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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
アンコー・ストリート・ジュラシックパーク
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ドリーム

 僕はパソコンで3人のデータを洗った。


「『気弱なマリオは現在建設の仕事』を……『お調子者のトッティはおもちゃ屋』を……そして」


 オグマである。


「『ミラクルオグマ』は一度はミュージシャンになるため町を出て、失敗して出戻りニート生活か……」


 人生とは面白いものである。


「……おや?」

 

 僕が気になった写真は気弱なマリオが抱っこしている猫だった。


「20年前の写真だから……生きてるかな?……念のため……」





「はぁ!? なんですと!?」


「ですからお話を伺いたく……」


「湿ったカリカリは好きですじゃ! ワシは若い頃は装填者じゃった!」


「これは長期戦になるな……」


 アンコーストリートのマリオの家……果たして飼い猫『プリティー』氏は生きていた。

 通い始めて今日で三日目……ボケきっていて話は聞けそうになかったが。


「しかし……」


『俺はこんな場所にとどまっているような男ではない!』


「……」


 オグマがマリオとトッティに演説をぶっていた。


「その通りだオグマ」


「さすがミラクルオグマだ」


 30代にしてハゲのマリオと太鼓腹のトッティが手を叩いた。


「ふんっ! お前たちはこのストリートと同じで誰からも必要とされずひっそりと死んでいくのだろうな!」


「……」


 言動が目に余る。  

 

 アンコーストリートで建設屋とおもちゃ屋を立派に営んでいる2人にふんぞり返るニートのオグマ……しかし2人はいつもニコニコしている。


「世界一周だ。お前たちには理解できないほどのスケールのデカい話だろ。世界が俺を呼び寄せた。くじ引きで当てたんだ。強運だろ? ピザ屋のレシートでくじ引きしたんだぜ? 俺は来週旅立ち、世界のオグマになってやる。こんなシケたストリートには二度と帰ってこねぇ。俺ならこんなストリートぶっ潰してショッピングモールを作るね。お前たちの店はパーキングエリアだ! ……おっと時間だ。あばよ! ピザが焼きあがる時間だ!」


 オグマは決まった時間に裏路地を抜けてピザを買いに行く。


「さようならオグマ」


「またね」


 マリオとトッティはニコニコとオグマを見送った。


「お人好しだな……なんであんなに偉そうにされて嬉しそうなのだろう?」


 オグマはあの話を何度も2人に聞かせに来て、2人はそのたびニコニコしている。


「ドリーム……」


「はい?」


 プリティー氏が急にしっかりした口調で語り始めた。


「ドリームをオグマは再び見つけた。2人はオグマが元気になって嬉しいんじゃ……彼らにとってオグマはいつまでもヒーロー……『ミラクルオグマ』なんじゃ……」


「はぁ……なんですか? ま・て・よ?」


 僕の黄金色の脳細胞達が活動を始めた。


「アンコー像にな……こっそり3人は『ドリーム』を入れたんじゃ……20年前……ワシはそう聞いたし見た……アンコー像には3人のドリームが……」


「ははぁ! そういうことか!」


 アンコー像に隠されたドリーム……建設の仕事のマリオ。おもちゃ屋トッティ……図書館の恐竜図鑑そのものの恐竜……2人のピエロにヘリウムガス……絡まっていた糸が解けていった。


「しかし。理解できないのは恐竜にした理由とこの2人……そしてドリームだ」


 この時、マリオとトッティのお人好しさに僕は呆れたよ。



「シケたストリートか……確かになぁ……」


「うん。本当に無くなっちまうかもしれないしな……」


 マリオとトッティが悲しげに語る。

 アンコーストリートがなくなるという噂は僕も聞いていた。


「なぁマリオ。この間のアレ……幼稚園でのジュラシックショーのヤツとアンコー……大丈夫かな?」


「大丈夫。うちの物置に隠してある。あのジュラシックショーは子供たち大喜びだったよなぁ……」




「ジュラシックショー!? アンコー……やっぱりな!」


 これで恐竜の謎も解けた。




「例のアレ……売れないかなぁ?」


「手作りの『恐竜シール』がか?」


「売れるわけないよな……当分は世界一周のおかげで節約生活だ」


「まあな。しかしこれでオグマが復活するなら……安いもんさ」


「そうだな……」


 本当にどうしようもないくらいのお人好し2人……

 僕はオグマに手紙を書くことにした。

 あの男が2人の優しさに気づかず世界一周の旅にでるのは少し収まりが悪い。


「あ~……婆さん飯はまだかの?」


「……」


 先ほどの事が嘘のようにプリティー氏はボケ老猫に戻ってしまった。


「プリティーさん。ありがとうございます。あなたのおかげで謎が解けました」


 僕が肉きゅう握手をするとプリティー氏は笑顔でしっかりした口調でいった。


「いいんだよ」


「えっ?」


「ふんにゃか……にゃふーん……」


「えと……」


 食えない猫だ。

 ボケているのかボケたふりをしてるのか……



「さて物置へいこう」 


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