上原
「ニャトソン。ここは契約駐車場だね」
「契約駐車場?」
「うん。決められた人間しか使用できない。ゲートもある。これだけで大分犯人が絞られるね」
「本当ですか!?」
なぜニャームズはこんなにも人間の世界に詳しいのだろう?
「ふむ……この道を見ろ。ニャトソン」
「ずいぶんと長い直線だね」
「そうだ。これだけ長い距離なら結構なスピードが出る。ほら。ここがケーブの言う遺体発見現場だ。それでひかれて向こうまで飛んだね。そしてあれが二日目にケビンがいた場所……おっと!」
「あぶない」
突如凄まじいスピードの車が我々の真横に急停車した。
「またワンニャーか!? ワシの土地から出てけ!!シッ!シッ!」
「ど……どうするニャームズ!?」
「見るべきものは見たよ。退散しよう!!」
我々は車に追いかけられながら塀の隙間から駐車場の外へと脱出した。
○
「さてケーブ。」
「はい?」
「先程の老人はこの駐車場の管理人かな?」
「管理人? 【上原】がですか? それはわかりませんが彼はいつもここにいますね。もしかして奴が犯人……」
「かもしれません」
「ニャームズさん。彼の車は新車ですよ?」
「代車かもしれない。早ければ明日。遅くとも一ヶ月以内に車が古いものになったら……彼の車を調べてみてください。ケビンの毛の一本は残っているかもしれません」
「やはり彼が犯人? ニャームズさん。死骸が移動した理由もあなたはわかっているのですよね?」
「うん?……まぁ」
ニャームズの表情はなぜか暗い。
「ニャームズ。はっきりしたまえ」
「ニャトソン。世の中には知らないほうがいいことがある。よし……帰ろうか?」
「帰る!?」
まったく信じられない。なんと不誠実な猫だと思った。
「おい! ニャームズ。ケーブとボブは君を頼っているんだぜ? 説明ぐらいしろよ!」
「知らないほうがいい。帰ろう。フジンが心配する」
「ニャームズ!!」
「あぁそうだ。ボブさん。ケビンの左足には赤いリングがはめられていましたね?」
……そうだったのか。私はグロテスクな見た目にとらわれてそんなことには気づかなかった。
「えぇ。遊んでいたらすっぽりはまっちまって……それが何か?」
「……飼い犬に見えないことはありませんよね?」
赤いリングをはめた犬……なるほど飼い犬に見えないことはない。
「ニャームズさん。それは失礼ですぞ……?」
ボブはニャームズを睨み付けた。
野良に【飼い犬】は禁句だ。
「それが結構ポイントかもしれません。いや、野良でも変わらなかった?……不器用な男だ……それでよかったのか? いや、結論としては何もかわらない……むなしいなぁ……」
ニャームズはニャムニャムと一人言をいった。