表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
ミケ墓村。
166/203

呪いの正体

ホテルのロビーに村猫たちを集めるのは案外に簡単だった。

ドーサツ本庁のツトッキーが村の巡査に話を通してくれたのだ。

私にはあんなに威圧的だったのに……村の巡査猫はツトッキーにペコペコしていた。

さて……ニャームズ役をやることにしよう。

謎解きの時間だ。

やれやれ。


「皆さん。お集まりいただきありがとうございます。それではこれよりミケ墓村の謎についてご説明させていただきます」


(バカが)


(呪いは呪いだ)


(あいつもミケ様に呪い殺されっぺ)


うーん。


村猫たちの血の気は荒い。


それもまた『仕方がない』ことなのだが。


「私はミケの墓に行ってきましたが……」


この一言で村猫はざわついた。

特に村長のダスキンは血が吹き出んばかりの青筋をたてて激怒した。


「ばかもんがぁ!きさんどうやって!?見張りをたてたはずじゃぞ!?おお!村は終わりだ!タタミじゃ!ミケ墓村のタタミじゃ!」


「ぶち殺すんど!」


「落ち着いて!」


血の気のとくに多い若い猫が今にも襲いかかってきそうだったので私は早速特殊なマスクをつけてビニールから秘密兵器を取り出してそれを振った。


「……にゃ?」


「ん……ゴロゴロ」


「ふぅ……」


効果は抜群。


すごい鎮静効果だ。


ツトッキーだけポカンとしている。


「先生。それは?」


「マタタビです」 


「マタタビ?」


私は叫んだ。


「みなさん!これがミケ様の祟りの正体です!」






「……つまり」


先ほどとは打って変わって村猫たちは大人しく座り私のマタタビの説明を聞いていた。


まさに猫にマタタビ。


「マタタビとは猫にとって毒にも薬にもなります。興奮したり落ち着いたり……」


私の場合後者だった。


風に飛んできたマタタビの匂いにボーッとして崖から落ちた。


「みなさんも風が強い日は怒りっぽかったりダルかったりしませんでしたか?」


(そういえば……)


(あれは……そうだったのか?)


(マタタビかぁ……)


誰もが覚えがあるらしい。


そういえばそうだったそうだったと盛り上がっている。

……ざわつきすぎて話が進まないな。



「お静かに願います!」 


「……!?」


「いやいや……どうぞ楽にして……」


私がそういうとすぐに黙って正座した。


どうやら村猫たちは私を長年の呪いの恐怖から救ってくれる救世主かなにかだと思い始めたらしい。


まいった。


私はニャームズにきいたことをそのまま伝えているだけだ。


「ミケ様の墓を中心にマタタビは生い茂っていました」


「あんのぉ……」


ダスキンがゆっくり肉きゅうをあげた。


「はい?」


「マタタビについてはわかりましたが。なぜ急にマタタビがミケ様の墓中心に生い茂ったんじゃ?やはりミケ様のたたり……」


……呆れた。


「ミケ様伝説を思い出してください」


『ミケの宝は草のこびりついた土……』


「そして村猫たちはミケを殺してその穴に宝を投げ捨てた……」


ひどい話しだ。


もしかしたら少しは呪いによっての悲劇だったのかもしれない。


「ミケは戦いによって傷ついていた。おそらくミケの宝は……『マタタビの苗』。少量のマタタビはミケにとって鎮静剤の代わりだったのでしょう」


「……わかった!」


ジュンイチロウはいち早く真実にたどり着いたようである。

うむむ……賢い猫だ。

村猫たちも『そうか!』『ってことは!?』と肉きゅうを叩き出した。



「なんじゃ?ワシにはまだわからんぞ?」 


ダスキンはまだわかっていないようなので私が説明した。


「奇跡ですよ。ミケ墓に棄てられたマタタビの苗が育ち、繁殖し、ミケ墓の周りにマタタビの森を作り出した」


「にゃんとまあ!」


ダスキンは頭を抱えて床に膝を突いた。



「余所者とはいえ冷たくするとあまりよくないというミケ様からのメッセージかも知れませんね」


私は学生たちとテレビクルーに慣れないウインクをした。


彼らは私に頭を下げ、村猫たちは彼らに冷たくしすぎたと頭を下げた。


「マタタビを知らぬ猫がマタタビの山にたどり着きなにをするか……」


「……何を?」


「葉を飲み込み枝をかじり、根っこにむしゃぶりつくかもしれません。そうなるとその猫は……」


狂い、壊れ、中毒により死に至る。

ジョニデやピエールはマタタビに狂ってしまったのだろう。


私はそう説明した。


「村のしきたりに従うのも大切だということです」


すると今度は学生たちとテレビクルーが村猫たちに頭を下げた。


「ほんだら……田子作もマタタビに狂って……」


「でしょうね。犬や猫を喰おうとして……」


「食う!?なんで田子作はそんなことを!?ああそうだ!田子作は『体中に穴が開いて死んだ』んですよ!マタタビで死んだとは思えません!」


「焦らないで。ちゃんと説明しますよ」


私は虎と人間を間違えて恥をかいた時のことを思い出した。

……イケは元気だろうか?


「まず田子作は猫ではありません。……虎です」



ミケ墓村のすべての謎が証されようとしていた。








アルファポリスミステリー大賞。今年もエントリーしました。

7月からなので少しはやいけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