猫の脳みそ2
(ニャトソン君。君は海外は初めてかい? 猫生は何事も経験さ。フジンと一緒に『ニャリウッド』の『フィレオフィッシュタウン』に来ないかい? 青い空……白い雲……輝く砂浜……きっといい思い出になるぜ)
(ニャームズ!! 君はいったいなぜ消えた?今日こそ訊かせて……切れた)
あれから何度かニャームズから電話がかかってきたがニャームズは私の質問をのらり、くニャりかわし、言いたいことだけ伝えてすぐに電話を切った……一度で全て伝えればよいものを……ずいぶん回りくどいことをするオスである。
「……『ニャリウッド』の『フィレオフィッシュタウン』か……」
私はボンニャリとテレビを見ていた。
『いいニャモ』の後続番組『ニャイキング』もすぐに終わり、この時間は『ブラウン・サークル』というドラマを見ていた。
「やはりニャモさんのいないテレビなんてテレビではない……楽しくなければテレビじゃないニャン!! 『笑っていいニャモ』を!!『ニャモさんのニャングルTV』を『ニャモリクラブ』を返せ!!」
そう叫びつつも私はテレビを見ている……ニャームズにそう言いつけられたからだ。
(いいかい? ニャトソン。人間語もニャー語もたいして変わらない。覚えられそうなものは全て覚えたまえ。言ったろう? 推理とは『知ることと観察すること』だと……)
またまた悲しいかな猫の脳みそ……
その時の私は『言った? そんなこと? 言ったかニャ?……あっ!?確かに言った!!』
……と、思い出すのに数秒かかった。
「しかし……本当に聴くだけで覚えられるのだろうか……?」
私はただテレビの音声を聞いて言葉を覚える
『スピード・ニャーニング』にトライしていた。
(きっと覚えられるさニャトソン。あの『石川ニャー君』だってスピード・ニャーニングで人間語を覚えたんだぜ?)
ニャームズはそう言った。
その時は『なるほどそれならば』と思ったがしかし腑に落ちないことがある。
○
「石川ニャー君って誰だ?むっ?」
黒とも肌色ともいえない……茶色っぽい肌の俳優がなにやらセリフを叫んでいる……
「覚えておくか……」
私は彼のセリフを頭に叩き込んだ。
なぜだか忘れない気がした。
……どうしてだ?
○
「オワーン!!」
「はいはいご飯ねぇ……今、ご飯って言った?」
フジンは驚いた顔を見せた。
そんなのはいいから食事がほしい。
私は空腹なのだ。
「オワーン!! フイーン!!ウナナ……オワーン!!」
「なんか『ゴハン!! フジン!! はやく!! ゴハン!!』って言った気がする!!ニャーちゃん言葉を喋れるの!?」
……私の苛立ちは頂点に達した。
『ワエワエハ!! ワエワエハ!! エウアナーナーナ……ロイツマー!! ナァー……オーン!!』
「気のせいか……」
フジンはなぜかガッカリし、マグロ味のカリカリを私のディッシュに盛り、皿洗いを開始した。
チャッ!!チャッ!!チャッ!!
夢中になってカリカリを食べた……うん……うまい!!
「……マウロウアイウアイ……マウロウアイウアイ……」
「……今、『マグロウマイウマイ』って言った!?」
私はフジンを無視して食事を続けた。
……ニャンだと言うのだ?