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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
ニャーロック・ニャームズの最期。
153/203

老い

「おや?」


 コップを落としてしまった。


「ふむ……」


 布巾で床を拭く、最近こんなことが増えた。


 ちょっとした段差につまづいたり、猫の名前を思い出すのに数秒かかったり……そんなことはニャーロック・ニャームズの人生(猫)のなかで一度もないことだった。


「むむむ……」


 PCの画面を長時間見ているのが辛い。

 目がシパシパする。


 眠い。


「……嘘だろう?」


 アルコールはペットボトルのキャップ一杯のスコッチウィスキーしか飲んでいないのに、身体と脳みそがフワフワする。


 酒に弱くなった。


「いよいよきたのか……」




『老化』




 不老不死の薬を打たれて40年。

 当時薬は試作品だった。

薬の効果が切れ始め、ニャームズは衰えを感じ始めていた。 


(もし40年分の老いが一気にやってきたら……)


「僕も長くはないだろう」


 恐怖心はない。


 むしろ嬉しいぐらいだ。


 やっと皆と一緒に年をとり、死ぬことができる。


 何百匹、何人という動物と人間の死を見てきた。


 もう見送るのはごめんだ。

 ゆっくり休もう。


 ニャンダイチにコッコ……彼らを始め次の世代の種は世界中にばらまいてきた。

 最期にたどり着いたこの『鰹が丘町』でニャトソンという最高の相棒にも出会えた。


 老化は自分の役目はもう終わりだという神からのメッセージだとニャームズは思った。


「おやおや」


 前足に白髪が何本かまじっている。


「はー……よっこいしょ……」


 白髪を抜いて、安楽椅子の上で丸くなった。


「……ブシッ! ブシッ!」


 どうやら風邪もひいたようだ。

 くしゃみがでる。


「風邪なんて子猫の時以来だ……」


 すぐに眠ることができた。







 最近毎日同じ夢をみる。







『ニャームズ』


『ニャーロック』


(皆……)


 川の向こうに死んでいった友達たちがいる。

 両親やマイクロネコ、ニャンダイチもいる。


(待っててくれ。僕もすぐそちらにいく)


オイデ……  



オイデ……



 手招きをする死者たち。



(今日こそ……)








「ダメか……」


 目をさました。


 今日も川の向こうにはいけなかった。



「やれやれ」


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