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ニャーロック・ニャームズのニャー冒険。  作者: NWニャトソン
まだらの紐。
145/203

ニャー冒険。

タマシュート……猫のパラシュート

「君からのメールが届いたのはニャンボジェットがちょうどここらの上空を飛んでいるところだった。ラッキーだったね。僕はタマシュートを身につけて飛び降り、獣道を走り、崖を登り、なんとかここまでたどり着いたわけだ」


 私が一通りの説明を済ますとニャームズは猫紳士としてのプライドが許さないのかカッパを脱ぎ、すぐにいつものコートと帽子をリュックから取り出して着替えた。


「君のぶんもある。着替えたまえ」


 シルクハットと蝶ネクタイとタキシード……

 なんだかひさしぶりで照れる。


 こうして正装してニャームズと調査するのは『生命と廃棄物の間』事件以来ではないだろうか?


「北方ワンぞう氏は僕も面識があった。いたずら好きで茶目っ気のある愛すべき犬だった。犯人は許してはおけない。ニャトソン。強要はしないよ? 君は嵐が去るまでじっとしていてもいいんだぜ?」


 そう言われて逃げ出すオスがいるだろうか?


 私だって犯人が……まだらの紐の化け物が憎い。


 ニャームズの存在が私に勇気とガッツを与えてくれた。


「もちろん私もいくさ!」


 私がそう言うとニャームズはネコっと笑った。

 今、反撃ののろしがあげられたのだ。

 もうまだらの紐など恐くはない。


「君ならそう言ってくれると信じていたよニャトソン。おしっこは済ませたね?よしっ! いこう!」


 ニャームズはステッキを持って外にでた。






 我々はまず、電源室を見つけ、予備電源も落とした。


 ニャームズが言うには


「まだらの紐の化け物は暗闇でじっとしていたら襲ってこなかったのだろう? 電気はすべて消すべきだ」



……だそうだ。


 確かに明るい部屋でまだらの紐の化け物と出くわしたら最期だろう。


 私たちは首輪にライトをつけて館に侵入することにした。







 ギィ……と音を立てて館の扉が開いた。


 真っ暗で静かな館……私はいつ、まだらの化け物が襲ってくるかと気が気でなかった。


「やはり帰るかい? ニャトソン?」


「いや、いくよ」


 ここで帰ったら私は彼の相棒も記録係も失格だ。

 私たちはまず、オリスの部屋に肉きゅうを運んだ。







『そんなバカな!?』


 と大声を出しそうになるのをかろうじて耐えた。

 床にめり込んで死んでいるはずの大猿の死骸が血の跡を残し消えていたのだ。


「……」


 ニャームズはさすがに冷静だった。

 ライトをチカチカと点滅させながら床や壁を叩いたりと調査を始めた。

 しかしなんという恐怖と緊張感あふれる調査だろう。


「なにかの気配がしたらすぐにライトを消すんだニャトソン」


「う……うん」


 私もニャームズに習い、ライトをチカチカ消したり点けたりしながら調査をした。


「ふむ……」 


 大猿の血液をガラス板のような物に乗せ、ニャームズはタンスや椅子を重ね、天井をコンコンとステッキで叩くと



「二階にいこう。ニャトソン」と言った。







「気づいたかい? ニャトソン?」


 4階を調査しているとニャームズがそう訪ねてきた。


「なにが?」


「これさ」


「ん? んんん?」


 フローリングの床をようく見てみた。


「四角い……線のようなものがあるな」


 気をつけなければ気がつかない……というかフローリングの溝にしか見えない。


「タンスやベッドの位置まで全て同じ位置の部屋……フローリングの四角い溝……ほら。天井にも」

 

 ニャームズはステッキで天井を指し、ライトで照らした。

 確かに同じ四角い溝のような物がある。


「死の家か……なるほど……まだ材料が足りないな……あとは……」


 ニャームズはブツブツ言いながら部屋を歩き出した。

 これはニャームズが真相に近づいてきた証である。

 うれしいことだが、そんな喋りながらライトをつけっぱなしで歩かないで欲しい。


「……よしっ! 最後はワンぞう氏の部屋だ」







「あっ……あぁ……」


 私はまた腰を抜かしてしまった。


「……」


 ニャームズも黙って天井を見ている。


 オリスが……オリスがシャンデリアに突き刺さって死んでいた。

 シャンデリアの中心部の棒が釣り針形になっているので、そこにオリスの胴体が引っかかり、オリスの死骸はブランブランとシャンデリアと共に揺れていた。

 オリスの血がボタボタと床に落ちている……ニャームズはその血をまたガラス板に乗せて、今度はそれになにやら薬品をたらし始めた。


「ニャームズ……それは何をしているんだ?」


「ニャトソン。コナンドイルの『まだらの紐』は確か紐が毒蛇だったという話だったよね?」


 ニャームズは私の質問には答えず呑気なことを言い出した。


「そうだよ! それがなんだ!?」


「落ち着けよ。まだらの化け物がくるぜ?」


「……あっ」


 私は慌てて肉きゅうで口を塞いだ。


「まだらの紐……大蛇……大蛇……」


 ニャームズはまたブツブツ言いながら歩き出した。



 今度はネコネコ笑いながら肉きゅうをモミモミしながらだ。

 時々ステッキを上下左右に振り回す。

 もちろん玉ねぎもカミカミしている。

 まるきり頭のおかしい猫だ。



 前言撤回……やはりこのオスに女性ファンがいるのは納得できない。


「……見つけた! あれがそうか! なぁるほど! よし! ニャトソン! 表にでよう!」


「ニャームズ!」



 興奮して大声を出してステッキで天井の隅を指し、ライトも消し忘れてる……勘弁して欲しい。





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