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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
ルパンとニャームズの帰還。
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鈴木親子とルパン

予備知識?……2017年秋、岡山県の動物公園で脱走し行方が分からなくなっていたゾウガメが、ある親子により、近くの山中で発見された。

ゾウガメは園外に出る姿が防犯カメラに写っていた。


まだ記憶に新しいと思う。

タマがこの町の住猫になり、しばらくが経った日のことだった。


「まぁ。おかげさまで記憶はともかく、生活はなんとかなっておりますよ」


「それはなによりだ」


私とタマはすっかり茶飲み友達。


彼は毎日私の(正確にはニャームズの)うちに遊びに来た。


タマはアルコールはまったく飲めないし、アニマル派遣の仕事でいつも疲れていたので、酒は一切飲まなかったが、ニャームズとの会話とはまた違う楽しさがあった。


「しかし。入居してすぐに人間がやってくるとは運がない」


「これも運命ですじゃて」


タマに紹介したあの家は数日住んだらすぐに人間たちがやってきて、リフォームを始め、今ではなにやら幸薄そうな《鈴木》という父と息子二人が暮らしている。


「新しい4猫半の部屋も十分贅沢です」


「それならよいのですが……」


《貝柱山の動物園から逃げ出したゾウガメのルパンは未だに見つからず……》




テレビから流れるニュースはこれ一色だ。


いくらユルい動物園といえ、ゾウガメに逃げられるとは困ったものだ。


警察も捜索しているし、ドーサツも捜索しているがみつからない。


しかし山に逃げたカメ一匹見つけられないとは不思議なこともあるものだ……。


「おや……誰かきましたな?」


「ニャンダイチですよ」


ニャンダイチが無言でスタスタと歩いてきて、空いている椅子に座った。


「やあ。ニャンダイチ」


「こんにちは。ニャンダイチさん」


タマはすっかりニャンダイチとも顔見知りである。


「こんにちは。ニャトソンさん。タマさん。いや……まいった」


最近毎日愚痴りにくる。


彼も二代目ニャームズ候補の一匹としてゾウガメ脱走という大きな事件解決に鼻息荒かったのだが、最近はどうにも苛立っている。


「見つからない……隅々までさがしているのに、なぜだろう?」


「気を落とすなよ」


「ドーサツのやつら。どうにもトロいんだよなぁ……」


愚痴が始まった。


私は彼の前に甘い紅茶とケーキを置いた。


これで少しは落ち着いてくれるといいが。


「なんで老犬と若い犬をまぜるかなぁ? 捜査の効率が悪い。これじゃあ私がいくらいい案を出してもうまくいかないじゃないか……グズめ」


若いなぁ。


そんなことを思いながら私とタマは延々と彼の愚痴をきいた。


残念ながらケーキと紅茶には肉きゅうをつけてくれなかった。


「誰か人間が誘拐したんだ。そうに違いない。もうやめちゃおうか……あっ? こんな時間。そろそろ行きます。ニャトソンさんありが……」


「まぁ。すこーし待ちなさい」


「タマさん?」


ニャンダイチが帰ろうとした瞬間、タマが彼を引き止めた。


ピリッとする迫力ある声だ。


「な……なんですか?」


「おじさんの話を少し聞いてほしいのですがなぁ……」


「……話って?」


「少しカーっとなりすぎじゃありませんか? 山のなかにある動物園からゾウガメを人間が連れ去った? それは難しいんじゃありませんか?一人二人じゃ無理だ。山道をゾウガメを皆で運んで人の目につくふもとから車で運んでも目撃者がいないってのは変じゃ。それに確か監視カメラにゾウガメが脱走する映像が残っていたんでしょう?」


「ええ……まぁ」


「あと……その態度はよろしくない。ドーサツの配置なんかより、影で部下の悪口を言う上司が指揮を執る方が捜査に支障をきたす……違いますかな?」


「……全くその通りです」 


驚いた。


プライド高く、ニャームズにも噛みついていたニャンダイチが大人しくタマの助言に猫耳を傾けている。


「捜しても見つからないならきっと捜してないところにいるのでしょうよ」


ニャンダイチはハッとした表情になった。


「そうですね……計算しすぎでありきたりなルートばかり調べていたかもしれない……崖から落ちたりしてどこかで迷っているかもしれない……」


ここでタマはネコっと笑った。


「ああ……私ととしたことが、探偵でもドーサツでもないくせに偉そうに。うるさい年寄りの小言でしたなぁ。失礼しました。ついでにあと一つだけよろしいかのぅ?」


「ええ。もちろん。」


「そのケーキとお茶はニャトソンさんがあなたのために心を込めて容れてくれたものだ。一口だけでも召し上がんなさいな」


「あぁ……これは気づかずに」


私の方をみて一礼したのでなんとなく私も一礼した。

そしてタマとも目があったのでお互い一礼……ニャンダこれ?

ニャンダイチの頬はハッキリと赤くなっている。


「……今日の私は教えられっぱなしだ。お恥ずかしい」


「あなたがヤングキャットだというだけです。学んだのならなにも恥じることはありません」


「ありがとうございました。……モグモグ」


ケーキを一口で平らげ、紅茶で流し込んだ。


「猫背がピンっと伸びた気分です。それでは!」


来たときとは別猫のような清々しい顔でニャンダイチは走っていった。


「素晴らしいたべっぷりでしたなぁ。食事のマナーは……まっ、誰かが教えてくれるでしょう。彼はなんだか世話を焼きたくなる猫だ。さて……私もアルバイトがあるのでおいとまします」


「またいつでも」


そう言って道路ね交通調査のアルバイトにでかけていった


あれってなんの意味があるのだろうか?








ルパンが貝柱山に住む鈴木太一、泰二親子によって発見されたというニュースをみたのはそれから何日後のことだったろうか?





つづく。


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