抗超常現象産業現場対策作業員の日常2
実際に行われる事と言えば、一番近い言葉を使えば「山狩り」だろうか。とはいえ
「汚染区域内の敵対生物は入り次第襲ってくるから、山をかき分けて探す必要が無いだけ楽とも言えるな。
その無駄に精巧な自動探知によりテリトリー内の人間が生きて帰れずに発見通報が遅れ、ここまでの規模になってしまったワケだが」
三枝は携帯型の電子端末から対策手引書のページを開き、画面を見せていく。今さら確認するワケでもないが後輩が居る手前、確認行為を蔑ろにするわけにもいかない。
駒井も「いやもう分かってますって」を全力で顔に出しながら、それに応じる。
他の車両の作業員も確認とミーティングを終わらせ、手慣れた動作で罠や銃器の準備に取りかかる。分類4-22を効率的に処理するために、カレーを煮込む者まで居る。寸胴鍋に、大型のカセットコンロ、武器搬入のスペースを犠牲にして、カレーと徒手にて挑むらしい。
「あっちの班、自由すね」
「俺の頃は作戦遂行効率上の理由として調味料の携帯すら許可無かったんだけどなぁ……そもそも調理済みのカレーは調味料なのか?」
「へぇ、それは辛そうですね。ところで確認したいことがあるので端末を貸してください」
駒井は納得しきれないといった表情で、上司の端末をカメラモードにし、カレーを撮影。
メールアプリを起動、先ほど三枝が作戦規模の連絡に使ったアドレスに添付、送信を押した。
送信履歴を消去し、何事もなかったように礼と共に三枝に端末を返却。
数日後、4-22の対策手引書に「いかなる理由であれ、「丙」の処理を補助する調味料として調理済みカレーは認められません。たとえ国籍をインドに変更したとしてもです」
との文言が追加されることになる。どうやら隣の班は、カレーの許可を得るためにインド国籍の取得まで試みたそうだが、コレはまた別の話となる。