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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
マンボウ町の決闘
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奮い立つ

2014年最後の更新です

「いいぜ……あんたとは決着をつけなくちゃと思っていたんだ……」


 デヴィッドは私の挑戦状を受け取ってくれた……しかし怖い……私はデヴィッドに挑戦状を渡すためブラカリの溜まり場に来ていた。

 大勢のニャング達が殺意の目で私を睨みつける……。



「お前らやめろ。今日はニャームズさんを帰してやれ。場所と日時はこちらが指定する。ニャームズさんよ。本気でやりあおうぜ……」


「あっ。はい」


 つい敬語になってしまったが、もう逃げられない。

 私はニャングのボスにケンカを売ってしまったのだ。


「私が勝ったら彼女と別れてもらうぞ……」


「わかっている。しかしあんな中古のババアのどこがいいかね?」


「貴様……」


 殴りかかりたかったが我慢した。


「楽しみにしているぜ……ニャームズさんよ……」


 私はニャングのアジトをあとにした。




……




『風が吹けば桶屋が儲かる……だよ。ニャトソン。そちらは寒いだろう?』


「はぁ?」


 私がニャームズに決闘の報告をするため意を決して電話をかけるとニャームズは開口一番そう言った。


「いきなりなんだ? ニャームズ?」


『ニャトソン。ずいぶんご無沙汰だね。僕としたことがミスを犯した。君がニャーランド誌で連載を始めたさいはこの事はカットしてくれたまえ』


 私がニャーランド雑誌で連載? 何を言っているんだ?


『ナタリーさんは箱入り娘だ。そうだろ?』


「そうだな」


 こうなったニャームズはもう筋も脈絡もなく止まらない。

 黙って話を聞くのが一番時間を無駄にしない。


『そうさ。そうでなければ説明がつかない。写真と紙幣を間違えるだなんてね』


「なにぃ?」


『もしかしてまだ気がつかないのかニャトソン?』


 わかるわけないだろう。


「ニャームズ。こちらも話したいことがある。できるだけわかりやすく手短に説明してくれ」


『オーケーオーケー。時間を節約するのはいいことだ。だが君がスニャホの電源を切りっぱなしにしなければ事件はもっと早く解決したのがね』


 チクリと嫌みを言う。

 まぁ仕方がないか。


『ようするに……だ。西岡氏の私室にはナタリーさんと友人の柳沢氏しか立ち入らない……本を盗まれたと嘆く西岡氏……つまり西岡氏は『私室にあった本を友人である柳沢氏に盗まれた』ことに心を痛めているのさ』


