大統領
アイカワナナセ!……猫の言葉で『目を覚ませ!』
キリの良い10万文字まであと少し。
「……とまぁこれが恐竜のトリックさ。わかってもらえたかい?」
僕がクレーン車を運転し、ラジコンヘリを操縦して説明を終えると三匹は後ろにすってんころりんして驚いた。
「ジョージ……お前何者なんだ?」
「そうだ……なんでそんなことがわかる? なぜそんなことができる?」
「まぁ長生きしてるとねぇ……これで2匹は夜に怯えずにすむし、マスターもスッキリしたろう? さて、僕は仕上げの作業があるからこれで失礼するよ。クレーン車とラジコンヘリを返さないといけないしね。それではご機嫌よう!」
僕はクレーン車を操縦し、山をおりはじめた。
「あにゃにゃにゃにゃ……」
「ふにゃにゃにゃ……」
「わふわふわふ……もしかしてジョージさんは……いやあの方は本物の……」
『ニャーロック・ニャームズ!!!……さん!?』
三匹の悲鳴のような声が僕の背中に届いた。
潮時だ。
僕はストリートを出ようと決めたよ。
……………
オグマの手記。
「なんだ猫野郎?」
ある夜……私の部屋に手紙をくわえた猫が突然入ってきたのです。
当時の私は暴力的で人の気持ちなど全く考えない人間で……つまり未熟だったのですな。
「これを読めってか? 出て行きやがれこの……」
「アイカワナナセ!」
「ほぐぅ!」
……なんでしょうな? 夢と笑われても仕方がないのですが……
猫がね? 二本足で立って私を殴ったんですよ。
強力でしたねぇ……気絶しました。
『アイカワナナセ?』……多分『目を覚ませ』と言いたかった……?
空耳でしょうがね。
「いってぇ……くそっ! なんだよ! 手紙? わかったよ!」
目を覚ました私は猫の持ってきた手紙を読みましたよ。
「マジ……かよ……?」
差出人の名は『N』……内容はマリオとトッティが私のためにしてくれたこと……膝が震えましたね。
「アンコー像……そうだ。思い出した……あのピエロも? 俺は……うわっ……うわぁぁ!」
この日は私の2度目のバースデイになりました。
私は友情という物を初めて知り、愚かな自分を呪い、今日この日を境に生まれ変わろうと思いました。
本当に友情というのは……なんというか……私にとってはファンタジーですな。
ハッハッハッ!
『俺に嘘をついたら殺す。そんなルールがあったよな? 正直に話してくれよ』
『ごめんよオグマ……なんでバレたのかなぁ……』
とんでもないルールを考えたものです。
私が問いつめると2人はあっさりと手紙の内容は真実だと言ってくれました。
「バカだなお前ら……いや、バカは俺か……」
「オグマ……」
「ファーストネームで呼んでくれよ」
「えっ?」
「ファーストネームだ。2人が良ければ……俺を今日から友達にしてくれないか? フェアな友達に……」
この提案に2人はもちろん……イエスと言ってくれましたよ。
やっと私はこの日……2人と本物の友達になれたのです。
「いってくるよ」
「うん」
「気をつけて」
世界一周旅立ちの日、私は2人に見送られました。
「おっと……」
「忘れ物かい?」
私は思い切り格好つけて言いました。
「世界を見て、俺はビッグになって帰ってくる。その時は……2人と……この最高の場所。アンコーストリートに恩返しをするよ」
2人は冗談だと思ったのでしょう。
笑っていましたよ。
「おいおいオグマ。市長も町長も性悪だぜ? 君にどうにかできるのかい?」
「そうさ。どうするつもりだいオグマ?」
「力でねじ伏せるさ。町長や市長なんて目じゃないくらいにね! 『黒人初の大統領』にでもなるかな? それと2人ともファーストネームで呼んでくれよ!いきなりは無理かい? さて時間だな……いってくる!」
「……」
「……」
私が背中を向けて歩き出すと2人が嬉しい言葉で私の背中を押してくれました。
「「頑張れよ!……エリック!」」
私は片腕を上げて彼らの声に応えました……とっ。こんなものでいいですかな? 私の世界一周の話はまた今度……雑誌に載せる分のお話はこんな所で十分でしょう?
フフフ……。
しかしあの猫はなんだったんでしょうな? あの猫のおかげで私は友情を知り、生まれ変わり、今、大統領の地位に収まっているのですから私にとっては『幸運の猫』ですな。
○○国大統領『エリック・オグマ』
○○年××日……