ニャー探偵
「ニャームズ! これはなんだ!? ニャームズ!」
「にゃんにゃん♪にゃんちゃん♪にゃんにゃかにゃんにゃん……♪」
私はフジンに黒いベストを着せられ、頭にはシルクハットを乗せられた。
「正装だよニャトソン。私は仕事の時は服を身に付けるのだ。君もそうしたまえ」
「にゃにゃ! なんだコレは!? 首がくすぐったいぞ!?」
「出来上がりぃ♪」
フジンは私の首輪にテープで蝶ネクタイを貼り付けた。
「……屈辱!!」
「お似合いだぜニャトソン君。どこから見ても立派な猫紳士だ!!」
鹿撃ち帽にインバネスコートを纏ったニャームズはウインクをした。
「それでは行くとしようニャトソン君。ケーブが馬車……いや、犬車を外に待たしているはずだ」
「もうヤケクソだ!! どこにでも連れてってもらおうじゃないか! ただしニャームズ。君の仕事については説明をしてもらうぜ?」
「もちろんさニャトソン」
○
犬車というのは、ただケーブの背中に乗って移動することだった。
「ニャームズ! これは私にとって初めての経験だ! 犬の背にのって移動するとはね!!」
「そうかい。エキサイトしているね? ニャトソン。僕の仕事の説明はまた後ででいいかな?」
「……いや、今聞かしてくれ。君の仕事は?」
「僕の仕事はね……動物世界初の【ニャー探偵】さ」
「……ニャー探偵?」
「そうさ。動物の世界にもまもらなくてはいけない秩序とルールがある。そいつを破ろうとするものたちを捕まえ、処罰するのがケーブをはじめとする動物警察……【ドーサツ】さ。そしてドーサツが捜査に困ったときに相談するのが……【ニャー探偵】……つまり僕さ」
「ほほう……君は頼られているのだね? それなら君もドーサツになればいいじゃないか」
「ニャトソン君。言ったろう? 僕らに与えられた時間は驚くほど短いんだ。一つのことに縛られたくない。ニャー探偵は仕事。研究と観察が僕の生きがいなんだよ。それにドーサツは優秀だ。大抵の事件は彼らが解決するからね」
「あなたにそう言われると照れますな! ニャームズさん!」
「僕はお世辞を言いません。事実ですよ」
「またまた!!」
確かにニャームズはお世辞を言わない。
だからこそ彼の称賛の言葉は全て心からのもので、相手の心にストレートに突き刺さるのだ。
「それでケーブ。我々はどこに向かっているのです?」
「あっ、これは失礼。隣町です。少し遠いですよ」
「隣町で何が?」
「犬が一匹死にました。それが大変グロテスクな死に方で……ニャトソンさん。平気ですか? そういうの?」
「……善処します」
正直自信はない。
「ニャトソン君。それでいいのさ。死骸なんて見るのに馴れるもんじゃない」
「そうです」
なんだか慰められているようでいたたまれなかった。