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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
白魚と白子のダンス。
201/203

にゃんでもないようなことが。

 『トラブリュウ』のメンバーたちとトラブリュウのリーダー『ジョージ』。

 例の病院まで彼らは付いてきてくれると言ってくれた。

 これは私たちにとって喜ばしいことであった。

 ジョージは歩きながら語った。

「ええ。気を失ったお嬢さんをシラウオ町まで運んだのは俺ですよ」

 その語り口はまるでなんでもないような事が幸せだったと思っているようなものだった。

「まぁ! あなたが!」

 カロリーヌは例の病院を飛び出て気絶をし、起きた時にはシラウオ町の入り口にいたと語った。

 おかしな話だとは思っていたが、やはり彼女を運んだねこがいたということか。

「それなのに私ったらなんのお礼もせずに……名乗り出て下さったらよかったのに……」

 ここでジョージは地面を見つめた。

「まぁ……当たり前の事をしただけですしね」

「そんなことはありません」

 話にくそうにしているジョージに代わるようにニャームズが語りだした。

「シラウオ町の住民はシラコ町に住む彼らを恐れていますからね。あなたのお母様のように」

「あっ……」

 次に地面を見つめたのはカロリーヌだった。

 私は彼女の母、ジャスミンの事を思い出す。

 典型的なシラガネーゼ。

 シラウオ町に住む自分に誇りを持ち、シラコ町に住む彼らを蔑んでいた。

「だからシラウオ町の中まであなたを運べなかったのでしょう」

「……ごめんなさい」

「いやぁ。お嬢さんが謝ることじゃないっすよ!」

 フォローをいれるジョージの声はやはり私に似ていた。 

 初対面なのに私の声に聞き覚えがあるとカロリーヌが言ったのはこういう事だったのか。

「いい機会です。彼らを知ってください。彼らはシラコ町トラブリュウ。町の平和を護る自警団です」

「まぁ! 素敵!」

 カロリーヌは目を輝かせ、トラブリュウのメンバー達は恥ずかしそうにモジモジしだした。

 中には尻尾をピンと立ててブロック壁で爪を研いでいる者もいる。

「先ほどの活躍は説明するまでもありません。実に立派だ! 活動はねこの為だけでなく人間の力にもなっています『ねこうんち問題』はご存知ですね?」

 ねこたちが好きなときに好きな場所にうんちをするのでねこ嫌いの人間たちが怒り、ねこ好きの肩身が狭くなるという問題である。

 我らが飼い主、フジンもこの問題には頭を抱えている。

「彼らはね、公衆トイレの普及と使用率の向上に貢献しています」

 トラブリュウは枯れ草などを集め、人の目につきにくい場所にそれを置き、『ね、公衆トイレ』としている。

 トイレの片付けも当然彼らがやっているし、彼らの活動に賛同するねこたちも増え、『ねこうんち問題』の解決に大きく貢献しているとニャームズは語った。  

「本当に素敵だと思います。あなたたちの活動はもっと知られるべきです! それこそシラウオ町のみんなにも……」

「……いやぁ。いやぁ!」

 恥ずかしくて仕方がないのかジョージはずっと顔を洗っていた。

 ペロペロペロペロペロペロしていた。

 そんなにペロペロすることないだろうというほどに。

「その為には架け橋が必要でしょうね。さぁ! ここですね?」

「あっ……はい。そうです」

 ここがカロリーヌが恐ろしい物を見たという病院か。

 確かに『病院』と思われる文字も看板にみられるが、なんとなく幼稚さを私は感じた。

 入り口の壁に様々な動物たちの笑顔のイラストがペイントされているのだ。

 こんな楽しそうに偽っても病院は病院だ。

 私は騙されないぞ。

「しかしちょっと薄暗くないかね?」

 陽当たりが悪そうな病院はなんとなく不気味だ。

 壁に描かれた動物たちの笑顔もどことなくぎこちなく感じる。

「お休みかな? 忍び込むにはちょうどいいさ。元々真正面から飛び込むつもりはなかったからね。さぁカロリーヌさん。あなたは家にお帰りください。ここは私とニャトソンとケーブに任せて。そうだなぁ……ジョージ君。君を彼女を護るナイトに任命しよう」

「えっ? はい……」

「俺っすか? へぇ。いいですけど……」

 嗚呼。やはり私は行かなくてはならないのか。

 あわよくば彼女を送っていと言われたかった。

 ニャームズが私のお腹を肉きゅうでポヨンと小突き、猫耳に小声で語りかけた。

「きっと我々はお邪魔だ」 

 先ほどまでの怯えた態度はどこへやら。

 カロリーヌはジョージと仲良さげだ。

 ジョージはジョージでデレデレではないか。

「なんだかおもしろくないね」

「妬くなよ」

 私はニャームズに首ネッコを掴まれ、病院の裏口へ運ばれた。



 つづく 

 

     

 

  

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