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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
生命と廃棄物の間
6/203

ケビン


「俺たちが兄弟げんかをしたのは5日前です。弟は住みかを飛び出し、行方をくらましました」


「ふむふむ……」


「兄弟げんかはしょっちゅうだったんでね……特に心配はしていなかった。いつも夜になればひょっこり帰ってきたし」


「だがその日は違った?」


「えぇ。待てど暮らせど弟は帰ってこず……心配になった私はドーサツに捜索願いを出しました。この道路の先に塀で囲まれた巨大な駐車場があるでしょう? ケビンはそこで無惨な姿で発見されました……俺は後悔しましたよ。ケンカなんてするべきじゃなかった」


「ははぁ……」


「そしてその日は帰りました」


「……帰った? そういえば埋葬はされないのですか?」


「マイソウ? それは人間のやり方でしょう? 俺たち野良は死んだら虫に食われ、土に還るのがルールなんです」


「失礼。そうでしたね。続けてください」


 動物には動物のルールがあるのだ。


「俺はケビンが食い尽くされるまで毎日通うことを決めました。そしたらですよニャームズさん。ケビンが私たちの住みかに向かって駐車場内を数十メートル移動してるじゃありませんか!」


「……実に不思議だ」


「驚きましたよ。ドーサツによれば誰かがくわえて運んだわけではない。そんな形跡はない。人間が死骸を移動させる理由なんてないでしょう?」


「無いことは無いのですがね……続けてください」


「その日も俺は暗くなるまでケビンと一緒にいました。そして次の日またケビンに会いに来ると……今度は塀を越えた草むらに移動していました!」


 私は猫背が寒くなってきた。

これではまさしくホラーだ。


「そして今日……ケビンはここまでやって来たんです……」


「草むらの横の道ですか……二日目と三日目に比べるとずいぶん移動距離が短いですね。1〜2メートルってとこですかな?」


「そんなことはどうでもいいんだニャームズさん。何とか犯人を見つけられませんか? このままではケビンがあまりにも憐れだ」


「最善を尽くします。ボブさん……しかしね。誓って言うがケビンさんの旅も今日で終わりです。埋葬してあげなさい」


「出来ぬ相談です。私はケビンを見守り続けます」


「そう……ですか……私は忠告しましたよ? さてニャトソン君。最初の現場に向かおう」


「わかった」


「ケーブ。駐車場の車は当然調べましたね?」


「もちろんです。ケビンの匂いのついた車は見つかりませんでした。犯人はたまたまこの駐車場を利用した人間でしょう」


「それはどうかな……」


「ニャームズ。なんだかスッキリしない物言いだね?まるで犯人に目星がついているようだ」


「ニャトソン君……犯人に関しては0〜30パーセントほど……【死骸を移動させた人物】に関しては0〜80パーセントほど僕は検討をつけてるんだぜ?」


「……なんだって!?」


「話を聞いただけで!? ニャームズさん! あなたは魔法使いか!? 是非話を聞かせてください!」


「まだまだ……曖昧な事は言いたくないのでね……どちらも0の可能性がありますしね。さぁ駐車場へゆこう」


「死骸を移動させた人物?そんな馬鹿な……ケビンは自分で……」


「ニャトソン君……」


「うん?」


 ニャームズは私に耳打ちをした。


「悩むぜニャトソン君……この事件が解決した時……全てをボブさんに話すべきか……まだ確定ではない……確定ではないのだが……」


「ニャームズ。君はすごいなぁ……しかしケビンの旅も今日で終わりというのは本当かい?」


「うん? それは100パーセントだね。その話も語るのははばかれるのだが……憂鬱だぜニャトソン」






続く。


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