ニャーバン
私は息荒く銀だら山にたどり着いた。
「ん? どうした? 猫?」
「イケ! もっと山奥へ!人間に見つかったら君は殺されてしまうぞ!!」
「グル???」
ここに来るまでに山の入口付近を徘徊する人間数人とすれ違った。
人間たちがイケを探しているのは間違いないようだ。
「猫聞いてくれイケなー。英雄になりたいな。だからわざーざふるさとはなれてニホンきた」
「何をいっているかわからないが急げ!!……誰だ!?」
枯れ枝を踏む乾いた音……
「ひっ!! 俺っす!」
「君は……ニャーバン!?」
赤いハンカチを頭に巻いた細身の猫……ニャーバンがそこにいた。
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「へぇ……それでニャトソンさんが面倒見てるんすか? 確かにコイツ。なんかほっとけないっすね」
観念し、事情を話すとニャーバンはあっさり全てを受け入れてくれた。
頭がいいのかなにも考えていないのか……
「俺はニャトソンさんの味方ですよ。手伝えることがあったらなんでも言ってください」
「ありがとうニャーバン……」
やはり猫は年齢も見た目も関係ないのだとしみじみ実感した。
「おいイケ! 今日から俺もお前のアニキだぜ!!」
「猫増えた。赤いの。グウゥ……」
「さっそくだが二匹共。移動するとしよう」
「ラジャッス」
「グルルルル?」
こうして私とニャーバンは力を合わせてイケのサポートをすることにした。
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「……というわけなんだ。ニャームズは自分より頭の悪いやつを全て下にみる悪癖がある。まったく腹のたつ変猫だ」
銀だら山の帰り道。私はついつい心に秘めたものをニャーバンに吐き出してしまった。
「ふ〜ん……俺も色々な町を巡って、色々な猫を見てきましたがそれは多分……」
「うん?」
「そのニャームズって猫はニャトソンさんと仲良くしたいと思っていますよ」
「えっ!? なぜ?」
「なんつーか。ニャトソンさんもかなりのお猫好し……てか正直変猫なんでニャームズさんもどう接していいのかわからないのでしょう。あなたと同じで」
「……」
「案外お二人は似た者同士かも知れないっす」
「むむむ……それはないと思うが……」
私も周りから見たらニャームズと同じような変猫なのだろうか?
……それはなかなか受け入れ難い。