ジローニャモもビックリ。
「あっ! やっべ」
《ルパンとニャームズの帰還》事件の原稿をフォックス(キツネの郵便屋)で送ったところで気がついた。
……そういえばニャームズが生きていたことは秘密だった。
ネタが無さすぎて書いちゃった。
ま~……いいか。
時効時効。
これでしばらくは仕事しなくていい。
ゲームやろ、ゲーム。
格闘ゲームのミッケンかな?
絶滅寸前のトキを護るトキめきメモリアル?
最近でたアプリ、マギア・ネコードも悪くない。
ゲームのお供にはネコ・コーラとホタテチップが必要だな!
私はソファーにダイブした。
……
「何事だ!」
私は久しぶりにレストランの厨房までやってきた。
「あっ! オーナー! あれ!」
「……なんだ? 今日なにかイベントあったけ?」
窓から外を覗くと最後尾がみえないぐらい客が並んでいる。
おかしい! ビンゴ大会は今日じゃないはずだ。
というかビンゴ大会にこんな客はこない。
「こりゃ何事だい?」
「何事だい? じゃないですよ! ひどいじゃないですか! 僕たちにも内緒で! これ!」
んー? これは復刻ニャーランド誌じゃないか。
「……これが?」
「だから! ニャームズさんって生きてるんですか!?」
ああ~……そういうこと? ああ~。
「生きてるよ」
「みんなニャームズ先生目当てで来てるんですよ!」
「……そうなの?」
「どうするんですかぁ!?」
みんな変わってるなぁ。
ニャームズは今、名を変え、姿を変え、世界中をまわっているからここに来ても仕方ないんだけどなぁ。
それに彼は今は不老ではない。
ちゃんと年相応の私と同じオールドキャットだというのに。
「まぁ。仕方がないよ。むしろラッキーだと思って頑張ろう。お客さんには僕から説明しておくから」
「……オーナー」
大忙しの1日となった。
ニャームズは生きているが、今はどこにいるかわからない。
もしかしたらあなたの隣にいるかたがニャームズかもしれませんねーとか適当なことを言って誤魔化した。
久しぶりに私も厨房で肉きゅうをふるった。
中国式ピラフ……つまりニャーハンを作りに作った。
これは食にあまりこだわりのないニャームズも気に入っていた私得意の一品だったので、ニャームズファンは私のニャーハンを食べながらニャームズを想った。
私のニャーハンのコツはご飯を通常の二倍使うことだ。
調理中半分は床に落ちるからな。
※スタッフがあとで美味しくいただきました。
「……疲れた」
深夜2時。
やっと落ち着いたな。
腰が痛い痛い。
さぁて……今日は頑張ったからアプリに課金しよう。
ガチャが引きたくて仕方がない。
おお! 今日はレア星6猫が当たるキャットフェスの日じゃないか! エプロンを外してっと……
「……あああああの」
「……だれだね!?」
ランニングシャツに半ズボンに麦わら帽子。
裸の大猫みたいな奴が立っていた。
「……こここここんばんわ」
「どうやって入ってきた?」
こわいっ!
スタッフはみんな帰っちゃったし……。
警備のアルドックはなにをしているんだ? 来月からネコムに代えるぞ!
「……何かごようで?」
「……説教しにね」
「……なんだ君か」
変装をとくとニャームズだった。
相変わらず見事な変装だ。
「全く……僕が生きていることを書くとはね」
「酒でも出そう」
口調ほど怒ってはいない。
長い付き合いだ。
ただ遊びに来たと言うのが恥ずかしいのだろう。
説教は口実だな。
その証拠に酒を出すとご機嫌で飲みだし、玉ねぎシガーを吹かした。
ゲームは中止。
私も飲もう。
薄暗い厨房で飲み明かすのも悪くない。
「……君は変わらないなぁ」
「そんなことないだろう?」
「いやいやいや」
白髪混じりだが、相変わらずシュッとしているし、しっかりトリミングもされ、眼差しは鋭い。
コートもステッキも歳をとったことで逆にバッチリ決まっていると言うか……。
ちょいワルキャットって感じだな。
あと猫背でもないし、手足は長いし……それは昔からか。
「君は見た目にこだりすぎるね」
「そうでもないさ」
「いや。そうでもある。あの時も君は……」
この夜は昔話に花を咲かせた。
つづく。




