引退を悟る
『イカ刺し山ダンディー』は一番の長編になりそうです。
「ほう……ではやはり内藤にも諏訪間ミートにも何も問題はない……か」
「今のところ」
この夜も私たちはコッコ氏と飲んでいた。
「しかしながら鈴ちゃんの土地にいるという輩は気になるな……何をしている? 引き続き調査を頼む」
「もちろんです」
ここで私は今日聞いた『スペシャルルーム』について彼らに話した。
「『スペシャルルーム』? 今日僕は諏訪間ミート内を隅々まで捜したがそんなものはなかったよ?」
「しかし彼らが嘘をつく理由がない」
「ふむ……スペシャルルーム……確かに家畜、この言い方は好きじゃないがね。家畜の数は少なかったね。しかし今は鈴ちゃんの土地だ。あそこを洗おうぜ」
「しかしニャームズ。犬がいてあそこは通れないぜ?」
ニャームズはネコリと笑った。
「おいおい。秘密兵器の存在を忘れてもらっちゃ困るよ。燃料はないが……サラダ油でもぶちこめばきっと何とかなるさ」
「……?」
私にはにゃんのことかさっぱりわからない。
「さて……鈴ちゃんを起こさねばな……」
コッコ氏は立ち上がった。
あぁ……もう朝が来ていたのだ。
朝日が昇る。
「クックドゥルー……」
「おばあちゃーん!」
「ん!?」
コッコ氏がまさに鳴こうとした瞬間。
内藤が鈴ちゃんの家の扉を叩いた。
「なんだあの若造は……バカだな。鈴ちゃんはワシの鳴き声でしか起きな……」
「あい……どしたい?」
「なっ!?」
信じられないことに鈴ちゃんは内藤の声で起きたようだ。
「あんたがやかましいから起きたよ……」
「ごめんね。おばあちゃん。でもほら! 新鮮な卵が取れたからおすそ分け。食べてね」
「ふんに……いい卵だ。あんた朝ご飯まだだろ? たべてきな」
「えっ! いいの! しかしおばあちゃん今日は元気だねー」
……
「あんなに元気で楽しそうな鈴ちゃん何年ぶりかの……そうか。ワシはもういらんのか……」
何か言おうとする私の表情を悟ったかコッコ氏は。
「そんな顔をするな。ワシはうれしいんじゃ。鈴ちゃんの喜びはワシの喜び……これでいい……」
不老不死の鳥と言われたコッコ氏が急に老け込んで見えたのは私の気のせいだったのだろうか?
……
「おっと忘れていた。ニャトソン。これを見ろよ。この近くの港で不審な船を見たというニュースだ」
「今はニャームズ! 前! 前!」
今、私たちがどこにいるか……そう空だ。
燃料代わりにサラダ油をぶち込んだヘネコプターに乗って調査に乗り出したのだ。
「まっ……頭に入れておきたまえ。このあたりかな? いくぞニャトソン! ゴーグルをつけろ! シートベルトはしてるね!? 着陸体制に入る!」
「ふにゃぁぁぁ……」
ヘネコプターはほぼ垂直になって急降下した。