アンコーストリート・ジュラシックパーク
10万文字遠いですね
「いやぁ……事実は小説より奇なりといいますが……いやはやいやぁ……にゃむにゃむ」
「ふふふ……」
僕とモーガンはもう何も語らずウイスキーを飲みながらテレビの向こうのエリック・オグマを黙って見ていた。
「いやはや……あれ?」
「……おや? 驚いたね」
本当に驚いた。
オグマが演説しているのはあの頃よりボロボロになっているが、間違いなくアンコーストリートじゃないか。
もう行動に移すとは。
聴衆の中にはマリオとトッティ……マリオの頭にはプリティー氏が乗っている。
それが一番驚きだ。
まだ生きていたのか……まさか彼も不老不死?
「世の中ファンタジーだね」
久し振りに大笑いさせてもらったよ。
……
『トゥーイヤーズ。トゥーイヤーズ(二年)でこのアンコーストリートを人でいっぱいの世界有数の観光スポットにして見させましょう』
大統領エリック・オグマは逆向きのピースサインを聴衆に向けた。
「大統領……大統領いくらなんでも二年は……ここはもう浮浪者だらけのゴーストストリートですよ?」
「そうです。そうです。第一なぜ大統領ともあろうお人がこんなところに……」
町長と市長が揉み手でオグマにすり寄る。
彼がかつてはこの町に住んでいた元ニートだとも知らずに。
「行動せねばできることかどうかもわかりません。行動せぬまえに不可能だと考えるのは愚かです。世の中はあなたたちが思う以上にファンタジーだ。不思議なことはありえるのですよ? ましてや私は『ミラクルオグマ』だ」
「あー……」
「参りましたなぁ……?」
市長町長を含め、聴衆はオグマのペースにのまれていた。
オグマには人を自分のペースに巻き込み、言葉に説得力があった。
これは彼の素晴らしい才能である。
「ヘイ! ミラクルオグマさんよ! 本当にできるのかい!?」
「そのために先ずは何をするんだい!?」
ハゲた頭に猫を乗せた男と太鼓腹の男がオグマにそう叫ぶとオグマは彼らの顔を見てニッコリと笑いこう叫び返した。
『Icandoitだ! マイフレンズ! そうだな! 始めは数年前に誰かさんたちに壊されたアンコー像を作り直すかな! 先ずはそこからだろ?』
「プッ!」
「クフゥ!」
エリックとマリオ、トッティが爆発したように笑い出し、聴衆たちもそれにつられて大笑いした。
2015年ニャーランド誌掲載『アンコーストリート・ジュラシックパーク』……
完。




