ヘックニャン!
「君は見た目にこだわりすぎる」
「そんなことはないさ」
「あのときだって……」
ニャームズと話しているうちに記憶がよみがえってきた。
そうか……たしかにあのときは……でもまた昔の話をなぁ。
「……あっ!」
いいじゃないか! いいじゃないか!
あのときの話はネタになるぞ。
短編にはピッタリだ。
所々記憶は曖昧だが、思い出しながら書けば……まー大丈夫だろう。
おお……作家生活ニャン年目か忘れたが、はじめて私も「ストック」ができそうだ!
うん……書き終わるまで二週間かかるかかからないか……。
ニャーランドは月刊誌だから……
ああ……ストックひとつあるだけで1ヶ月休める……素晴らしすぎ! 私はいてもたってもいられない。
そしてニャームズがそんな私の変化に気づかないわけがない。
「おいニャトソン。まさかあの事件のことを書くつもりじゃなかろうね?」
「書かない」
「書くのか……」
なぜこんな真剣な瞳で訴えてるのに私の嘘は簡単にバレてしまうのだろう?
「まっ……エンタメ的には問題ないだろうね。誇張表現はなしにしてくれたまえよ」
「した覚えはないのだがなぁ……」
ニャームズからすると私の小説は誇張表現の連発らしい。
確かに執筆中にテンションが上がると擬音などは増えるが……リアリティーの範囲内だと思うのだがなぁ……
「……というわけだ。私は執筆にはいる。店のものは好きに飲んで食べてしてくれ」
ニャームズはグラスを持った肉きゅうを軽く上げた。
了解ということか。
ちょっとした仕草がいちいちニャンディーなやつだ。
私はレストランを裏口から出て、渡り廊下を走り、自宅の仕事部屋に向かった。
椅子に座りニャーボードに肉きゅうを置いて……はっ!?
「仕事したくない!」
手遅れだったか……私は「仕事しよう」と思ったらすぐ始めないといけないのだ。
タイミングを逃すと「明日でいいや」「……来週でいいや」モードが発動する。
ダメだ! 私はストックをつくるのだ! そして1ヶ月休んでオンラインRPGをやるのだ!
卓上のナタリーの写真を見る……《仕事しろ》と言ってる気がする……ナタリー。
死してなお君は私を……いいお葬式だしたじゃないか。
一通り写真のなかのナタリーといちゃついてニャン呼吸。
こういう時は案外書き出せば無我の猫地。
タイトルは《飛べない鳥の囀り》
私はニャちゃんねるとニャ―チューブをみたいのをキャッとこらえて最初の一文を綴りだした。
「えーと……あれはニャームズが生き返り(?)しばらくたったある日のことだった……と」
……
あれはニャームズが生き返り(?)しばらくたったある日のことだった。
「これじゃまるでただのアルコール水だ。穀物の香りがまるでない!」
ニャームズはアルコール度数50の魚ッカ(ウォッカ)を飲みながらご機嫌ななめだった。
「どうした?」
「今年の魚ッカの出来が悪い。輸入会社をかえたからかな?ニャトソン出かける準備をしたまえ」
「いいけど?」
その時私は三角巾にエプロン姿で箒をかけていた。
すっかり屋敷の掃除が癖になっている。
近くのバーにいくのだろうと思いながら丁寧にエプロンと三角巾を畳んで私はタキシードに着替えた。
「よし。いこう」
ニャームズはステッキで床を強くついた。
そこは掃除したぁ!
それから一時間後。
「さささささ……さむい!」
「当たり前だろ? ロシアなんだから」
私たちはニャンボジェットでロシアにいた。
まさか思いつきで本場ロシアまで来るとは!
しかもニャームズの奴はいつの間にかフカフカのコートを着ている。
ずるい!
「ん? このコートかい? 君の分もあるけど着るか?」
「当たり前だ!」
私はニャームズの肉きゅうからコートを奪った。
いじわるめ!
《何度も》言うが女性ニャームズファンの諸君! こいつはこういうオスだ! 目を覚ましてくれ!
「ホテルへ向かおう。知ってるかい? 北海道やロシアの室内は暖房でガンガンだから半袖でいられるんだぜ?」
ああそうかい。
ホラはいいから速くいこうぜ!
ヘックニャン!
つづく。
なろう生活で一番しんどいときの更新。自信に繋がりますように。