15ラウンド2分51秒。
2015年もよろしくお願いします。
カーン……1ラウンド終了のゴングがなる。
「生き延びたな」
「……」
1ラウンドで3回のダウン……すでに私はボロボロだった。
なんとか這いつくばってコーナーに戻る。
「にゃ……ニャトソンさん……」
「ナタリー。私はウソをついていたが君に対する気持ちにウソはない。そんな顔をするな。君は私が守る……」
「……」
……
「ダーウン! ワン! ツー……」
「終わりだな」
第5ラウンド……とうとう私は10回目のダウンをした。
デヴィッドの肉きゅうはまるで石のように固い……
「フニャニャ……」
「なに!?」
私はゆっくり立ち上がりファイティングポーズをとる。
「エイト……試合再開! ファイッ!」
「なんで立てるんだよ……」
今だ! デヴィッドは油断している。
私は開始の合図と共にデヴィッドの懐に飛び込み、ボディーブローを放った。
「ふにゃ!?」
「ふっ……甘いぜ」
デヴィッドのキャッツに割れた腹筋は固く、私は逆に肉きゅうを痛めた。
「そんなへなちょこパンチきくかよ……おっと往生際が悪いぜ……」
それでも構わずボディーブローを打つ……私には必殺技はない。
コツコツ叩くしかないのだ。
第5ラウンド終了のゴングがなる。
やっと一矢報いた。
勝利への点ができたのだ。
あとはこれを線にする。
『君は努力家だ。コツコツやりたまえ。相手の油断をつくのだ。まずはボディーだ。これが点だ。それを積み重ねれば線となり勝利の点に繋がるだろう』
ニャームズのアドバイスを思い出す。
……
第10ラウンド……私のダウン数は21……向こうは0。
しかし私は勝利に向かう線が着実に伸びているのを感じた。
「ハァ……いい加減に……しやがれ!」
「ニャッブ!?」
22回目のダウン……私はカウント2で立ち上がった。
デヴィッドの顔に恐怖が浮かぶ……
私とて辛い猫生を歩んできた。
野良として生き、何度も困難を乗り越えた。
ニャームズと出会ってからは毎日町を走り回りスタミナもついた。
何より彼女の為、負けるわけにはいかない!
私はいつの間にか凄すぎる猫や人に囲まれ自分など価値のない猫だと弱気になっていた。
私は今日生まれ変わるのだ。
地味な者には地味な者の戦い方があるのだ。
「フンニャッ!」
「きかねぇって……うっ!」
私のボディーブローにデヴィッドは顔をゆがめた。
ここでゴングがなった。
……
「せい……にゃっ!」
「うお……」
ブラカリのメンバーの悲鳴があがる……第14ラウンド。私はこの試合初めてのダウンを奪った。
「テメェ……ザコのくせに……」
「ウニャー!」
立ち上がったところにラッシュを仕掛ける。
密着してボディーを何度も打った。
「うぐ……オッ……」
私の拳はすでに砕けている。
だからなんだ? 心は決して砕けない。
……
「ニャトソンさん……もうやめてください……死んでしまいます」
「あなたのために死ねるなら本望ですよ……」
私はヨロヨロとリング中央に向かう。
「ファイナール! ラーウーンド……ファイッ!」
ゴングがなった。
「クオッ……ゲホ……」
私のやることは一つ。
ボディーを打ち続けるだけだ。
「クソっ!」
デヴィッドがガードを下ろし腹を守る……この瞬間を待っていた。
「にゃあぁぁ!」
「!?」
最後の一撃だ。
これで駄目なら……私の負けだ。
「ウグォッ!」
私の肉きゅうがデヴィッドの顔面を貫いた。
力尽きた私とデヴィッドは同時にダウンした……
「ワン!」
痙攣するデヴィッドと動けない私。
「ツー!…… スリー!…… フォー!……」
ロープを掴み立ち上がろうとするデヴィッド。
私は動けない……
「ファイブ!…… シックス!……」
ここでナタリーの声が聞こえた。
「ニャトソンさん! 立って! お願い!」
「ふにゃ……フニャァ!」
私はリングに手をついて力をいれた。
「セブン! エイト!……ファイティングポーズをとってください!」
デヴィッドが立ち上がり、ファイティングポーズをとろうとする……
私は中腰だった。
もうダメなのか……?
「ナイン!」
デヴィッドが力尽き白目を剥いて再び倒れる……そして私は……
「……」
フラフラと立ち上がりファイティングポーズをとる私。
レフリーが両脚を交差して叫んだ。
「テンっ!! ノックアウトォ! ただいまの試合! ニャトソン選手の……KO勝ちです!」