本の部屋
「さぁピチュールさん」
「はい。ニャームズさん。あなたにすべてお話しします」
ニャームズがネコッと笑うとピチュール氏は落ち着いたのかくちばしを開き喋りだした。
ニャームズの笑顔は動物を落ち着かせ、信頼させる力があった。
私のニャンマリとは大変な違いである。
「私のヒナの【ピーチュン】は病気でいつも震えていました。それで私は巣に拾ってきた紙を持ち帰り、ピーチュンに被せていたのですが……」
「パピルスですな?」
「パピルス?」
「えぇ……パピルスとはですね……」
私はニャームズに教わった知識をドニャ顔で語りだした。
「……なるほど。そのパピルスを被せていたのですが症状はよくならず……そんなときドーサツの方から【奇跡の1ー5号室】のお話を聞きました」
「ほうほう」
「このまま放っておいたらピーチュンは死ぬ……私は一か八かドーサツの皆さんの力を借りて1ー5号室に巣ごと運んでいただきました」
「大胆なことを……それでどうなりました?」
「ニャームズさん。それが私がちょっと目をはなした隙に1ー5号室の扉は固く閉ざされ開かなくなってしまいました」
「あぁそれは大変だ……」
私は取り残されたヒナを思い胸が痛んだ。
「もちろん私は急いで五階まで飛びました。そうしたら……5ー5号室には誰もいませんでした」
「えぇ!?」
「はぁ……」
ニャームズは軽く相づちをうち、私はおおいに驚いた。
「私のなかには絶望と希望がありました。もうピーチュンは帰ってこないのでは? いや、もしかしたら本当に本の部屋で治療をうけているのではと……」
「お察しします。それでどうなりました?」
「それがニャームズさん!!驚かずに聞いてください!ピーチュンは病気を治し帰ってきました!! ピーチュンもまた地震のあと【本の部屋】で治療をうけたというのです!!」
「……」
私は驚きで口を大きく開けたがニャームズはまったく驚いている風には見えなかった。
「あの……本当に驚かれないのですね?」
「えぇ」
絶対に驚くという自信があったのだろう。ピチュールは少し面白くなさそうだった。
「期待されていたのなら失礼。しかし僕には事件の真相の7割から8割はもうわかってしまっているのです」
「「なんだですてっと!?」」
私とケーブ、ピチュールの驚きの声が重なった。
「ニャームズ!! いい加減なことをいうな!! いくら君でもこんなホニャー話を聞いただけで理解できるわけないだろう!!」
真面目な話を冗談で茶化すとはひどいやつだと思った。
「ニャトソン。言っただろう? 推理とは観察と知ることだと……いい加減なことは言ってないよ。……なら証拠を見せようか? ピチュールさん」
「はい?」
「今は1ー5号室も5ー5号室もテープが巻かれたり張り紙がはってあって立ち入り禁止になってるんじゃありませんか?」
ピチュールは表情を失った。
「そ……そうです!! なぜそれが……?」
「まだそれを言う段階ではありません。さてニャトソン君」
「な……なんだ?」
ニャームズは奥の部屋を肉きゅうでさした。
「正装に着替えたまえ。ニャー探偵の助手としてのね」
「……」
タキシードにシルクハットに蝶ネクタイ……確かそれが私の正装だったはずだ。
私は正直憂鬱だったがニャームズはそこは譲らぬことを知っていたので私はしぶしぶ従った。
「いいかい? おしっこは済ませておくんだぜ?」