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理想の相手は誰?

~理想の相手は誰?~


 とりあえず、交差点を分かれてから俺の携帯は今まで見たことない動きをしている。Lineがやたら入ってくる。


 もちろん相手はさっき彼女になったばかりの杉山むつきだ。まず呼び方はむつきんにしてほしいとのこと。


 なんだお前は菌なのか?人じゃないのか?とか本気で思ってしまったじゃないか。嘘だけど。


 後は俺に対する質問事項だ。名前からはじまり、趣味、得意科目、部活動の有無に帰宅時間に休日の過ごし方。ものすごい質問攻めだ。


 恋人ってここまで色々聞かれるのだろうか。


(そんなわけないでしょ)


 しかも、天使ちゃんの声がご機嫌ななめだし。でも、天使ボイスにかわりはない。ご機嫌ななめでもかわいいの声に違いない。


(そんな風に言っても私は変わりませんからね)


 でも、どうして天使ちゃんはあの杉山むつきが変わった子ってわかったのだ。本当にそれが不思議だ。どこからどうみても可憐な感じだった、はず。

 

 だが、今は可憐には見えない。そう、ちょっと扱いを間違えたら殺されそうにしか思えないのだ。そんなギャップには萌えない。燃え尽きそうだ。真っ白に。


(え~と。友達と話している内容を聞いてかな。ちょっと過激な子だって思ったから)


 ってか、どんな時でも天使ちゃんの声はマジいやされる。ってか、今まで会話なんて聞こえる距離に入れなかったよ。でも、それだけなのだろうか。


「よ、おはよう。ってか、あっきー変わりすぎてない?」


 そう、声をかけてきたのは友達の赤川だ。


 赤川を特筆すると、男子高校に居るアイドルだ。というか、まず見た目が女子に見える。細い体に大きな目、ものすごくきれいな肌。もう女の子にしか見えない。


 だが、かなしいけれど赤川は男だ。それは一年の時の旅行で確認済みだ。ひょっとしたらという思いはあったが一緒に風呂に入ればわかる。


 夢が砕かれた瞬間だった。いや、俺だけじゃない。


 多くのやつが砕かれたのだ。だが、髪は少しだけ長い。といっても、男子として長いだけだ。ボブカットという感じなのだ。


 だが、男なのだ。これで。そして、赤川はかわいいといわれるのを嫌がる。怒る理由がこれだ。


「当たり前だろう、僕は男だぞ」


 といいながら怒る時頬を膨らませる。なんだこいつ。


 絶対にこの高校でアイドルの座を狙っているだろう。といっても、こういうキャラはそうそういない。


 いや、もう一人いるっちゃいるが、そいつはもう別格だ。生徒会長なのだが、まず黒髪ロング。優等生。だが男。生徒会長の岡島聖は変わり者だ。


 そして、自らアイドルであることに誇りを持っている。なにかの行事で女装をするのは当たり前。というか、普段から制服は女性用だ。


 そして、率先して楽しんでいる。赤川も同じように誘われているが逃げている。逃げ切れていないが。


 高校一年生の文化祭なんて伝説だ。演目は白雪姫だが、白雪姫を赤川がやって、女王を生徒会長の岡島聖がやったのだ。


 鏡役をなぜか観客に任せるという演出でお互いの応援団まで作っていたのだ。まあ、観客込みの演目だったのだが、一般公開したときはかなり盛り上がったのだ。赤川は生徒会長から言われてしぶしぶやっていたけれど。


(ってか、その時の写真見たいのだけれどないの?)


 いや、あるけれど。というか、家にいっぱいある。後は携帯にもあるけれど今携帯の電源を入れる勇気がない。そう、数秒おきに何かが来るのだ。


「あっきーさ。普通高校デビューって高校一年生の時にやるもんだぞ」


 そういって俺のほっぺたをつんと赤川がつついてくる。おい、お前がやると結構しゃれにならないし、この学校には赤川信者が多い。


 だが、信者はなぜか一定の距離を置く。俺は何故か赤川に気に入られていてよく一緒にいるんだ。


(ねえ、今のどきっとしたの?ねえ、したの?)


 あの。ちょっと聞きたいんですけれどどうして天使ちゃんはテンション高いんですか?


