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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
最後のプレイボール
174/203

チンチラカンプン

「これは私が少し前にマナブにエッセイの取材をしに行った時に聞いた話なんだが……」



……


マナブのいる大学は広い。


私は彼のいる第13研究室にたどり着くまで二時間。


汗をかいたので唐草模様の手拭いで顔を拭いた。


……ふぃ~。


さて。




「お待ちしておりました。ニャトソン先生」


ドアをノックするとほとんど子猫に近い彼の妻……白猫のカズエが出迎えてくれた。


ずいぶんと年の離れた夫婦だとはきいていたが……。


呆けていると白衣を着た眼鏡猫がインスタントコーヒーの入ったカップを机に置いてこちらに歩いてきた……。


「ほほう。あなたがニャトソン先生?」


「はい」


ジロジロ観察するなぁ。


これがガリレオことマナブか。


どことなくニャームズと似た雰囲気を感じる。


ということは変猫なんだろうな。


私たちは肉きゅう握手をして取材を開始した。


マナブは猫界一の科学の天才と言われ、この日も色んな実験を私にみせてくれた……が。


電気だレーザーだ磁力だなんだ言われても私にはチンチラカンプンだったのでほとんど「なるほど」としか言えなかった。


実験終了後、ゴーグルをはずすとマナブはこう切り出した。


「ところでこんな不思議な話があるのですが……是非ニャトソン先生とニャームズ先生のご意見をききたいものです」


「ははぁ」


気を使って私の名前も入れてくれているが、正確には「ニャームズの意見をききたい」だろう。


「この話を聞いたとき私は……」


「むっ!」


急にマナブは壁や床に謎の数式をチョークで書き出した。


聞いたことがある……天才マナブはなにか閃くとトランス状態になり、数式をそこら中に書き散らすと……


カッ!


最後は黒板に=を書いてマナブのトランスタイムは終わった。


うーむどの数式も私にはチンチラカンプンだ。


「……実に(カズエの)尾も白い! と思ったのですが……」


「はぁ」


資料を渡された。


これは…大猫日本史だな? これをトリックにした事件もあったなぁ……懐かしい。


私はサッと目を通した。


ん? というかこれを渡すためだけにあんなに動いたのか?


「どうですか?」


「まだ全部は読んでませんがおかしな話ですね」


「そうなんです!」


「むっ!」


またマナブがトランス状態にはいった!


数式を書きなぐる!


「舞台はあのスーパー……ドンコがあるあの場所だ! ずっとずっと前、あそこは空き地だった!」


カッ! カッ! カカッ!


なんて滑らかなチョークさばきだ。


「ただ野球していただけの数人の若者がバットで襲われる事件性です」


「ふむ……野球をしているだけなのに……この空き地では野球は禁止されていない。しかもこの若者たちは何度襲われても野球をしに空き地にやってきた……」


「……」


カズエが不思議そうに私を見る。


……ああ。


マナブのこの奇行にあまり驚かないからか? 私もニャームズをはじめとするクレイジーキャッツたちと交流を重ねてきたからか、耐性がついてきた。


「しかもピッチャーだけは殴られなかった。なぜだ? 彼らはなぜ野球をし続けたのか? なぜ襲われたのか? 襲った犯人は何が目的の何者なのか……科学的にみて私は実にわからない! と思いました」


わからないのか……


えっ? じゃあこの数式はなんの数式だ?


その時ノックがなって見覚えのあるウサギが入室してきた。


「おや? ニャトソン先生?」


「実におもしろいが実にわからない!……なぁんだウサナギか?」


彼はドーサツのウサナギ。


話を聞くと時々マナブの所へ事件解決のために相談しに来るそうだ。


あくまで科学者の友猫としてマナブもそれに答える。


いい関係だ。


ケーブとニャームズに似ている。


彼の来訪をきっかけに取材は終わった。


マナブもカズエもウサナギも仕事の邪魔をして申し訳ないと謝ってくれたが、むしろちょうどよかった。


研究室なんて堅苦しくて居心地は悪かったし、なにを聞いてもやっぱりチンチラカンプンだし。


資料は貸して頂いたし、持ち帰って目を通してニャームズとの話の種にでもしよう。













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