英語とニャー語
「どうやらマローニ氏はスポーツ観戦をするようだな。なるほどそういうことか……つまり? だがそうすると彼らは……ほほぅ」
モリ・ニャーティー先生は5か国語を聞き取ることが出来た。それに一を聞き百を知る猫なので僕たちにはわからない一人言をブツブツとよく言った。
当時僕は【ニャー語】※(第一猫言語)と簡単な英語しか聞き取ることが出来なかったので先生に対するリスペクトの気持ちは膨れ上がるばかりだった。
「このカンパチ島は文武両道な島だ。私はとある研究者を訪れる予定でね。ニャームズ。ニャンダイチ。君たちはそうだな……二匹で研究所の見学をしなさい。そして夜9時までに南にある【バラバリ】という施設にきたまえ。それではここで一旦解散だ」
「ニャア」
「ニャン」
先生はシタシタと肉きゅうを鳴らし島の中心に向かって歩き始めた。
「……さてニャームズ君。しばらくは行動を共にするとしよう」
「嫌で仕方ないが先生の言いつけは絶対だからな」
「フフフ……君は正直者ですな。どらどら……」
ニャンダイチは毛皮から玉ねぎを取りだし口にくわえた。
「おいっ!! ニャンダイチ君! 非喫玉ねぎ猫の前で玉ねぎをくわえるのはマニャー違反だぜ!? 副玉ねぎ煙の影響を考えろ!!」
「あ〜〜……失礼。どうにも好きでね」
ニャトソン君が聞いたら信じぬだろうが、この当時の僕は玉ねぎを好まなかった。
いや。むしろ嫌っていた。
「玉ねぎばかりくわえているといつかコロッと死ぬぜ?」
ニャンダイチ君はいつものポーカーフェイスでさらりと言った。
「そりゃいいね。一度死んでみたかったんだ。経験もないしね。ニャームズ君。君は死んだ経験ありますか?
なにっ!? 君もない? そりゃそうだ。そりゃそうですよニャームズ君! にゃはっ! ハッハッハ!!」
「……先にいくぜ」
「まぁまぁまぁ……一緒に行動しましょう。先生の言いつけは絶対……だろ?」
「うるニャイ……」
「何か言ったかい? ニャームズ君? もう一度言ってくれ。……僕の冥土の土産に。ニャッハッハッ!!」
膨大な知識量と類いまれなるニャー術のセンス。人を食うような言い回し……とにかく……とにかく僕はこの男が嫌いだった。
……? 気づいたかい? そうさ。嫌いというより……