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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
イカ刺し山ダンディー
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ニャームズの着陸

ヘネコプター……猫のヘリコプター


村で唯一の洋裁店……シープ太郎がやってる。

 これは私たち夫婦が両家の飼い主(西岡氏とフジン)に結婚の挨拶をし、我が息子『コッコ』が産まれるほんの少し前の物語……。








「気をしっかり持つんだよ?」


「いやですわアナタ。私は元気ですよ」


「少しでも痛かったからすぐに私に言いなさい。お腹減ってないか?」


「ハイハイ……フフフ……」



 フジンとその恋人の西根氏と共に私達夫婦は『イカ刺し村』にきていた。


「ニャーちゃんたち本当に仲がいいね。片時も離れない……」


「それは僕たちも一緒さ」


「そうね……」


 縁側で寄り添うフジンと西根氏……何やら自分たちを出汁にいちゃつかれているような気もするが、まぁいいか。

 このイカ刺し村には西根氏の師匠である凄腕の獣医がおり、ナタリーはこの村で出産する予定になっている。


「ねぇ。あなた……この村に来てから私に付きっきりで外にでていないでしょう? 私に構わず遊んできてもいいんですよ?」


「何を言っているんだナタリー。君をおいて遊びにいくなんてできないよ」


 そこまで言って気がついた。

 ナタリーは一匹になる時間が欲しいに違いない。

 なるほどそういう時間も必要だろう。

 一日中夫が周りでニャーニャー言っているのも疲れるか。

 そう思っていたらスニャホにニャームズから着信があった。


「どなた?」


「当然ニャームズさ。他に友達いないし」


 いや、余計なことを言う必要はないな。

 悲しくなる。

 私は電話にでた。


「もしもし? ニャームズかい?」


『もしもし? ニャトソン君かい? 君には友達は僕しかいないからだろうが、ご名答。ニャームズだ。奥さんの調子はどうだい?』


「……悪くないよ」


 こんニャろう……いきなり私の友達の少なさをイジッてきやがった。

 自分だって大差ないくせに。

 ……どうして私は舐められやすいのだろう?


『それはよかった。僕も今日の昼にはそちらに着けると思う。そうだな12時だ』


「君。仕事はもういいのかい?」


 ニャームズは仕事があると一匹、鰹が丘に残っていたのだった。


『なんとか解決したよ。ハッピーエンドに収めることができた』


「そちらは風が強いんだな。ビュービュー音が聞こえる。ほぉ。それは何よりだ。ニャームズ。迎えにいくよ」


『風……ちょっとね。いいのかい?』


「うん。ちょうどナタリーから少しは外に出ろと言われたところだったからね」


『尻に敷かれているなニャトソン。メスは結婚すると大概本性をあらわにするからね』


「やめろよニャームズ……」


「……?」


 『どうしたの?』という顔でナタリーが私をみたので私は『なんでもないよ』と小声で言った。

 確かにナタリーは結婚前より豪快というかおてんばというか私をアゴで使うこともあるが……いやいや、そんなことは思っていない。

 例えそうでも私の彼女に対する愛は一ミリも傷つかないし揺るがない。


「とにかく迎えにいく。12時にイカ刺し村の入り口で待っているよ」


『ああ。わかったよ』


 ここで電話を切った。


「ニャームズさんなんだって?」


「昼過ぎにこちらにつくらしい。それで今から出かけて少し買い物して彼を迎えにいくよ」


「うん。それがいいわ」


 ニャームズがくるとわかった途端ナタリーは安心したような表情を浮かべた。

 そりゃあ確かにニャームズは頼もしい。

 頭も良いし、ニャン婦人科医でもあるわけだし。出産が近い時にそばにいてくれたら安心だろう。

 しかし夫としては少し悔しい。

 私は彼女が苦しんだら肉きゅうをさするぐらいしかできることがないのだ。

 いかんいかん。

 妊婦を差し置いて私がニャーバスになってどうするんだ?

 私は一家の大黒柱になるのだ。

 ドーンとしてなくてどうする?


「いってきます」






  

「遅いな……なにか事故でもあったのだろうか?」


 私は村の羊が営業している村で唯一の動物用洋裁店でストライプの背広を買い、チョビヒゲをつけて村の入り口でニャームズを待っていた。

 ……私もすっかりニャームズの影響で猫紳士になってしまったようだ。


「にして遅い……あと3分で12時だぞ」


 ニャームズは12時にいくと言ったら僅かな狂いもなく12時にくるオスだ。

 しかし道路にも農道にもニャームズの姿はない。


「遅刻……か? いや待てよ? そもそもニャームズは何でここにくるんだ?」


 鰹が丘からイカ刺し村まで2~30キロはある。

 まさか徒歩ということはあり得ないだろう。

 バス? 電車? それとも人間の運転する車に乗ってご登場?

 なにでくるにしても私は驚かないぞ。


「……ん? 雷かな?」


 空からバリバリバリバリ……と奇妙な音がするので空をみた。


「おぉっ! ……嘘だろ!?」


『やぁ! ニャトソン! 元気にしてたかい!?』


「ニャームズか!?」


 自転車ほどのサイズのラジコンへリのコクピットにヘルメットをかぶり、ゴーグルをした革ジャンを着たニャームズが乗っていた。



「ニャームズ! 君はそれに乗ってここまできたのかい!?」


「うん! この猫用ヘリコプター……『ヘネコプター』の試運転もかねてね! しかしいよいよ燃料切れのようだ! 着陸する! 少し離れていたまえ!」


「わっ……わかった!」


 私が離れるとヘネコプターは草煙を巻き上げて着陸した。


「……」


「やぁニャトソン。きたよ。ご機嫌いかが?」


 ニャームズはゴーグルとヘルメットを外し小脇に挟み、私に肉きゅう握手を求めた。


「悪くないよ。少々驚いてはいるが……」


 結局驚かされたか……ニャンチキショウ! 私はニャームズの肉きゅうを肉きゅうで握った。


「機会があったら君にも操縦させてあげる。しかし空気の綺麗ないい村だね。退屈しなさそうだ」


 そう言ってニャームズはヘネコプターから降りてタマネギをくわえた。

 私はまさかと思いスニャホを見て時間を確かめた。

 


……12時ちょうどだった。



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