鰹が丘221B
「うん? 君はニャーランド誌の記者かい? 僕は着替えに段取りに忙しいのだがね……まったくニャトソン君のおかげで僕もずいぶん有名になったもんだぜ」
私はニャーロック・ニャームズ。今日は大事な用があって日本に帰ってきているのだが……そのタイミングを見計らってかニャーランド誌の記者に捕まってしまった。
「取材? 君の名は? 【モーガン・ホッチナー】?よろしく。それで? ははぁ……僕に物語を書いてほしい? ニャトソン君ではなく僕が文章を? 読者の要望があった? なるほど。ファンサービスは大切だと思うがね……」
私はニャトソン君ほどサービス精神やエンターテイメント性に溢れた文章を書くことは出来ない。
「困ったな……何? 話を聞かせてもらえばそちらで文章にする? ふむ……それならばいいだろう。じゃあ何について話そうか?」
モーガンはこう言った。
「ニャトソン君と出会う前の冒険かい……? そりゃあたくさんあるが……そうだ! あの事件はインパクトがあって読者も喜んでくれるのではないかな? 【カンパチ島】での殺人事件の話だ。平等が差別を生み、差別が殺意を生んだ……実に難解でグロテスクな事件だった」
記者はテープレコーニャーの録音ボタンを押した。
「さて……どこから話そうか……やはり島に上陸する所からだろうね」
私は久しぶりにお気に入りの安楽椅子の上で丸くなった。




