ニャームズの帰還
これは確かフィレオフィッシュタウンエンターティナーズの事件から数日後の物語である。
実は私とニャームズは一緒に帰国したわけではない。
ニャームズは一度イギリスに行って用事を済ませてから日本に帰ると言い出し、飛行機は一度イギリスに立ち寄りニャームズを降ろし、私は一匹で日本に帰ってきていた。
そしてこの日……ニャームズはとうとう日本に帰ってくるのである。
「いやはや……いよいよですなニャトソンさん。ニャームズ先生にお会いするのは本当に久しぶりだ……本当にニャームズ先生はこの公園に?」
動物版の警察……ドーサツのケーブは落ち着きなくソワソワしていた。
「えぇ。彼から連絡があり、今日午後2時、確かにここに来ると」
「うんうんうん……ニャトソンさん。それであの事ですが……本当にあなたの口から報告してくれるので?」
「わかっていますよ」
そうは言ったものの少し憂鬱だった。
「ニャームズ先生が留守の間に新しい《ニャー探偵》が来たなんて私はとても先生に言えません……」
「……」
私だって言いたくはない。
飼い猫でもニャームレスでもないニャームズは
(※ニャームズはフジンの所に戻るつもりはない)
実質無職のニャートということになる。
……いや、彼は世界を救うため働いているわけだが世間はどう思うか……
「あっ!? ニャトソンさん!!空を見てください!!」
「にゃ……ニャニィ!?」
空からパラシュートを使い、ゆっくり落ちてくるヘルメットとゴーグルをつけた猫……
「あれはまさか……ニャームズか!?」
ヒュルル〜……ストン……
ニャームズはそのまま公園の地面に着地し倒れ、ピクリとも動かない。
「ニャームズ……?」
「先生……?」
「……」
「ニャームズ!?」
これは緊急事態だと思った。
恐らくニャームズは頭をしたたかに打ったのであろう。
「ニャームズ……帰ってきてすぐにこれとは君らしくない!! しっかりしろ!!……おや?」
「……」
「ヌイグルミ……ですね?」
確かにヌイグルミだ。
実によく出来ている……
「ハッハッハッ!! 二匹ともすっかり騙されたね!?僕からのサプライズは気に入っていただけたかな? 僕がそんな目立つことするわけないだろう?」
「ニャームズ……君は……」
ニャームズは土管の上に足をくみ、優雅にパイプを吸っていた。
「ニャームズ……」
「先生……」
読者諸君。ニャームズにはこういう意地の悪い所があった。
「さて……ニャトソン君にケーブ。いい物件を見つけたんだ。引っ越しを手伝ってくれるね? 新しいニャー探偵? 興味深いじゃないか。だがその話は僕の部屋に荷物を運び、イギリス土産のスピリッツを開け、ディニャーを楽しんだあとにゆっくりと聞くとしよう」