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歯医者さんのドアをあけ、スリッパ入れのドアを開け、待合室のドアをあけ、ようやく受付嬢の前に辿り着く。
なんかもう、それだけで疲れた気分だよ。
さて、何と言えばいいのだろうか?
「すみません、初めてだと思うんですけどどうすればいいですか?」
すみません、ものすごく不思議そうな顔で見ないでください。
「予約はされてますか?」
「いえ」
「予約されてかれますか?」
「えっと、いつが空いてますかね?」
「2週間後になりますね」
受付嬢の言葉が一瞬聞こえなかった。
「え? もう1回お願いします」
「予約が可能なのは2週間後からになりますね」
「2週間後、ですか」
マジですか。
前に来た時には予約なんて必要なかったのに……いるのか。
歯医者さんは余ってるって話じゃなかったのか、あれは都会だけの話だったのか。
「すみません、歯が痛くて2週間も待てないので……すみません」
受付嬢は目線を落としたきり、何も言わない。
……帰っていいんだよね? ね?
引きこもり歴10年以上のあたしに、それとなく空気を読むなんて高度な技能は搭載されてないんだよ?
顔をあげた受付嬢が、
「あれ? 何でまだいるの?」
みたいな眼で見てくるから、いいっぽいな。
よし、帰ろう。
というか、次の歯医者さんを探そう。
「1番早くて、2週間後になりますね」
3軒目の歯医者さんであたしは諦めた。
これ以上遠くの歯医者さんだと、通うのが大変になる。
これから何度も通院することを考えると、2週間は我慢するしかないっぽい。
なんだよ、大繁盛じゃないかよ歯医者さん、こんちくしょー。
それなら家から一番近い歯医者さんがいいやと、最初の1軒目に戻って予約を入れてもらうことにした。
評判もいいしな。
「1週間後の午後4時が空いてますが、どうされますか?」
「お願いします」
……あれ? いつの間にか1週間減ってないかい?




