銀だら町の英雄
『青コーナー……190センチ99キロ……イケ・グスタフ・オーブレイム!!!!』
Hー1決勝戦……私とニャームズはテレビの前で彼の勇姿を見届けていた。
「頑張れイケ!」
『さぁ。イケ選手のデータを見ていきましょう。まず出身地は……【ギンダラチョウ】? なんだこれ? あぁっとぉ!! イケ選手のアッパーカットがマイケルのアゴをとらえた! マイケル失神! 立てません!Hー1優勝は……最強の【英雄】は……イケ・グスタフ・オーブレイムに決まりましたぁ!!』
「やったぁ!!」
私はバンニャイをした。
「ははぁ。アレは僕のニャッパーカットだ。うまく盗まれたね」
『猫みてるか! イケは英雄になったぞ!!グルルルル!!』
「おめでとうイケ……君は最高の弟だ」
「当然さ。僕の【ニャー術】は最強だからね」
「まったく君は……」
相変わらずの自信家である。
よし。少し困らせてやろう。
「さてニャームズ君。君はニャーバンに変装していた時に『僕と仲良くしたい』と言っていたね? あれは君の本音かな?」
「う……うん? 言ったかなそんなこと」
珍しくニャームズは動揺した。なんだ彼も普通の猫と同じところがあるのだなと私はホッとしたのを覚えている。
「おや? 仕事の時間だ。僕の仕事についてはまた今度話すとしよう。それじゃあニャトソン……イタッ!」
ニャームズは逃げるように猫玄関に向かい額を打った。
「うむ……これは失礼……」
「ハッハッハ!! 慌てるなよニャームズ」
「むぅ……今晩は遅くなるよ」
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窓から外を見るとニャームズが夜の町をかけていく……その姿は実に高貴で美しい。
しかし今回私は彼の優しさや猫らしさを知ることが出来た。
私は暗闇に消えていく彼の姿を見届け、新しい友情が生まれる予感に胸を弾ませた。
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……これは私が初めてニャームズの優しさと猫らしさを知った時の物語。
そして私たちの弟が【銀だら町の英雄】になるまでの物語である。
ニャームズファンの読者諸君。【銀だら町の英雄】……お楽しみいただけただろうか?
私は読者が楽しんでくれたことを祈りつつニャーボードからそっと肉きゅうを離した。
2014年。ニャーランド誌掲載。
【銀だら町の英雄】完




