変質者との戦い
「……っ!!」
マグナの余裕な笑みに男は業を煮やしたのか素早く踏み出し剣を突き出した。
「ふっ」
マグナは躯を横に捻り剣を避ける。
「まぁ、待て焦らずとも」
マグナは自販機の近くにスーパーの袋を置き男を睨んだ。
「相手をしてやる、っ!」
「!!」
マグナは男の顔に、おしるこの缶を投げる。
「くっ」
剣を咄嗟に横に振り缶を真っ二つに切った瞬間、マグナが男の頭上に踵を落とした。
「っ、いつの間に……くっ!!」
躯を横に反らし避けマグナと男の視線が交差する。
「ほぉ……母にやりすぎるなと言われたが……」
真っ二つになった缶に視線をやるとマグナはニタリと笑った。
「相手は変質者で真剣を持っている……ふむ、本気をだしても問題なさそうだな」
男に向かって拳を構えると挑戦的な眼差しで煽る。
「こんなことをしている場合ではないというのに」
男は忌々しそうにマグナに視線をやると剣を構え直した。
「今度はこちらからだ……っ!!」
地面の砂を蹴り上げて男の顔へ飛ばす。
「っ、先ほどから卑怯な手を」
男は顔を歪ませ、それも避ける。
「丸腰の相手に剣を向けている奴とは思えんな……!」
その隙に近づき剣を構える男の手に向かって手刀を放った。
剣が地へと叩き落とされ男が拾う間もなくマグナは蹴り飛ばす。
「これで五分だろう?」
男の瞳が一層、鋭くマグナを捉えた。
「僕がその指輪を……見間違えるはずがない」
鋭い眼差しを向けてマグナを見る男の声音は悲痛に満ちている。
「…………………」
その声にマグナは気づいたが答えようとはしなかった。
「どうしても答えないか」
男が左手の薬指を撫でる。
「……これは私のものだ」
「そうか………しょうがないな」
マグナも左手の薬指にある指輪を撫でていた。
「魔法の使えない世界と聞いていたが……出来ないこともない」
男はそういうと左手を前へと出す。
「我が声に応えよ」
男が呟くと左手の甲に淡く青く光る紋章が徐々に浮かんでいく。
「殺す気はないが必ず答えてもらうぞ」
マグナを見据え不敵に笑う。
「……氷の刃へ」
淡く青い光を纏った手をマグナに向かって大きく開いた。
「!!」
それを合図にして男の左手から細長く尖った氷がマグナの足元に飛んで来る。
後ろに飛び退きそれを避けると地面に突き刺さった。
「答えるか?」
「……くどい」
マグナが答えると次々と男の前に氷の刃が現れる。
「………」
「………」
睨み合う両者、空は薄暗さを増し夕闇を告げていく。
「っ」
マグナは無理にでも近づこうと走り出す。
「無駄だ」
男の前に現れていた氷の刃が再びマグナを襲い始めた。
「くっ!!」
「そろそろ諦めろ」
「誰が!!」
マグナの顔が初めて悔しさに歪んだ。
男に近づけば近づく程に氷の刃が出現しマグナの体力を奪っていく。
しかし男の顔色も悪くなっているようだ。
「何、やってるの!!」
突然、男とマグナを咎めるような声が響いた。