(当たり前じゃない。ここは男子校。そして、男子校に存在するアイドル。そして、そのアイドルと仲がいいあっきー。これは絶対にラブコメの要素があるわ)


 ねえよ。というかさ、俺と天使ちゃんならまだわかるけれど、なんで俺が赤川とラブコメするんだよ。ってか、そもそもラブコメって表現自体がどうなのよ。


(ってか、そもそも女扱いされたくない赤川きゅんがどうして白雪姫をやってくれたの?)


 あ、それ俺も謎だったんだ。やりたがらなかったんだけれど、なんかいきなりやるって言い出したんだ。


(その時どういう会話とかしていたの?)


 う~ん、そうだな。確か赤川が俺に「あっきーも僕の白雪姫姿見たいの」って聞いて来てさ、俺色んなヤツに赤川を説得しろって言われていてつい「まあ、ちょっとは見たいかもな」って言ったんだ。そうしたらいきなり「やる」と言い出したんだ。


(あっきーって罪作りなのね)


 何がだよ。意味わからん。


「そうそう、あっきー聞いたんだけれど、乙○女子学園の杉山むつきって子と付き合ったって本当?」


 ってか、赤川も情報早いな。まあ、往来であんなに叫ばれたらうわさにもなるか。


「まあ、その成り行きってやつでさ」


 そういうと赤川がものすごく心配そうな顔で俺を見てくる。赤川は俺より背が低く見上げる感じになる。こいつ自分が女っぽいことを嫌がっている割に行動が女っぽすぎるんだよな。


(ドキドキしてきたでしょ。そこで肩をぎゅっと抱いてみる)


 抱かないから。ってか、そんなことしたら赤川のファンからフルボッコになるわ。


(大丈夫。周りには誰もいないから)


ってか、嘘だろう。ここ学校だぜ。まわり人だらけだ。それに人がいなくてもやらないし。


(あ、今記憶をたどったら抱きしめたことあるみたいね。ふふふ)


 おい、勝手に人の記憶を覗くな。ってか、それ違うからな。あれは間違いだから。ちょっとした間違い。


「ねえ、あっきーどうしたの?疲れているの?」


 おい、いきなり顔を覗き込んでくるな。どきっとするだろう。


(そのままキスしちゃえばいいのに。そんな距離だよ)


 しないから。


「ああ、ちょっとなれないことをいっぱいしたからな」


「だと思うよ。だってあのクラッシャーむつきと付き合うんだもの。大変だと思うよ」


 は?なんだそのあだ名。まるでプロレスラーのリングネームみたいなんですけれど。しかも悪役の。


「ってか、そのクラッシャーむつきってなんなんだ?」


 有名なのか。俺が知らないだけなのか。赤川が言う。


「え?知らずに付き合ったの?3組の皆川って知っている?」


 脈絡ないない。でも、赤川が楽しそうに話すからいいか。


(うん、二人は絵になるし。絶対付き合うならラッシャー板前より、この赤川きゅんがいいわよ)


 おい、すでにむつきんの名前の原型なくなってるし。


 ってか、誰がラッシャー板前と付き合わなきゃならんのだよ。ここは悪いけれど天使ちゃんをスルーしよう。ああ、それが絶対にいい。俺のつっこみスキルは封印だ。


(え?どちらかというとあっきーってぼけだよね)


 うん、スルー。


「ああ、知っている。確かここ最近体調崩したって言って学校来てないよな」


 なんかそういう噂を聞いたことがある。原因不明の病気らしい。解明されていない病気だって多いから気をつけないといけない。赤川が言う。


「皆川ってそのクラッシャーむつきと付き合っていたらしい。そして、なんだかうまくいかなくなって追い詰められたって噂だよ」


 そこまで追い込むのか。いや、だが、一人だけならたまたまなんだろう。


「後ね、3年の向井先輩。あの人も」


「え?うそだろう。あの人って留学したって聞いたけれど」


「それは治療のためらしいよ」


「後ね・・」


 それからしばらく赤川の話が続いた。俺は血の気が引いていくのだけがわかった。



 授業を聞きながら外を見る。曇天の空。雨は降ったり、降らなかったりを繰り返す。俺の気持ちのようだ。


(気になるの?自分も壊れるんじゃないかって)


