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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
ネコネコアザラシ事件
96/203

恋する帽子

「心配だ……」


 私は鰹が丘の獣医のガラス越しに我が息子コッコの写真を撮りまくっていた。


「ふぁ……ナー……」


 今のは欠伸だ。

 10連写ぐらいした。

 

「心配だ……」


 目も開いていない、耳もペタンとなった我が息子コッコ……これは間違いない。


「可愛すぎる……こんなに可愛いなんて……なにかの病気に違いない。可愛すぎる病だ」


 この日も私は100枚ほどコッコの写真を撮りに撮った。


 親バカですまない。



 

……




 ニャームズ旅立ちの朝、私と彼はモールで待ち合わせをし、空を見上げ、帽子を被る女を観察していた。


「結局。彼女はなにをしているんだ?」


「恋だよ」


 何を言っているのだこのオスは。

 

「ふざけるなよニャームズ。そろそろ答えを教えてくれたっていいじゃないか」


「ふざけてなんていないさ。彼女はね。空を見ているんじゃない。あの二階の店を見てご覧?」


「ん?」


 ファンシーショップか?


「あれがなんだ?」


「あの店の前に液晶モニタがあるだろう?」


「本当だ」


 モニタには文字が並んでいる。

 セール品の値段だろうか?


「あれはね。『今日の恋占い』と書かれているんだ」


「恋占い?」


「うん。彼女の恋の相手はやぎ座でB型の山本さんで彼女はうお座。僕にはそれぐらいしかわからなかった」


「……」


 嫌みったらしい……私がなにもわからないのをいいことに。


「なぜわかったか……それを訊かせてくれるね?」


「おや? ここまで話せば君にはわかると思ったのだがね?」


「コンニャロメ……」


 読者諸君。

 改めて言おう。


 ニャームズの性格は悪い。


「まっ……いいさ。ほら。彼女の袋にヘルメットが入っている。あれには名前と血液型が書かれているね。とび職人事故が起きたときの為にああするんだ」


「はぁ……しかし彼女の物ではないのか?」


「女性のとび職人? あり得なくはないがノーだ。それはあの占いが証明していくれている」


「占い……?」


「そうさ。彼女は『うお座のあなたとやぎ座の彼の今日のラッキーカラーは赤』という占いをみたすぐあとに赤い帽子を選んで被った。これで彼女はうお座の恋する乙女だと推理したのさ」


「へー!」


 素直に感心した。

 彼女は袋に帽子を大量に詰め込み、その日のラッキーカラーの帽子を被っていたのか。


「そして『山本B型』と書かれたヘルメットの入った袋……この近くに建設現場がある。ここで占いをみたあと、彼にそれを届けるのが彼女の日課なのだろうさ」


「なるほど」


 しかし人間とはわからないものである。

 大事な判断を占いなんてものに任せるとは……ニャームズにそう言うと彼は


「占いを馬鹿にしてはいけないよ。かつては亀の甲羅のひび割れ方で国のいく末を占っていたし、地位の高い人間ほど占いに頼りやすい傾向にある」


と言った。


「さて、頭の体操も終わったし、僕はニャースロー空港に行くとしよう。見送りはここで結構。ニャトソン。また僕の名前を勝手に語るなよ?」


「わかってるさ」


「まあ、そろそろ帰ってくる頃だ。困ったときには……」


 ニャームズが歩きだすと突風が吹いた。


「……に頼りたまえ。少しは役立つだろう。それでは!」


「あっ! ニャームズ……なんて言ったんだ?……気をつけろよー!」


 ニャームズは風のように走り去った。

 彼は誰に頼れと言ったのだろう?


「しかし占いか……信じる奴の気が知れない。あっ……」


 ニャームズにコッコの写真を見せるのを忘れていた。


「まあいいや」


 送信、送信、送信……ニャームズにコッコの写真を数十枚単位で送ってやった。






……



 黒いローブを被った猫が水晶玉の前で呪文を唱えながら踊る……そしてピタリと止まり老猫を肉きゅうで指した。


「我が占いを愚弄した罪は重い……お前は……死ぬ! ネコネコアザラシ! ネコネコアザラシ! ハッハッハァ!」




続く。





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