ニャスとマーニャン
「キャッツメイトだニャトソン」
「……ニャンちきしょう!」
ニャームズが鰹が丘に帰ってきて一週間……ニャー探偵としての仕事は全てニャルバロッサが請け負い、ニャームズはいつも暇だった。
「もう一勝負だニャームズ」
「何度やったって同じさ」
☆
この頃の私はニャームズの住処で毎日ウィスキーを飲み、テレビを見ながら『ニャス(猫版のチェス)』を彼とたしなみ、日がな平和に暮らしていた。
「……しかしニャームズ。君はこのままでいいのか? あのニャルバロッサとかいう生意気なヤング・キャットに好きなようにさせておいて……っと」
私は駒を動かした。
「かまわないさ。事実町は平和だし、大きな事件も起きてない。彼氏もまぁまぁ優秀なんじゃないかな?……っと」
ニャームズが攻めてきた。
「うむ!? しかしケーブがかわいそうだ。彼は町のために働くのが生きがいのような男だぞ?……どうだ!」
最近のケーブは濡れた犬のように元気がない。
「……それは何ともいえないね。ドーサツに仕事がないのはいいことだろう? それに……なにか大きな事件が起きたら僕だって黙っちゃいないさ……ほうらキャッツメイトだ!」
いつの間にやら詰んでいた。
「やられた! ニャンチキショウ! べらぼーめ! あーおもしろくない! やめだやめっ! マーニャン(猫版のマージャン)だったら勝てるんだけどなぁ!」
「ハッハッハッ! なにをやったって僕が勝つさ!」
ニャームズは自信家である。
そして腹ただしい事にそれに見合うだけの実力がある雄だった。
……だからこそ余計に腹が立つ。
「ふんにゃっ!」
私はふてくされテレビを見て、ニャームズはウィスキーをまったりと楽しみだした。
『……続いてのニュースです。帆立町でまた拳銃が見つかりました。通報者は『エイブス人』の男性で……警察は……』
「……エイブス人?」
ウィスキーを飲んでいたニャームズがニュースに視線を移した。
「どうした?」
「いや……」
ニャームズは小骨が喉にひっかっかったような顔をしている。
「……?」
「ニャトソン君。君さえよければ少し散歩に付き合って欲しいのだがね?」
ニャームズは肉きゅうをポムポムと叩いたりグニグニとこすりあわせる。
何かに興味を持ったときのニャームズのくせだ。
「今のニュースが気になるのか? 私は当然かまわないが……」
「まだなんとも説明できないよ。早速いこう。テレビはつけっぱなしでかまわないよ」
「ん? わかった」
私は走り出したニャームズの背中を追った。
☆
『続いてはスポーツです。
Hー1初代王者のイケ・グスタフ・オーブレイム選手が○○日未明行方不明になりました。イケ選手は連続KO負け記録を更新中でこのままでは二軍リーグに落ちてしまうことから、精神的に不安定だったとコーチの○○氏は語り……』