アンセム小学校最後の卒業生
※パーソニャルコンピューター……猫のパソコン。
……再びニャームズの隠れ家。
「驚きました。恐竜と不気味なピエロですか……さすがのニャームズ先生でも推理には手間がかかったのでは?」
「いやあ実はこの事件で僕は推理はほとんどしていないのです。ただ運がよかった。ん? そういえば……偶然とは恐ろしいね。ちょっとテレビをつけよう」
僕がテレビをつけると黒人の男がスピーチをしていた。
「○○国の大統領ですな? 確かアンコー・ストリートも○○国だ。確かに偶然とは恐ろしい……」
モーガンはなにやら勘違いをしているようだ。
「違うよ。今回の事件にはこの『エリック大統領』も一枚かんでくるんだ。驚くぜ?」
「ええっ!?」
「ハッハッハッ……」
モーガンの驚きようったらないな。
猫目が開き、シッポがボワボワになってしまっている。
「先生! はやく続きを……恐竜とピエロ……そしてエリック大統領がどう繋がっていくというのです?」
「落ち着きたまえよ」
僕は極上の紙巻きタマネギに火をつけ、焼きタマネギの香りを肺一杯に取り込んだ。
「どこまで話したかな……? そうだ。僕はニャーをでたあとすぐに山に向かった」
「それで恐竜はいましたか?」
「いなかった。ただアンコー像は無くなっていた」
「ほうっ! 恐竜に食べられましたかな!?」
アイラ・ウイスキーが回ってきたのか興奮の為なのかモーガンの顔は紅潮していた。
「どうかな? それで僕は街で唯一の図書館に向かった」
「図書館に? なぜ?」
「恐竜とアンコー像について調べに。あの図書館は実に猫に優しい図書館だった。テレビのボリュームを下げよう」
『ーー!!』
テレビでは大統領がある言葉を連呼していた……。
……
「にゃっ!」
「にゃっ!……じゃねぇよ……まったく……」
「にゃっ!」
「ハイハイ……」
僕は図書館の職員に抱っこされて二冊の本を肉きゅうで挟み、引き抜いた。
「にゃっ!」
「はいよ」
そしてテーブルに本をおいてもらい、開いて貰った。
「しかしこの恐竜の本はなんだ? 今まで貸し出し0だったのに。一人が借りて、猫三匹が読みたがるとは」
前の二匹はリッキーとトーマスだろう。
唯一この本を借りた人間というのも気になる……あとで調べよう。
「ふむふむ……ブラキオサウルスにプテラノドン……そしてアンコー像だ。『二十年前、アンコーストリート百周年記念に街で唯一の小学校『アンセム小学校』最後の卒業生3人によって作られた手作りの木の像である』……か。へぇ。アンコー像は木製なのか? 恐竜は木を食べるのかな?」
「なんだこの猫は……まるで本を理解してるみたいだな……」
「にゃっ?」
どうやら目立ちすぎたようだ。
一度すみかに戻ってパーソニャルコンピューターで調べ物をすることにした。
……
「おかしいな……」
僕はブルーライトカットメガネを外した。
「出店の出店表にくじ引きなんてないぞ?」
この段階で僕は裏路地周囲の猫達の聞き込みを終えていた。
「証言から計算すると……たった五分だ。裏路地のくじ引き屋は五分間だけ存在したんだ」
続いて僕は特殊なルートで図書館のデータベースに侵入した。
※いわゆるハッキングだが、これには目をつぶって欲しい。
「恐竜の本を借りたのは……『マリオ・ルキアーノ』か……ん?」
マリオ・ルキアーノ……一つ前のページに戻る。
「マリオ……」
『あなたは知っていますか? アンコーストリートにあった小学校のことを……アンコーストリートの歴史を知ろう!』
というホームページだ。
「……偶然?」
『山の上の小学校『アンセム小学校』は生徒数減少と老朽化により取り壊されてしまいましたが、卒業生達は今もこの街で……』
「気になるな」
アンセム小学校ホームページの画像をクリックして拡大した。
『最後の卒業生……気弱な『マリオ』君。お調子者の『トッティ』君。3人のリーダー!『ミラクル・オグマ』!』
「……」
アンセム小学校最後の卒業生のオグマか……面影がある。
一応調べるが、これは例のすねかじりのオグマに間違いないだろう。
「最後の卒業生『マリオ』『トッティ』『オグマ』……ね」