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California Zombie Killers  作者: 三篠森・N
EP 0 颯爽登場、California Zombie Killers!
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0話

 弾け飛んだゾンビの冷たい血を肌で感じるたびに、ミランダ・レイチェル・ノーマンは激しい嫌悪感と、ゾンビたちとは違って温かく優しくと慈しみにあふれていた母の温もりを思い出して、時々泣いた。






「お待たせ! ウィークリーゾンビキラーズの時間だ。今週も北米大陸50万人のゾンビキラーズの中から最も多く、そして華麗にゾンビを殺した今週(ウィークリー)のゾンビキラーをランキング形式で紹介するぜ! 今週の第3位は! 一人国境警備隊、リカルド・マクファーレン! 国境を越えたゾンビを片っ端から打ち抜いてリオグランデ川を真っ赤に染めた愛国者だ。ゾンビ殺害人数は約50人!」

『俺は愛国者として当然の義務を果たしているだけだ。国が崩壊してからはサルサソースまみれの無法者(テロリスト)共がでかい顔をして祖国に汚ねぇ足で踏みこんでくるが、かつては当たり前だったことを今でもやってるだけ。犯罪者(テロリスト)共観てるか? 祖国の土は汚させない。なぜなら俺は愛国者だからだ! そして対岸の火事だと思っている愛すべき我が国民たちよ、平気な顔で不法入国者どもが国境を渡るこの状況を知ったら銃を持って立ち上がれ! 今、この国は侵略されているんだ! 一緒に犯罪者共を駆逐するぞ! We the people(我々こそ真の国民だ)!!』


 かつての世界一の大国は突如発生した、死者がアンデッドとして蘇る現象により一週間で国としての機能を失った。しかし、人間たちは生者を襲うゾンビたちにより法を失い、秩序を失っても人間たちは広大な大地で助け合いながら逞しく生き抜いていた。



「第2位は! チェリーボーイお待ちかね、ティッシュの用意は出来たかな? ベラトリクス・サンダーランドだ! 特製麻酔銃でゾンビを捕獲する狂乱のセクシーナースは今週も臨場感バツグンの残酷手術の映像を番組に送ってくれたぞ。患者の数は今週だけで28人! 数は物足りないが手口は華麗そのもの! なお、ドジッ子のベラトリクスはうっかり手術に失敗して全員が死なせてしまったようだ」

『捕獲した28匹の患者(クランケ)全員が農薬の注射に強い拒否反応を示したわ。うち20匹の眼球をメスで摘出したところ視力を失って這いずり回った。ゾンビも視力への依存が大きいようね。他にも四肢の切断や焼却、内蔵の除去、電気ショックなど人間にダメージを与えるものはゾンビにも有効ということが分かったけど、少しサンプル数が少なかったわね。来週こそわたしがもっとクールな結果を伝えられるように祈りなさい』


 ゾンビの襲撃を躱しながら自給自足と物々交換で隣人たちと親睦を深める生活が一年、二年と続いたある日、全ての人たちは好都合なひとつの真実に気づいた。ゾンビたちは足が遅く、力がなく、頭を殴ってしまえば死んでしまう。むしろ簡単に殺せるものすごく弱い存在だと言うことに。そのことに気付いた賢い人間たちはゾンビへの逆襲と襲撃を始める。ある者は拳銃、ある者は医療器具、鍬、斧、トラクター、野球のバット、チェーンソー。日常のありとあらゆるものがゾンビを殺す凶器と化した。


「今週の第1位、ウィークリーゾンビキラーズの発表の前に番外編の紹介だ。元ウィチタ在住のジェシー・パークさん54歳は今週、牧場をうろつくゾンビに牝牛の尿をぶっかけてやったそうだ。その後の衝撃の映像がこちら!」

-衝撃映像のため一部映像を加工しています-

『まったくびっくりしたぜホーリーシット! あんなモンを見ちまうなんて生まれてきたことを後悔したくらいだ。あぁ、あのゾンビかい? 牡牛のレイプに耐えられる生き物なんかいやしねぇに決まってる。あのゾンビファッカーの牛だって気味が悪くてとっくに殺してゾンビにくれてやったよ。もう二度とゾンビに牛のションベンをひっかけたりしないね。グロテスクで二日はメシがノドを通らなかったからな』


 ハゲて腰の曲がったジジィだろうとケツの青いガキだろうとゾンビなら簡単に殺せる。やがて競争心の強いこの国の人々は自らが殺したゾンビの数を競うようになり、自分がいかに勇敢で鮮やかにゾンビを殺したかを自慢し始めるようになった。各地でアクロバティックなゾンビ殺しが自然発生的に多発した。空前絶後のエクストリームスポーツ、ゾンビ殺しがこの世に生を受けたのだ。


「今週の栄えあるウィークリーゾンビキラーズはもちろんミッキー・ローリネイティス! 今週で39週連続1位のゾンビキリング界のリビングレジェンドは今週は芝刈り機だけを使って208人ものゾンビを惨殺したぜ」

『親愛なる視聴者諸君、今日はいいニュースと悪いニュースがある。まずはいいニュースからだ。紹介しよう、このとびっきりの美女は妻のマロリーだ。俺たちは今週結婚したんだ悪いニュースは来週の今頃はハネムーンに出かけていてゾンビ殺しが出来ないってことだ。全国の愛すべきゾンビ殺しのバカ野郎共には朗報だったかな? 俺のいないと来週のウィークリーゾンビキラーの座は空位だぜ。俺としちゃ、あのサイコビッチのベラトリクス・サンダーランドあたりがウィークリーゾンビキラーズになると気に食わねぇからな。案外のWILD HOGSのクソジジイあたりが奇跡的なゾンビキリングをしてくれるかもしれないぜ』




【登場人物】

ミランダ・レイチェル・ノーマン(Miranda Rachel Norman)

 17歳。チャールズ・ディーン・ノーマンの妹。割と冷静で無口でドライな性格。生き別れた母を兄とともに探しており、若干マザコン。基本的に兄の車には乗らない。兄の指導により銃器の扱いに優れる。サイドカー付きハーレーを愛用しているが無免許。


チャールズ・ディーン・ノーマン(Charles Dean Norman)

 27歳。ミランダ・レイチェル・ノーマンの兄。言葉遣いは乱暴だが妹思いの熱血漢。ミランダと共に母を探す旅に出る。愛車はインパラ。基本的には妹のサイドカーには乗らない。軍にいたことがある。


荒野のおっさん(Kouya no Ossan)

 本名、年齢不詳。荒野で20年間俗世間を断ち、一人で自給自足の生活をしていたためゾンビパンデミックのことも知らなかった浦島太郎。20年ぶりに人間に会ってしまったせいで人恋しさを感じ、ノーマン兄妹の旅に同行したりしなかったり。ジェネレーションギャップに困惑したりしなかったり。かつての常識で言えば、一番の常識人でもある。


シノブ・イマガワ(Shinobu Imagawa)

 27歳。チャールズの旧友で現在はサンフランシスコで診療所兼古物商兼バーのオーナーをしている。情報通で珍しいゾンビに目がない。


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