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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
至宝のパピルス
33/203

人間の可愛さ

「あれ?」


 部屋の外に出ると違和感を感じた。

 確かにここは5ー5号室と書いてあるがここは……


「ニャームズ。ここは【階段を挟んだ向こう側の【5ー6号】ではないのか?」


「いいや。ここが真の【5ー5号室】だ」


 いったいどういうことだろうか?


「説明するよ。さぁこっちへ」


 私はニャームズについていった。






「5ー3……ということはここが本物の5ー5だな」

 5ー5号もまた、立ち入り禁止になっていた。


「ニャトソン。固定概念を捨てるんだ。【1ー3号の隣は1ー5号だった。だから5ー3号の隣は5ー5号。その向こうは5ー6号】というね」


 私にはさっぱりわからない。ギブニャップだ。


「僕が古風だと言いたかったのは……人間は【4】を【死】と捉え忌み嫌うということだ。シジミハイツには【4号室】はないんだよ」


「ふぅん……」


 なんと人間とは可愛いしいところがある。

 それでは【「シ」ウマイ】も食べられないし、【ウッシッ「シ」】と笑うこともできないではないか。


「だから……4号室がなくて1ー3号の隣のここが……1ー5なのだろう?」


「違う。1ー5号は階段を挟んだ向こう側の部屋だ。これはね? ニャトソン。エレベーターという機械だ」


「えれべぇたぁ?」


「うむ。この1ー5というのは一階から五階へゆくエレベーターということだろう。ニャトソン。君が先ほど失神した場所もエレベーターだよ。分かりやすくいえば上下に移動する部屋だ。猫とピーチュンはこれに乗って五階まで運ばれたのだろう。大地震はエレベーターの揺れ……おかしいと思ったんだ。だってそうだろ? 鰹が丘にはこの数週間地震なんてなかったんだから。開けっ放しで大地震と間違うほどの揺れの危険なエレベーター……安全検査に引っ掛からないわけがない。それで僕は今は1ー5号……エレベーターは立ち入り禁止になっていると推理したのさ」


「なるほど……エレベーターか……移動のためなら窓がないのもうなずけるな」


 人間とはどこまでも楽をしたがる生き物である。

 だから自分で獲物も獲れない。


「混雑を避けるため特定の階にとまるエレベーターもある。1〜3というエレベーターもあったぜ。乗るかい?」


「いにゃ結構」


 怖い。


「観察と知ることだニャトソン。知っていたから解くことが出来たのさ」


「むっ……私だって知っていたら解けていたよ」


「ノーノー。君は知ることを怠けた。なぜなら私たちのすんでいるアパートにもエレベーターはある」


「えっ? そうなのか?」


「帰り道を少し変えれば君はそれに気づくことが出来ただろう。僕は何度でも君にいうぜ? 推理とは観察すること……そして」


 私はニャームズに言われたあの言葉を思い出した。






「日常を少し変えることが実は大いなる冒険になる……てね」


「……にゃあ」


 私の完敗であった。










「あっ!?」


 私たちは壁に身を隠し5ー5号……本の部屋を監視していると部屋の主が帰ってきた。


「アイツは!? 私が注射を射たれたときにいた……獣医か!? そうか!シジミ大学敷地内の獣医が彼なのだな!? だから治療ができたのか……」


 よれよれの服にボロボロの靴を履いていたが私の目はごまかせない。


「まぁ……半分正解かな?」


「ニャームズ……みっともないぜ?」


 先に正解を言われ拗ねているのだろう。


「こんなに早く君に言い返せるとは……いいかい? 推理とは観察することと知ること……」


「学生だ」


「はっ?」


「獣医学部のね。彼はシジミ大学の学生さ。シジミ大学に獣医学部があることを僕は知っていた。君の注射の時も勉強のためその場にいたのだろう。それに獣医がわざわざ自分の部屋で【動物治療一覧】なんて本を借りて治療するかい? ここは学生のすむ場所なのだろう。五階からエレベーターをよんだ彼がエレベーターのなかにいた動物を部屋に運び助けた……これが真相さ」


「あぁ……」


 またしても【言われてみれば】である。


「そういえば本と鍋はフジンのものだと言ったな?」


「君が放心してるときにね。つまり……治療をした二人の一人はフジンだろう。料理や本をもって外出して忙しかったのは……そして最近落ち着いたのは治療をしていたから。そしてエレベーターが使用禁止になったからだろう。本を貸し、料理を作り彼をサポートしたのさ」


「お……おぉ!!」


 次々と謎が解けていく快感に私は震えた。


「しかしフジンと彼はどこで出会って……」


「やはり君は知ることを怠けているよ。フジンもまたシジミ大学の学生さ」


 初耳である。


「そうだったのか!? しかしフジンもつれないな。一度ぐらい大学につれていってくれてもいいものを……」


「君が獣医嫌いなのを知っているからさ。獣医学部の学生がすんでいる場所に来ただけでビクビクする君をつれていくなんてとてもとても……」


「……」


 言葉がニャイ。


「少しは人間の良さがわかったかい? 彼とフジン……あの二人は貧しくとも自分の生活のことよりも動物を優先する人間だぜ」


「ふん……ま……少しは見直したよ」


 嘘ではなかった。


「あれ? ニャームズ。もう一冊の本は意中の女性の口説き方……だったよな?あれはなんだ? 治療とは関係ないよな?」


「あれは彼が購入したものだろう」


「君らしくもない。謎には関係もない本じゃないか」


「事件には関係ない。だが謎ではあるね」


「……まったくわからない。どういうことだ?」


「つまり……」


 ニャームズはパイプをくわえた。






……

「彼の恋の行方は誰にもわからないということさ」


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