大型動物特殊免許
大型動物特殊免許……動物世界の免許。ゾウやキリンの運転が許可される。
「ふぅむ……」
その夜、物置に忍び込んだ僕はそれらを見つけた。
「プレキオサウルスの恐竜シール……小さなプテラノドンの張りぼて、ピエロの衣装にヘリウムね……」
それに砕けたアンコー像と中に収められたクシャクシャの作文(?)。
世界一周の旅のチケットの領収書。
「ふーん……ほほう?」
『アンコーストリートで子供を喜ばせる仕事がしたいなぁ……『マリオ』』
『僕もマリオと一緒。おもちゃ屋を継いで子供たちを喜ばせるんだ……『トッティ』』
「……」
作文にはアンセム小学校最後の卒業生たちの『ドリーム』が書かれていた。
「タイムカプセルみたいなものか……オグマのだけない。さて……恐竜に怯えるあの二匹の為に種明かしをしてやらないとね。悪い夢は立ち去るべきだ。忙しくなるな」
○
アイラ島ニャームズの隠れ家。
「それで? 先生はそのあと何を? 私にはまだ訳がわからない」
「おや? まだわからないのかい?」
僕は二本目のタマネギシガーに火をつけた。
「さっぱり……さぁはやく」
「モーガン。君もニャトソンと同じで自分で考えず、すぐに答えを求めるんだなぁ。それじゃあ成長しないぜ?」
「早く知りたくてたまらんのですよ」
「やれやれ……まず僕はトッティのおもちゃ屋に忍び込みラジコンへリを持ってきた」
「ラジコンヘリ?」
「……最後まで聞いてくれ。その次はマリオの仕事場からクレーン車をお借りした。これは少々手こずった。セキュリティーが案外しっかりしていてね。マリオのPCを少しいじらせてもらった。この際、彼の日記を偶然見つけたんだがそれのコピーがある。あとで読ませてあげる。エリック大統領の手記もね。そして僕はラジコンヘリとプテラノドンの張りぼてを持ち、クレーン車に拡大コピーされたプレキオサウルスのシールを貼ってリッキーとトーマス、そしてマスターを山に呼び出し、クレーン車に乗って山に向かったのさ。マリオの家の裏庭から直接山頂に向かうルートがあってね。クレーン車の運転は実に簡単だった。僕は大型動物特殊免許を持っているからね。さて……」
あれはどこにあったかな? 確か本棚のこの辺に……
「……よくわからない……よくわからないがあなたはずいぶんと無茶されたようだ……」
モーガンは絞り出したような声でつぶやいた。
「うん。僕は今回、自分の知的好奇心を満たす為にずいぶんと無茶したよ。人間の法も犯した。しかし僕は一部の人間が噂するように『幸せを呼ぶ猫』なんだぜ? 今回僕がオグマに書いた手紙のおかげでアンコースリートは救われるんだ。まぁ。それはこれからの彼次第だがね」
僕はテレビに映るエリック大統領を肉きゅうで指差した。
予定にない演説を始めるらしい。
「どうなるやら? ……あったよ。さぁこれを読んでご覧」




