騎士に恋するプリンセス(?)
オンラインRPG「タワーオブプリンセス」の二次作品です。
あの場所を抜けて、ロゼシュタッヘルから教会の村アルトグレンツェへ一人の男が来たと大騒ぎになった。
シュケーネンに居城を構える白雪姫こと、アンネローゼもその話を受けてアルトグレンツェへ向かった。
全てが眠りについた村。そこから来たという男は飄々としてつかみどころがなかった。
「いや、変な夢見て起こされて、そんでもって来ただけですから」
それで通用するような輩はいない。しかし、フェアリーのエインセールが「私が助けてもらいました!」と証明しているのだ。あの村から来たのは間違いないのかも知れない。
「いばらの塔へ行かなきゃ行けないみたいなんですが」
「ふざけるのも大概にしなさい!」
「ふざけていませんよ~~。ルクレティア様らしき女性が夢で『助けて』って訴えてきたもんですから」
「お姉さまらしいこと。他者に助けを求めるなんて。でも、塔に入るにはローズリーフを集めなくてはいけないの。そして、誰かの騎士になること」
男はその言葉にやや驚いたような顔をしていた。
「ローズリーフがあれば、眠りの魔法に打ち勝てるといわれています。それゆえです」
シンデレラが付け足してきた。
「誰、とわ言わないわ。この六人の誰かの騎士になりなさい。一人ずつ話を聞いて決めるといいわ」
ついでに村人や騎士からも話を聞けばいい。
男を振り返ることなく、アンネローゼは広場をあとにした。
「わたくしを主に選ぶの?」
飄々としたその男は、迷うことなくアンネローゼのところに来た。
「ほ……他の人の話は!?」
「聞いてませんけど?」
「それでいいの!?」
「いいですよ~~。俺は直感で決める人間で……」
「ちょっ!?」
いきなり動かなくなった男に、アンネローゼは慌てた。
「すみません。で、何の話でしたっけ? たまに、おれ動けなくなるときがあるらしくて、その直前の記憶が曖昧なんですわ。これも眠りの障害でしょうかねぇ」
さらりと言う男に、アンネローゼは絶句した。
「姫様?」
「……そ、そうね。わたくし以外の主義・主張は聞いたのかしら?」
「聞いてませんねぇ。騎士や村人に少しばかり話は聞きましたけど。直感で決める人間なんですよ。で、あの場で俺は姫様がいいなぁと思っただけです。
力みまくって、住民ばかり気にしている優しい姫様を、ね」
「わたくしが優しい? ありえないわ」
くくく、と男が笑う。
「俺からしてみれば十分優しいと思いますよ? まぁ、そんなわけでよろしくお願いします。姫様」
騎士の礼を取った男の前にアンネローゼはしゃがみこんだ。
「そう。ならばわたくしのために頑張って頂戴。無謀なことはしないこと。いいわね?」
「お! リアルツンデレ!!」
「……はぁ?」
「いえいえ、何でもないです」
しれっと視線を逸らして男が言う。
「姫様~~。これは町で見つけたアクセサリーです。お土産!」
「お……お土産よりも報告をしなさいっ!」
「あははは。だって姫様が使ってくれてるのが嬉しいんですもん。で、報告ですが、雪の女王は謎ですね~~」
「謎?」
「ハイ。いばら姫の眠りに関わっているかも知れませんが、別の理由もあるかもしれませんねぇ」
聖女を選び、一人だけが犠牲になるというその考えを否定したアンネローゼに男は笑っただけだった。
そのあとからずっと、こうやってどこかに行けば土産を買ってきて、報告をする。
そして、男の直感で感じたことも報告してくれるのだ。それと同時に、エインセールの意見も聞ける。
「あ、あとこれも土産です」
普段は止めないエインセールが、必死に男の手を押さえていた。
思わず怪訝そうな瞳で見たが、ワクワクとしてその箱を開けた。
「きゃぁぁぁぁ!!」
アンネローゼの悲鳴が城にこだました。
中にいたのは、魔物ではないカエル。
「姫様、固くならないでくださいよ。そうやって怒って、笑って欲しい……」
そこで唐突に男が消えた。
「ちょっ!?」
そして、男から貰った物までもが一緒に消えたのだ。
まるで、男が最初から存在しなかったかのように。
「姫様~~。これは町で見つけたアクセサリーです。お土産!」
先ほどまでそこにいたのが嘘のように、また城に入ってきた。
「……い、今持っている箱だけいただくわっ!」
「あ、ばれてら。エインセールお前ばらしたろ!」
「一緒に来て出来るわけないじゃないですか!!」
「いい加減にしなさいっ!」
言い合いした二人をたしなめ、また報告を聞く。
「実はね、先ほどもその報告をあなたたちから聞いたのよ。そのあとカエルの入った箱を出されて驚いているうちに、あなたたちが消えたの」
「またやっちゃいましたか~~。その辺りも俺の仕様なんで、安心してください!」
「あ、安心できるわけがないでしょ!? あなたまでいなくなるのかと思ったのよ!」
「俺まで?」
剣呑な男の言葉に、アンネローゼは失言に気付いた。
「ねぇ、姫様。確かに俺は信用ならない馬鹿な男かもしれませんがね、二十歳にもなっていないのに必死に頑張ってるいたいけな少女を見捨てるほど、愚かでもないですよ」
そう言って男はぽんぽんと頭を撫でてきた。
「俺は無頓着で学のない男なんで、姫様の荷物を肩代わりできませんけどね。でも、あなたの剣と盾にはなれる。それだけは忘れないでください」
そして、男はアンネローゼの手の甲に忠誠のキスをしてきた。
「何度消えようと、何度動かなくなろうと、俺はあなたの元に帰ってくる。だからあなたはここで俺を待っていてくれませんか?」
「……そうね」
「何度も驚かせてしまうかもしれませんが。それでも帰る場所はあなただ」
「殺し文句だわ。せいぜい、私の役にたってちょうだっ!?」
また男が消えた。
「……今度の会話はどこからやり直しなのかしらね」
笑みを浮かべてアンネローゼは呟いた。
その後も、神出鬼没な己の騎士にアンネローゼは引っ掻き回されながらも執務をこなしていく。
すみません。途中までやったんですが、ネタがこれしか思い浮かびませんでしたm(__)m
ちなみに、神無の主もアンネローゼです。どう見てもツンデレだ。