シジミハイツ
「ニャームズさん!ご相談したいことが!!」
「ニャッ!?」
何度経験してもなれないものである。
猫用玄関から顔を出すミニチュアシュナウザーの【ケーブ】。
彼は動物版の警察……【ドーサツ】の優秀なメンバーである。
「やぁニャトソンさん。驚かしてしまったようで……」
「……いえいえ」
観察の特訓をしていた私は正直心臓がキャッとなって危なく猫むところだった。
「む? ケーブかな? どうされました?」
フジンがいないのでニャームズは気を抜いていたのかパイプを肉きゅうに持ち、二足歩行で歩きまわっていた。
「おぉ!!さすが本家本元ウォーク・ユーズィングダブルレッグスだ」
要するに二足歩行という意味である。
ニャームズはドーサツのメンバー何匹かにこのユーズィングダブル……二足歩行を伝授したらしい。
「君がそんなに慌てるとは珍しいな。なにか事件でも?」
「いやいやニャームズさん。事件というか……事件なのでしょうか? しかし誰々が殺されたとかそういった類いの話ではないのです。むしろ助かった。摩訶不思議です。実にあなた好みの話です」
「ほほぅそれは嬉しいですね」
ケーブは優秀な男なのだろうが多少回りくどいところがあった。
「驚きというか感動的というかやはり驚きですな……まったく不思議でした。これは先生。あなた以外にはわからんだろうと我々ドーサツ一同一致団結し私が代表して腰をあげ……」
「えぇ。あなたは正しい判断をしました」
「……」
ニャームズは実に聞き上手な猫である。
結局ケーブは【自分達ががどれだけ驚いたか?】という話を5分以上話し、やっと本題に入った。
「というわけでシジミハイツの奇跡のお話なのですが……」
ケーブの語るシジミハイツの物語は私の猫背を寒くさせるのに充分な内容であった。