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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
まだらの紐。
152/203

正月

 書くことがない。



 ……書くことはないが締め切りは容赦なく訪れるし、紙面に穴をあけるわけにもいかないし、新年第一号ということで正月の話でもしようと思う。


 我ながら駄目だなぁ……







「あっ! 大ポチでし!」


「私はチュウ吉」


「私は鵺ポチだ」


 初詣と言えばおみくじだろう。


 ちなみに人間諸君にはわからないだろうから補足しておくが、動物おみくじにおける『大ポチ(犬)』は『大吉』にあたり『鵺ポチ』は『末吉』。

チュウネズミはそのまま中吉である。


 『大事な物をなくすかもしれません』……か。

 やはり鵺ポチともなると辛いことも書いてある。

 私は物悲しげに佇むニャームズの肩を叩いた。


「ニャームズ。君は何だった?」


 たしかこいつもおみくじを引いたはずだ。


「……そんなことよりステージが始まるよ。さあいこう」


「おい! 待てよ!」


 スタスタと歩き出してしまった。 

 ステージとは「初笑い。ニャンニャンニョンニャンショー」のことであろう。

 人間で言うところの「新春シャンソンショー」だ。

 ここ『猫・厄除け大使館』では毎年恒例行事で私は去年もきている。


「あの……ニャトソン先生ですか?」


 がたいのいい猫が話しかけてきた。


「ニャーム……はい。そうですが?」


 喜ばしくないことに北方ワンぞう賞をとったことで私も顔がさすようになった。

『サインはこまるなぁ。照れるし』と思ったらなんと猫ラグビープレイヤーの『ゴロー』と『マル』だった。

 ラグビー『またたびの戦士』の二大スターだ。

 肉きゅうと肉きゅうをこすりあわせるルーティーン『ゴローとマルポーズ』は去年大ブレイクした。


 私が二匹と談笑しているとニャームズは姿を消していた。 







「安心してください! 生まれたときから裸ですよ!」




 会場が笑いに包まれる。


「とにかく明るい猫村」はやはり今年一番ブレイクしたコメディニャンだけあるな。

 股間の周りの毛がビキニパンツ型に剃られていて一瞬ドキッとするが、確かに猫は元々裸だ。


 騒ぐことはない。






「熊肉のスープをあなーたにあげーる。肉固いんだからぁ~♪」



 ヒグマの『クマヌシ』の歌ネタも鉄板だな!


 ……しかし相方はいらないよなぁ。






「ニホンジン! 猫がスキネ! 本当にダイスキ! 猫ブームキテルヨ!……デモマテヨ? 干支はぁ? ねーうしとらたつみー……アレェ?」







……



「ホワイ! ジャパニーズイエローモンキー! 猫ハイッテナーイヨ! 猫スキナノニハイッテナーイヨ! オカシーネ! ファッキ××!」


「ハッハッハッ!」


『厚切りジェイニャン』

のネタが一番ツボに入った。

 彼は少し差別的用語が過ぎるが。


「……あっ」


「……」


 去年はトリを勤めた『日本エレキテルニャンコう』

の二匹が客席からジェイニャンを悲しげに見ていた。


 コメディニャンの世界の流行りはあっという間に始まり終わる。


 今年はどんなコメディニャンがはやるのだろう?






「なあいいだろう? 隠し事をするような仲じゃないだろう?」


「仕方がないな……」


 初詣の帰り、私とニャームズは二匹で飲みに繰り出した。

 居酒屋の席でしつこく食い下がったらやっとおみくじを見せてくれた。



「『ピョウ』!なるほど! これは見せたくないわけだ! ワッハッハッ!」


 『猫』はいわゆる『凶』である。


『探し物、見つからず待ち猫こず、命の危険あり』……

 散々なことを書かれたものだ!



 ニャームズほど死から離れた存在もなかろうに。



「……」


「おいどうした? 君が占いなんて信じるわけではないだろう?」


 信じられないことにニャームズは本気で落ち込んでいるように見えた。

心なしか老けて見える。


「……」


「……ニャームズ?」







 この占いは当たっていた。







 ニャームズの死後、あれから私は一度もおみくじをひいていない。






『ニャーロック・ニャームズの最期』に続く。



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