 まあな。あれだけ壊れている人がいるのなら。そんなに有名な子だったんだ。かわいいのに。いや、かわいいのか。なんか最後のあの言葉を言い放った時の顔は見たことない感じだった。


(まあ、どこまでが本当なのかわからないけれど、でも、嘘だって思えるような感じでもないんでしょう)


 そりゃそうだ。休み時間も怖くて携帯に電源を入れられなかった。一回入れたら、まずLineの未読が100を超えていた。


 留守電はいっぱい。メールも鬼のように来ていた。とりあえず俺は昼休みに返事するとだけ送っただけだ。正直怖いと思った。


 というか扱い間違えたら本当に殺されるんじゃないのか。こういうフラグなのか。俺死亡するのか。彼女ができるまで死なないとか言ったことないぞ。ここは俺が守るとかも。


(何から守るの?私の事?)


 もう、茶化さないの。しかも、そんな天使ボイスで。でも、俺のことを心配してくれるのは天使ちゃんと赤川だけだ。赤川は本当に心配してくれている。友達思いなのがわかる。


(あれは友情だけじゃないわね。絶対恋愛感情があるわ)


 ないから。ってか、なんで俺と赤川をくっつけさせたがる。


(絶対そのほうが幸せよ。すくなくても私は幸せ)


 いや、天使ちゃんおかしくない?俺ら男同士だぜ。


(そんなの関係ないわ。いえ、むしろ男同士だからこそいいのよ。わかる。そこにパッションがあるのよ)


 ごめん。わかんない。そしてわかりたくない。


(ここまで言っているのに?)


 ってか、ここまでもどこまでも関係ないよ。


(恨む、恨む、恨む。死を。死を。死を)


 なんでデスボイス。本当に呪われそうだし。でも出来ないこともあるからね。その代わりに俺に出来ることがあるなら言って。ま、何が出来るのかわからないけれどさ。


(え?じゃあ、お願いが二つあるの。一つは簡単よ。私その生徒会長を見たい。後で会いに行ってよ)


 まあ、今日はこの後体育館に行かなきゃいけないからすぐ会えるぞ。もう一つは何だ?


(もう一つは結構本気の話しなの。私のことを調べてほしいの。私がどこの誰かを?)


 え?君って天使じゃないの?


(違うって言っているじゃない)


 そんなに天使ボイスなのに。もう、ずっと俺耳が幸せだよ。いつまでも天使ちゃんの声を聞いてみたい。


(はいはい。ありがとうね)


 むっちゃ棒読み。でも、その棒読みでもかわいい声なのさ。んでも、天使ちゃんは自分の事を覚えていないんだよね。


(うん、なんかうっすらと覚えていることはあるんだけれど、もやがかかっていて思い出せないの)


 でも、それだけじゃ俺何が出来るっていうんだ。


(だからまず調べてほしいの。なんでこんな状況になっているのか。だってこの状況おかしいでしょう)


 そうだな。まず、俺に彼女ができた。いや、妹と会話が普通にできている。


(そして、恋人が赤川きゅん)


 違うから。それ。勝手にねつ造しない。


(って、あっきーがふざけているからでしょ。この状態よ。私とあっきーが会話できていること。これって普通に考えたらおかしいでしょう)


 まあ、俺は幸せだから別にいいけれどね。


(私は気になるの。だって、変な想像が勝手に私の中に入ってくるし。あっきー変態だもの。まあ、赤川きゅんにどきどきするとこは受け入れてあげるけれど)


 してないし。まあ、でも、普通に考えたらこんな状況おかしいわな。一体俺らに何があったのだ。


(だからまずあっきーの事故のことを調べてほしいの)


 まあ、それくらいならいいぜ。俺は毎日暇だしね。


(あのラッシャー木村に殺されてもしらないけれどね)


 クラッシャーむつきだ。なんでちょいちょい変えてくる。まあ、確かにあの子を無視していたら事故を調べるなんてことできそうにないな。でも、天使ちゃんのお願いだ。絶対調べてやるからね。


 そう、俺はまだ知らなかった。それがどれだけイバラの道だってことを。





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