君はタマ。
「ふぅ……ふぅ……」
なんとか逃げ切ったようだ。
しかししつこかった。
「うむ?」
ここは……キャットタウンの中心部か。
ちょうどいい。
タマーバケーションの続きだ。
せっかくだから思い切り遊ぶとしよう。
まずは鯨センで格闘ゲームでもやるとしよう。
鯨が丘のウメタマといわれた私の波動拳をみせてやる。
コアシミテカラショウリュウヨユウ。
《KO!youlose!》
「……」
20連敗か……この辺で勘弁してやろう。
くそぅ!
ワンギエフなんてクソキャラ使って!
至近距離での波動拳を全部投げで吸い込まれた。
気を取り直して次は本屋だ。
「ずいぶんと本屋が減ったなぁ……」
馴染みの本屋はどこもコンビニや自然食品販売店になっていた。
出版不況はどこの世界も同じか。
古本屋のドックオフの前を通った。
私の本がワゴンセールで売られていた。
……潰れてニャスコになればよいのだ。
……
「かっとべマグナーム!」
デパートのおもちゃ売り場にいったらちょうどカニ四駆の大会をやっていたので、子猫たちに紛れて参加した。
《あーー!》
全員最初のコーナーでコースアウト。
そりゃそうだ。
カニだもん。
しかし愉快な時間だった。
グー。
「うむ」
腹が減った。
少し遅くなったが、何か食べに行こう。
「ランチセット。飲み物は煮卵フラペチーノで」
「かしこまりましたブー」
たまにはおしゃれな場所で優雅にランチといこう。
ブターバックスコーヒーで、のんびりぐんにゃりした。
しかしコーヒーと卵の合わないこと合わないこと。
次はどこにいこうかなぁ?
《餌が……入れ替わってるぅ!?》
「……」
ひどい!高級な餌と安い餌を取り替えるなんて……
《君はタマ……?》
感動だ。
私は悩んだ末にホーホーシネマズで映画をみることにした。
見よう見ようと思って見れなかった長編アニメ《君はタマ》。
実はこの作品の監督は私の後輩でもあるのだか……ずいぶんと差をつけられた。
出世したなぁ。
映画館を出ると街がちょうど夕方から夜に変わるところだった。
夕日がもうすぐ沈む。
「遊んだなぁ」
不思議なもので思い切り遊ぶと《仕事しなきゃ》となる。
スニャホの電源をいれた。
担当からの着信ラッシュ……
「……帰るか」
私は君はタマをみながらあの日のことを思い出していた。
そうだ。
あの事件ならば読者受けもよかろう。
夕日が沈む前に帰ろう。
逃亡劇も終わりだ。
新作のタイトルは《ルパンとニャームズの帰還》。
逃亡と帰る場所のある幸せを描いた作品だ。
読者諸君。
連載を楽しみにしていてくれたまえ。




