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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
帆立町フォーチュン・テラー
47/203

ベルガモット

「お~や? ニャームズさんではないですか?」


 帆立町にいく途中。銀だら町で私たちはニヤニヤするニャルバロッサとショカツに鉢合わせしてしまった。


「こんな時間にこんな場所をお散歩ですか? うらやましいですよ。私はニャー探偵として忙しくて忙しくて……」


「本当に暇でうらやましい! ハッハッハ!」


 わざとらしく肉きゅうで肩を揉む二匹……


「やあニャルバロッサ君。話は聞いているよ。ご活躍だそうだね?」


 一方ニャームズはというと全く気にしていないのかすました顔をしてニャルバロッサに話しかけた。


「……ふん。負け惜しみも言えませんか? 僕は今日もまた難事件を解決しましたよ。~に……~の……~とか」


 聞いてないのに自慢しだした。

 ニャルバロッサはどうやらニャームズに悔しい思いをさせたいようだ。


「へえ! 素晴らしいね!」


「……」


 のれんに腕押し糠に釘。 


「前にもいいましたがあなたが僕に勝てるものは一つもない。フィジカルだってメンタルだって。推理力ももちろんそうです」


「頼もしいね」


 いくら何でもこれはビックマウス(猫なのに)だと思った。

 私は今までニャームズの名推理を間近で見てきた。

 若いニャルバロッサにフィジカルで負けることはあっても推理力で負けることはないだろう。


「ふん……例えばね。あの男をみてみなさい」


「?」


 ニャルバロッサが肉きゅうを差す先には花壇の近くであわただしく動きながら公民館にむかう黒いスーツの上を脱いだ男がいた。


「あれが?」


「彼が何をかしていたかわかりましたか? 僕にはわかりましたよ?」


 ……皆目見当もつかニャい。


「……なんだろうねぇ」


「……ニャームズ!?」


 信じられなかった。

 ニャームズにわからずニャルバロッサにわかる…… 本当にニャルバロッサは全てニャームズを上回っているのだろうか?


「ハッハッハ!」


「クーックックックッ!」


 これにはニャルバロッサもショカツも大喜びをした。


「わかりませんか!? こんな簡単なことなのに!?」


「こりゃ驚いた! 天下のニャームズ先生も堕ちたものだなぁ!」


「君の見立ては?」


「聞きたいですか? いいでしょう! 僕は人間の『カタカナ』が読める……あなたには無理でしょう? あの看板には『ダンスコンクール』と書かれています。人間には『タップダンス』という踊りがあり、彼はタップダンスの練習をしながら会場に向かったということです」


「なるほど!」


「さすがニャルバロッサ先生!」


 見事な推理……ニャルバロッサは本物の天才である。


「どうですかニャームズ『君』。僕の教え方はわかりやすかったろう!?」


「おいおい……」


 とうとう敬語をやめ、威張りだした。

 年長者に『君』はないだろう。


「うん。ニャルバロッサ『さん』素晴らしいよ。ついでに僕の意見を言わせてもらってもいいですか?」


「いってみなよ! どうせろくでもないだろうがね!」


 ふんぞり返るニャルバロッサにへりくだるニャームズ……見ていられなかった。


……しかし。


「あの花壇に植えてあるのはベルガモットにラベンダー……いずれもガーデニングで人気のあるシソ科の花です。ミツバチはね。シソ科の花を好むのですよ。そして可愛らしい人間たちはこう信じている『ハチは黒いものを見ると攻撃をくわえてくる』と……花壇でハチに遭遇した彼は慌てて黒い服を脱ぎ室内に逃げ込んだ……これが僕の推理です。あぁ僕はあなたには及びませんが日本語と英語が読めましてね。彼の胸にはバッチがつけられており『staff』『斎藤英夫』と書かれていました。彼は大会スタッフでしょうね。ふふっ……。スタッフがタップを踊るというのはいささか不自然じゃありませんか? さてニャトソン先をいこう。二匹ともまたお会いしましょう。『ニャルバロッサ君』せいぜい頑張りたまえ。僕は『君』に期待しているよ!」


「おぉ! ニャームズ!」


「くぅぅぅっ!」


「おのれっ!」


 さすがニャームズである! 大変にスカッとした。そしてやっぱり私は一切彼らに触れられなかったので少し傷ついた。


 我々は顔を真っ赤にして唸る二匹を放っておき先を急いだ。


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