ニャー
※『ニャー』……猫の『バー』。
※『ニャリウッド』……猫の映画製作メーカー
あれは確かニャンダイチをアフリカに残し、ニャトソンが決闘に勝利した後の話だ。
僕はとある国の『アンコー・ストリート』にあるニャーで酒を飲んでいた。
「ワイルドニャーキーを」
「イエス」
このニャーのマスターは年老いた物静かな老犬だった。
僕はなんとなくこのニャーを気に入り、毎夜入り浸った。
「おっと『ホラ吹きジョージ』が今夜もいたな?」
「やあ。リッキー。それにトーマス」
傷だらけの猫二匹の来店。
このニャーでは名前や職業を訊くのは御法度。。
僕はこの店では『ジョージ』という偽名を使っていた。
もちろんこの荒くれ猫の『リッキー』と『トーマス』も偽名だったはずだ。
「ジョージ。また面白い話をきかせてくれよ」
「そうだ。ジョージのイカしたホラ話は最高の酒の肴なんだ」
「もちろんいいぜ。さてなにがいいかな?」
連中は酒の肴に僕の冒険の話をよく聞きたがった。
僕はいつも真実の冒険の話をしたが、彼らはまったく信じちゃいなかったがね。
『過去に傷のある虚言癖のある猫』……僕はこのニャーでは道化の『ホラ吹きジョージ』だった。
「○○で……○○だったってわけさ」
僕が話し終わると彼らは大いに笑った。
「そりゃあいい! じゃあジョージは人間の友達がいるわけだ!?」
「そうなるね。人間も付き合ってれば面白い奴もいる」
「ホラもここまでくるとニャリウッドも真っ青だな! ハッハッハッ!」
彼らはビールを飲みながら肉きゅうで僕の背中をポフポフ叩いた。
「おもしれぇぜジョージ。それでよ。今日は。なぁトーマス?」
「ああリッキー。今日はいもイカしたホラ話を聞かしてくれるお前に俺たちも信じられないような話をしてやるよ」
「それはいいね」
二匹は急に真面目な顔になり、私の肩に肉きゅうを乗せた。
「なぁジョージ。頭のイカれたお前にだから話せるんだ。お前だったら笑わずに聞いてくれるよな?……ちくしょう。俺たちは本当に恐竜を……恐竜ってわかるか?」
「わかるさ。遥か昔にこの星の王だった巨大生物さ」
「そうだ。意外とわかってるじゃねぇか。それでな? 俺たちは……笑うなよ? 恐竜を見たんだよ……」
リッキーは歯をカチカチと鳴らして震えた。
「そうだ……しかも二匹だ。とてつもなくデカい恐竜に驚くほど高く速く飛ぶ恐竜だ……」
「ハンッ……」
グラスを磨いていたマスターが鼻で笑った。
この二匹がここでがこの話をするのは初めてではないのだろう。
「恐竜……か。どこでそれを?」
「聞いてくれるか? あのな……」
「ほほう?」
正直僕も恐竜なんて信じちゃいなかったが、彼らの話は実に興味深かった。