ポー
(やぁ。ニャトソン君。リゾートは楽しんでいるかい?)
「わっ!!」
突然スニャホからニャームズの声が聴こえてきた。
(驚いたかい?)
「そ……それはそうだニャームズ。いや……スニャホとはすごいな。ニャームズ。今日こそは色々と聞かせてもらうぞ。どこかで再会といこうじゃないか。君とゆっくり話したい」
聞きたいことがたくさんあるのだ。
(うん。それはそうだろう。だがねニャトソン。スニャホはまだ開発段階だ。長い時間は話せない。僕も今、忙しいんだ)
「忙しい?」
(そうだ。ニャリウッドは『映画の町』でもあってね。僕は以前【ネコリックス】という映画に出たことがあってね……顔が割れているし、若手俳優の育成に忙しいんだ。急遽【舞台】が決まってね……)
「あのなぁニャームズ……ネコリックスって……」
ふざけるのもいい加減にしてほしいものである。
ニャームズはこちら側の嘘にはやたら厳しいくせに自分はすぐに嘘をついて話をあやふやにする猫だった。
(今日君にニャリウッドに来てもらったのは……会わせたい方がいるんだ。君はきっと喜ぶぜ)
「会わせたい……? 誰だそれは……?」
(彼は忙しい人だ……きっと……君の……)
「ニャームズ?」
切れた。
ニャンだというのだ?
「ニャームズのやつ……!?まさか!? あの人は……あのお方は……」
私の視界にチラリと映ったのは……【あのお方】……
「ニャームズサマートオハナシデキマシター? コレカラアナタタチニハワレワレノシジニシタガッテコウドウヲ……ジーザス!!」
スミスは叫んだ。
無理もない。
すでに私はそこにいなかったのだ。
○
「あのお方がこんなところにいるわけもないのに……私は何を……」
私はビーチから道路に飛び出し、人混みを掻き分け【ニャモさんらしき人物】を追いかけ、道に迷ってしまった。
「ニャモさん……会いたい……会いたいよ……おっと!! 大丈夫ですか!?」
「……」
フラフラと歩く猫が壁に寄りかかりながら倒れたので私は慌てて介抱した。
「へへへ……こりゃあすいやせん。年はとりたくないもんですな……暑さでついグラッと……」
かなりの老猫のようだった。
「辛そうですね。よろしければご自宅までお送りしますよ」
「これはこれは、アナタは猫紳士ですな。助かります」
「いえいえ……それでご自宅は?」
「あのテントです」
「テント? あぁ……」
肉きゅうが指す先には青いテントがあった。
「私はサーカスの猫なんです。おっと名乗っておりませんでしたな……私は【ポー】と言います」
「私はニャトソンです。それではまいりましょう。私の猫背にお乗りください」
「えぇ……えぇ……しかしアナタは本当に猫紳士だ。昔私の弟子に【ニャンダイチ】というオスがいましてね。彼はかなりの猫紳士で……彼のブーメニャンフックは大変強く……」
「ほほぅ」
私はポーの話を適当に聞き流しながら彼をテントまで送った。