない。

 死んだら、異世界に転生できる。


 頼むから俺を助けないでくれ。



 そう思いながら、俺は意識を手放した。



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