「……ニャンだって!」


 これは私に大いなる衝撃を与えた。

 しかし言われてみればそうだ。

 西岡氏と柳沢氏のあの態度にも納得がいく。


「しかしニャームズ。『大日本文学兼史実集』だぜ? 言っちゃあなんだが少しも面白くなさそうだし、高く売れるのかい?」


『本は高くは売れないよ。その中身さ。それに全く興味を引かないタイトル……これもまた肝だった』


「わからないな……中身は写真だろ?」


『ノー。ニャトソン。写真じゃない。紙幣さ』


「しへい?」


『おいおい……君もわからないのか……いいかい? 紙幣は人間達のお金だよ。偉人達の姿が描かれているんだ。彼女はこれを白黒写真だと勘違いした』


「へえ!」


 それは全く知らなかった。


『そして小難しくて興味を引かないタイトル……これはへそくりグッズだね』


「へそくりグッズ?」


『人間は面白いことを考える。本の中に紙幣を保管できるのさ。そして誰も手に取らないように分厚くして小難しいタイトルをつける』


「にゃるほどなぁ……」


 本泥棒が入った日、どさくさに紛れて柳沢氏が私室の本を盗んだ。

 そして西岡氏は友人の裏切りに傷ついたというわけか……


『柳沢氏は桶屋なんだってね?』


「うん。大分経営は厳しそうだった」


 だから魔が差して本を盗んだ……全くお金とはトラブルばかりもたらす。


『僕も時間の節約は好きでね。先手を打っといた。柳沢氏が西岡氏に名乗り出るかはわからないが歴史ある桶屋が無くなるのはよくない』


「一体何をどうしたんだ?」


『それを聞くと君はうるさそうだからね。今度にしよう。風が吹けば桶屋が儲かるとしか今は言えないね』


「なんだそりゃ……」


 まぁいいさ。今度はこちらの話をしよう。

 私はニャームズにことのいきさつを話した。




……




『決闘ね……地味な君にしては思い切ったことをしたね』


 傷ついた。


 確かに私は脇役体質だが、いつでも主役で派手な奴はこういう所に無頓着で困る。


『悪い意味でいったんじゃないぜ? つまり……』




……




『まぁ頑張りたまえ。骨は拾ってやるさ』


「そりゃどうもありがとう」


 気づけば一時間ほど喋っていた。


『ニャトソン君』


「なんだ? 急に改まった声で」


 ニャームズは優しい声でいった。



『君は僕なんかよりよっぽど優れた猫なんだぜ? 猫を想い、同調し、行動し、愛することができる。そんな君にどれだけの人と猫が癒やされただろう? 僕だってそうだ。自信を持てよニャトソン。君は脇役なんかじゃない』


「うっ!?」


 これは反則だ。このオスは突然こういうことを言い出す。

 私は不覚にも涙をこぼしてしまった。


『勝てよ『ニャームズくん』。あっそうだ。君の小説のことだが……』


「セイッ!」


 慌てて切った。


 あの小説の事は忘れてくれよ。



……



 そして決闘の日がやってきた。


「ニャームズさん……こんな決闘だなんて……やめてください」


「心配なさらず。この決闘が終わったら……返事を聞かせてもらいますよ?」


「……」


「セコンドアウト! 両者リングインしてください!」


「それじゃあいってくる」



 マンボウ町児童公園砂場特設リング……ここが決闘の場所……。

 私は砂場という名のリングに上がった。

 向こうのコーナーにはすでにデヴィッドが待っている。



「それじゃあ始めようか? ニャームズさんよ……」


「……」


 私は早くも後悔していた。

 ガウンを脱いだデヴィッドの体はカンガルーのようにムキムキだった。

 ……仕上げてきてる。


「砂場がリングだ……ルールは3分15ラウンド。ノックアウトか判定で決まる。準備はいいな?」


「ああ。早くゴングを……」


 やるしかない。彼女の為。産まれてくる子供の為。


「ラウーンドワーン……」


 ゴングがなる直前。誰かが叫んだ。


『そいつニャームズじゃないッスよ!』


「えっ?」


 恐れていたことが起きた。


「そいつはニャームズの腰巾着の臆病者のニャトソンだ! 俺知ってますよ!」


「なにぃ? どういうことだ?」


 叫んでいたのは……元ニャームレスの『ニャーバン』だった。

 そうか……ニャームズが言っていた新メンバーとは彼のことだったか……万事休すだな。


「そこのお前! 詳しく事情を話して見ろ!」


「ウッス!」


「……ニャームズさん? 嘘ですわよね? ニャームズさんがニャームズさんじゃないなんて……」


 私は信じられないという表情のナタリーの瞳を見つめゆっくりと首を振った。



「騙していてごめんなさい。私はニャームズではありません」




……



「……で。……なんです」


 ニャーバンの口から語られる真実。


 私は瞳を閉じてそれを聞いた。

 彼女の失望する顔を見たくはない。


「なるほどな……お前さんは役立たずの助手のニャトソンさんってわけかい? よくも騙してくれたな? 俺がニャームズの名前にビビって逃げ出すと思ったか? 気にいらねぇな……構えろ。俺は俺に牙を向いてきた奴には誰であろうと手加減はしねぇ」


 どういう仕組みになっているのだろう?

 デヴィッドは肉きゅうをボキボキ鳴らしている。


「そのつもりだったよ。約束を忘れるなよ。私が勝ったら彼女の前に二度と現れるな!」


 不思議なことに気が楽になった。

 ここから先はやっとニャトソンとして闘える。

 ニャームズの肩書きは私には荷が重い。


「ゴングをならせ!」


「はい! ラーウーンドワーーン!」


……



「ファイッ!」


 レフリーがそう言うと『カインッ』というタライを叩く音が聞こえた。


 ……そしてその1秒後。


 私は尻餅をつき、ダウンしていた。




2015年にまたお会いしましょう

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